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エロ同人のような恋がしたい!!  作者: 眼鏡っ娘至上主義クラブ
16/21

分岐点

 食事を終えて皿を洗い、泉さんを胡座の上に座らせて一緒に動画を見ていた。エロい動画を見ていたわけではない。夏休みの間にもう一度何処かに出かけようという話になり、その旅先を決めるために旅行動画を調べていた。

 俺は泉さんを背中から抱いてその髪の毛や耳に唇で触れた。泉さんは俺の悪戯には気を取られず、水族館のイルカショーを観ながら「ここ行かない? 展望台も良さそうだし、海鮮も美味しそうだよ」にこやかに言った。


「海鮮丼美味しそうだね、海も綺麗だし。電車の時間調べてみようか」俺は携帯で時効表を見せた。「このくらいの時間で行く?」


「もっと早いのはある?」画面を操作して「こっちは?」一本早い電車を指して振り返った。


「よし、じゃあその時間帯にしよう」


 泉さんは携帯でその周辺の観光スポットなどを調べ、動画を再生した。


「お願い、手を繋いでほしい」泉さんにされていたように唇を耳に当てて囁きながら、手の甲に触れた。


「しょうがないなぁ」呆れたように言いながら、恋人同士がするような指を絡める握り方をしてくれた。「ちゃんと動画見てるの?」


「見てるよ。ここで泉さんの写真撮りたいな、とか考えてるよ」


「……ねえ、泉さんて呼ばれると、こんなにくっついているのに距離を感じるよ」いじらしげな様子だった。


「あ、晶さん」顔が熱くなるのがわかるほど恥ずかしかった。


「あんなことさせておいて、さん付け?」意地悪そうな声色を出してみせた。


「晶、大好き」もういっそ恥ずかしいことはまとめて言ってやろうと腹を括った。目を瞑ってただ力強く抱きしめた。


 晶は何も言わずに黙っていた。俺は不安になり目開くとその光景に言葉を失った。晶は自身の股に手を当てがい擦りつけ、自身を慰めているようだった。俺の心拍数は急速に上昇し、思考は朧げになった。


「晶、それって……」


「……いきなり耳元で大好きって言われたら、女の子だってエッチな気分になってムラムラしたりするんだからね」


「そ、そうなんだ」


「お願いしたいことがあって、引かないで欲しいんだけど。抱きしめられながら自慰したい……。ごめん、はしたないよね。今の聞かなかったことにして」頭をブンブン横に振った。


 その謝ってくる理性と性的な本能の狭間で揺れているいたいけな様子に撃ち抜かれた。俺は晶が言葉でいじめられたいと言っていたことを思い出した。


「本当にエッチな子だね。恥ずかしい姿を見せてよ」そう言って耳に甘噛みした。


「あッ……」いやらしい声を出し、晶は黒い下着をワンピースの中から脱ぎ捨てた。


 そして繋いでいた手を離し、両手で自分を慰め始めた。俺は空いた手で晶の頬に触れた。晶は俺の指に接吻をした。何度も何度も。そのまま人差し指を近づけてやると遂には指に蛇のように舌を這わせ、音を立てて咥えたり、甘噛みしたりした。

 俺は中学の時にBL小説を読んでいた。BLと言っても純文学の方で、ヘッセや川端康成を嗜んでいたのだが、その時の同級生のいわゆる腐女子に目をつけられて、エロ漫画を一緒に読まされたことがあった。さらにはBLで女体化という、初めて触れるジャンルだった。が、その時の漫画の言葉責めを必死に思い出していた。人生において役に立たない経験は、何一つないんだと実感した。









 晶は俺の腕を枕にして横になっていた。


「そういえば、晶の肖像が描けたから見て欲しいんだけど」意を決して言った。


「もしかしてあの段ボールに入ってるの?」指を差した。


「え、なんで分かったの?」


「そりゃ分かるよ、この前はあんな段ボール無かったし、もしかして今日渡されるのかなって」ふふっと笑った。


「せっかく驚かせようと思ってたのにさ」いじけて言った。


「あ、そっか。ごめんね」頭を撫でた。


「いや、もうちょっとちゃんと隠すべきだった。まあいいや」


 二人で起き上がり、段ボールから絵を取り出して渡した。


「ねえ、綺麗に描きすぎじゃない?」


「そんな事ないよ。俺は自分の目に映る通りに描いただけだよ」


「藤村くんにはこんな風に映ってるんだね」


「まあね」


「ふーん、こんなに美人に見えてるんだね」とニヤニヤして絵を置いた。


「あんまり嬉しくなかった?」


 晶は抱きついてきた。そのまま体重をかけられ、俺はされるがままに横になった。晶は俺を押し倒してじっと見つめ、やがては目を瞑り、その唇を近づけてきた。俺も目を瞑り、向かい入れた。柔らかく、あたたかい唇を何度も何度も触れ合わせた。晶は唇を唇で食んだり、甘噛みしたりし、その快楽に脳は蝕まれていった。


「そういえば、順番がメチャクチャだね」晶が顔を上げたときふとそう思った。


「私もガチガチに硬くなったのにご奉仕して顔にかけられて、耳元でイケって命令されてイって、ようやくキスするとは思わなかった。もっと普通の恋愛をするかと思ってたのにさ」そんなことを言いながらも微笑んでいた。


「あの時ビクビク震えててめっちゃ可愛かったよ」


「もう、うるさいなぁ」


 晶は再び唇を触れさせた。俺は勇気を出して舌を出すと、晶はそれを向い入れ絡めてくれた。お互いにその不思議な快楽の虜となり、長い間絡ませていた。直接脳を舐め合っているのではいかと思うほどだった。

