第五章「絆」
避難場所の檜町公園
遥達は孤独な青年が避難しているテントの中に入り、彼の話を聞くことにした。
青年「お前達がいるだけで、本当に嬉しかった。ずっと一人だったから寂しかったよ。」
遥「本当に1人だったんですか?」
青年「ああ・・・十数年以上も前からな。」
遥達はざわついた。
遼真「じゅ、十数年以上も⁉」
青年「ああ、俺が小学生の頃に、両親が交通事故で亡くなってしまって、家を転々としながら暮らしていたから、誰も信じられないまま成長しちまったんだ。」
未夢は涙ながらに問答した。
未夢「は?なんで⁉どうして親戚に引き取らなかったんだよ‼」
青年はそれに答えた。
青年「いや・・・ジジイもババアも病気を患ってて、他の親戚も自分の子のこともあったんだよ。」
木村「そうか、それは大変だったな。でも安心しろ!俺達は決して怪しいもんじゃないからこれからの人生を俺達で歩んでいこう!そういえば君、名前は?」
掛「道野掛。」
掛は身分証明書を木村に見せる。
木村「お前、長野から来たのか!」
遼真「年はいくつ?」
掛「二十九(歳)だ。」
未夢「ふーん、あんたももうすぐ三十路なんだな。」
遥「あっ、そう言えば、自己紹介まだでしたね!私、姉弟で巣鴨から避難してきました平井 遥って言います。中学二年生です。」
遥はその仲間を紹介した。
遥「こっちは弟の遼真です。小学三年生で大のゲーム好きでよく友人とよく遊んでいます!そっちはこの前から避難先の国立競技場で知り合った目黒南高校二年の武沢 未夢さん。とても遊び盛りで見た目はちょいワルですけど、助け合いや人づかいには気が優しいんです!そしてこの人は遼真のクラスの担任をしている木村 壮一 先生です。特に全クラスの体育の授業やっているので」
掛「そうか・・・お前らがいるだけで本当に幸せだよ。」
木村「君は長野生まれだから、いつから東京にいるんだ?」
掛「ああ、俺は何年もここにいるよ。両親が亡くなって以降、俺は地元に帰ることなく居場所を探しながらあてもなく彷徨い長野から山梨、埼玉、千葉、東京へと流れていったんだ。小学生から高校生まで友達すらも出来なかったんだ。誰も俺を頼ってくれる人なんかいなかったんだ。高校を卒業してフリーターになった俺は上京し、ここに来てからはアルバイトを転々としながら生計を立てていた。しかし最近なってからはバイトをやめて、仕事も見つからなくなり、ゴミ箱に捨てられていた古新聞や雑誌を売っての生活をするようになったんだ。けど、今になって俺の運命を大きく変えることになったんだ!」
遥「え?その運命ですか?」
未夢「それって何の事だ?」
掛「ああ、それはこの大地震が起きた後、俺は小さな命を救ったんだ。」
遼真「小さな命って?なんの事?」
掛「ああ、それはな・・・。」
それは首都圏での巨大地震発生の当日のことだった。
掛は大地震で被災された都内の住宅街を彷徨っていた。
財布の中の金は無事だった。
掛「金は無事だったけど、今日の晩飯どうしようかな?」
すると倒壊した住宅の方から助けを求める小さな女の子が聞こえた。
女の子「たちけて・・・!たちけて・・・!」
掛「え・・・?」
その女の子は留守番中に大地震が起きた時に家屋が崩れて下敷きになり、血だらけの状態で動けなくなっていた。
女の子「パパアァー‼ママアァー‼」
掛はその女の子の声に気づいた。
掛「そうだ!助けなきゃ!あの女の子を助けなきゃ‼」
勇気を出した掛は女の子を助け始めた。
掛「大丈夫だ!今俺が助けてやるからな!」
そして掛はその女の子を倒壊した家屋から引きずり出して助けた。
女の子「パパァ・・・ママァ・・・」
掛「君、大丈夫か?しっかりするんだ。すぐに病院まで連れてってやるからな。俺がいたからにはもう安心だ。」
掛はその後、その女の子を病院まで連れていった。
掛「俺はこの後、この子供を病院まで届けたんだ。この事で俺は、人助けや思いやりができるようになったんだ。」
遥「私もこの地震が起きた時、子供を救ったことがあります!地蔵通り商店街で買い物を済ませて家に帰る時に、物凄い大きな地震が起きて、急いで家に帰る時に、その家に下敷きにされた男の子を軽トラックの運転手さんに手伝ってもらいました!」
未夢「アタシもそうだったよ!原宿へ買い物に出かけた時、ものすごく大きな地震が発生して通行人の悲鳴がアチコチに聞こえてたんだ!」
掛「なるほど、お前達もあの時の事を知ってるんだな。」
木村「ああ、確かにそうだろうな!皆、腹減ってきただろう?そろそろ晩飯にするか!」
木村が炊き出しの所へ行き、皆の食事を差し出した。
木村「ほら、今日の晩飯は、炊き出しのカレーだ!みんなで一緒に食おう!」
そして、掛はカレーライスを1口食べた。すると・・・
掛「うっ・・・うっうっ、うめぇー‼久しぶりのカレーだ‼最高だよ‼俺、カレーめっちゃ大好物だよ‼」
掛はカレーライスが大好物だったので、大食いするようにおいしそうに食べた。
遥「カレーが、好きなんですね!」
未夢「ここに避難して、本当に良かったな!掛!」
避難所の仮設風呂
桜の湯には、遥と未夢が入浴している。
遥「はぁ~極楽~・・・ここのお風呂も気持ちいいなぁ~。」
未夢「ああ、アタシもだよ!避難所の風呂ってもんは、心と体も温ったまるよなぁ。」
そして未夢は楽しそうに遥に肩をより合わせた。
未夢「女同士での裸の付き合いはとても最高だよな!アハハハハ!」
遥「ええ?別にそんな事・・・」
一方その頃、松の湯では、遼真と掛と木村が入浴していた。
遼真「掛兄ちゃん、お風呂、どうかな?」
掛「ああ、いい気持ちだよ。俺はよく銭湯に行ってるからな。」
遼真「へぇそうなんだ!」
木村「やっぱ皆で入ると、一緒にいる気分だな。」
とりあえず、入浴した後はテントの中で遥達は就寝。
そして檜町公園の夜は更けていった。




