秘めた想い
――何か、何かがおかしい。
「先生、お疲れ様です」
――なぜか、さっきから胸騒ぎがする。
「今日も素晴らしい手術でした。患者の脳に残っていた銃弾を見事に取り除いて、私、感動しました!」
――何かを忘れているような……。
「あの、先生、大丈夫ですか? お疲れのようですが……」
――そうか、疲れているだけだ……本当にそうなのか?
「あまり無理はなさらないでくださいね。奥様が亡くなったばかりですし……」
――確かに、妻の死はショックだったが……。
「もしよかったら、いつでもお話を聞きますから」
――この彼女のように、相手なら他にもいくらでもいる。
「今度の水曜日の夜なんてどうですか? いいレストランを知っているんです」
――待てよ、妻、妻……。
「じゃあ、考えておいてくださいねっ」
妻……そうだ、妻のことで何か忘れているような……なんだろう。わからない。彼女は良い妻で、女としても魅力的だった。夫婦生活に問題はなかったはずだ。
……いや、どこか私に心を開いていないと感じることがあった。
気づかれていたのかもしれない。結婚前、妻が付き合っていた男と別れるように私が仕向けたことを……。
結婚したが、彼女が日に日に弱っていき、病気を患ったのは、そのことと無関係と言えるだろうか。
そうか。この胸のすっきりしない感じ、それは罪悪感から来ているのではないだろうか? 自分でも意外だが、そうとわかれば悩む必要はない。あの男が彼女を手放さなければよかっただけのことだ。彼の名前はなんだったかな、確か……そうだ、スティーブンだ。よく覚えていたな……いや、最近その名前をどこかで聞いたような気がする。どこだったかは思い出せないが……。
なぜだろう。今日は妙な気分だ。頭に靄がかかっているようだ。誰にも気づかれてはいないだろうが、先ほどの手術中もどこかおかしかった。自分が自分でないような瞬間があり、ああ、そうだ、何かをどこかに忘れてい――
「先生! スティーブンさんの容体が!」
――指輪だ!