 俺は晶を優しく丁寧にひっくり返し、彼女を仰向けにした。最初はびっくりした様子だったが、すぐに受け入れ再び舌を絡ませあった。晶は俺のシャツのボタンを外して素肌を触り、欲望を煽った。俺は晶の手を取り、硬くなった物に触れさせた。晶はすぐに察してくれてズボンとパンツを下ろし処理をしてくれた……

 







 二人で並んで歩いた。ダンボールを持って、郵送する為に郵便局へ向かっていた。その時、晶は握っていた手をパッと離した。前を向くとちょうど曲がり角から嶋咲が現れて、こちらに向かって歩いて来ていた。


「あ、お疲れ様。そんな段ボール持って何してたの?」


「晶の絵を描いてさ、大きいから郵送しようと思って」


「そんなことより藤村、シャツのボタン掛け違えてるよ」


「えっ、ホント、ごめん。あれ?」アキラは俺のシャツに手を伸ばして困惑した。


「なんで泉さんが焦るのかぁ?」嶋咲はニヤニヤ笑い、晶は俯いて顔を真っ赤にしていた。確かに俺が精を吐き出してぐったりしている時、晶が甲斐甲斐しく世話を焼いてシャツのボタンを留めてくれたのだった。「シャツのボタンを留めたのは泉さんなんだ。じゃあその前は脱がせて何してたんだろう?」


「嶋咲の想像にお任せするよ」そう言う他なかった。


「ふーん、そうなんだ。やるじゃん藤村」嶋咲は俺の肩を叩いた。「こんな可愛くてよく出来た子を自分のものにするなんて。もしかして、その絵を渡されながら告白されたの?」晶の方を向いて。


「え……告白……されてない……」上目遣いで俺を見上げた。


「最低、結局身体目当てだったんでしょ」大袈裟に俺を責め立てた。


「いや、そんなことないって、確かに告白はしてないけど大好きだって言ったし」


「そうやって好き好き言いながら飽きた途端に、俺たち別に付き合ってないだろ、とか言ってヤリ捨てするんでしょ! よく聞くんだからそんな話」


「……そうなんだ。悲しい」言いながら晶は大仰に両手で顔を押さえた。「こんなに一生懸命尽くしてるのに」


「ごめんって、本当毎日感謝してるよ。タイミング逃してさ、そっか絵を渡す時にすれば良かったのか。ごめんって、また帰ったらするからさ」


「言ったからね」晶はパッと顔を上げた。


「ああ、男に二言は無いよ」


「じゃあ楽しみにしてたデートの約束も無しだね。泉さんに失礼だし」嶋咲が言い、俺もその約束を思い出した。


「信頼してるから、遊びに行ってもいいよ。だって小学校から友達なんでしょ」申し訳なさそうな顔つきだった。


「でも藤村、私を襲おうとしてきたから。ほんとに猿みたいだからあんまり信頼しない方がいいかも」笑いながら言った。


「私も手を出して貰おうと色々試したけど、そんな簡単に手を出してくれなかったよ。嶋崎さんが手を出してほしくて先に誘惑したんじゃないの?」


 そんなことしていたのか。と、俺は驚愕した。しかし思い返せば心当たりもある。菜箸間接キスや、無防備な格好もそうだ、胸やブラがチラリと見えたり、太ももの露出が多いショートパンツで来て身体が鈍ってるならいいストレッチがあると、身体を当ててきたり。俺は善意に欲情しては不味いと必死に堪えていたが。

 それより嶋咲はと思い彼女の方を向くと、頬を真っ赤に染めて俯いていた。


「その時なにされたか覚えてる?」晶は俺の方を向いて尋ねた。


「添い寝して、胸を当てられて、身体を弄られた。かな」


「そんなの、滅茶苦茶に犯してほしくてやってるに決まってるよ」当たり前でしょ。そう言いたげな表情だった。


「いや、でもその時は俺が傷ついていて、あまりに哀れだったから」


「ううん、好きじゃない人のためにそんなことしないし、出来ないよ。普通」真っ直ぐに見据えて言った。


「……そうなの?」嶋咲に尋ねた。


「……そうに決まってるでしょ」嶋咲は吐き捨てるように言い放った。


「嶋咲さんはいつから好きなの?」


「小五の時から」


「本当に? てっきり楓のことが好きなんだとばかり」俺は驚き大きな声を出した。


「……バカ」そっぽを見ながら。


「藤村くんはいつから」


「俺は一番最初は小三だね。席替えで隣になってから」どれだけ優しくされただろうか。


「それで高校に入る時まで好きだったの?」


「まあね、だから定時制だとしても一緒の学校に行きたかったんだよ」


「藤村くん、さっきの告白の話は無しにして。私のことは気にしなくていいから。そんな小学生から高校までずっと両思いだったなんて知らなかったの。ごめんね」そう言い残して走り出した。


 俺も追いかけようとしたが、すぐにサンダルが脱げ履き直す頃にはもう、姿を消してしまっていた。


「ねえ、泉さんを大事にしてあげて。ほんとにヤリ捨てなんて可哀想だよ。それに私は確かに好きだけど、自分のことばかりで泉さんみたいに尽くしてあげられなかったし。そういう子に報いてあげてね。さよなら」心の中までは読めない笑顔で言った。


 嶋咲も歩いて立ち去って行った。俺には追いかける気力も湧かず、ただ呆然と立ち尽くすだけだった。

 俺の目の前には、ただ二つの分岐路だけが存在して、俺に決断を迫っていた。

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