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プロローグの勇者  作者: 黒板係
煉獄編
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77 時間が経った

☆前回のあらすじ☆

勇者は敗れた。希望が消えた。

 72番目の勇者死亡から19年、ノヒンには多くの魔力が漂うようになった。魔獣や魔族の動きが強まり、各地で人間と魔物の戦いが激化していた頃、オヤコトの中心街から少し離れた家に一人の冒険者とその母親が暮らしていた。


「母さん、ただいま戻りました」


男の名はウィクト、今年で18になるハーフエルフの青年だ。手には紫水晶が取り付けられた杖にもなる長弓とロードウルフの毛皮と肉を持って帰ってきた。


「お帰りなさい。外の様子はどうだった?」


エルフの母親は鍋をかき回しながら聞いた。鍋の中にはスープに少しの野菜が入っている。大量の魔獣がうろついているこの国では畑で作物を栽培できる人間は少ない、野菜は高値で買うか自分で育てるしかない。


「銃兵隊の人たちがワイバーンを撃ち落としていたよ。でも街はまだ機能している」


「それはよかった…。あ、ご飯できているから座って」


食卓に着くと、少しのパンとスープを食べる。味気ないが温かい。


「ロードウルフの肉は依頼で遠くに行くとき用に加工しておくね」


「ありがとう母さん」


厳しい状況ではあるが、そこそこ安定した生活はできている。ウィクトはこのまま今の生活を続けることができるが、もう一つの選択肢があった。


「母さん、俺は魔王を倒しにいくよ」


その言葉を聞いた母親は一瞬だけ動揺したような表情をしたが、すぐに元の優しい表情に戻った。ウィクトは強い、冒険者登録をしてから半年も経たずにAランクにまで上り詰めたのだった。その様子を見て、もしかしたらとは内心思っていたのだ。


「いいわ、でも一つ条件がある」


「なに?」


「力を見せてもらうよ」


「は?」


母親の顔はいつもは見ない凛とした表情になっていた。その雰囲気から母親が本気で言っているということがわかる。


「わかったよ。母さん」


数日後、自宅近くの森に入る。ここは普段ウィクトが弓や魔法の鍛錬をしている場所だ。少し開けた場所に出ると、重そうな杖を持った母親は振り返った。


「ここで知り合いと待ち合わせしてるの。そろそろ来ているはずなんだけどね…」


その時、森の奥から風を切って矢が飛んできた。


「母さん!」


ウィクトが反応したと同時、矢は杖に弾かれて地面に落ちた。


「母さん?」


矢を拾った母親は飛んできた方向に向くと、茂みに向かって投げ矢のように強く投げつけた。すると茂みの反対側にいた人に命中したようだ。


「痛っ!私じゃないよ」


尻に矢が浅く刺さったまま飛び出してきたのはレリンだった。そしてさらにその奥から歩いてきたのはヴィスだ。


「久しぶりだな、アスペラ。成長したな」


「いてて…手加減してほしかったな」


レリンは冒険者を、ヴィスは森林警備隊をやっている。力を見せてもらうにはうってつけの二人だ。


「この二人と戦えばいいの?」


「そうよ、何があっても死ぬ前に回復する」


普段とは違う母親の様子に少し身震いする。しかしそれをぐっと抑えて二人に向かった。


「よろしくお願いします」


しばらくして森の中、アスペラが見守る中で三人がそれぞれ武器を持った。


「これ本気でやらなきゃダメかな…」


「ダメだろうな、手を抜いたら認めてくれないぞ」


「とっとと始めな」


アスペラがそう言うと全員の雰囲気が一気に引き締まりそれぞれ森の中に駆け出した。


「(距離だ、とにかく距離を取ろう)」


ウィクトが走りながら矢筒から矢を取り出し木陰に隠れると、あらかじめ狙っていたかのような1本の矢が飛んできて顔面と同じ高さの木の幹に突き刺さった。そしてそれは合図であり目印でもあった。


失礼な剣技(ボランスフェルム)!」


固有魔法によって飛んできた斬撃の威力はすさまじく、隠れていた木の幹をたやすく切り倒した。ウィクトが逃げようとしたところにヴィスの矢撃、それに怯めばレリンがすぐに追いついてくる。


「(この二人強い!個人の技術もさることながら連携の練度が高い、会話の内容からして普段から一緒にいた訳ではないようだけど。とにかく、俺も固有魔法を!)」


隠れるのは無駄だと判断し、正面から戦うことに決めた。茂みから飛び出したウィクトはレリンを視界に入れると、飛んできた矢の方向からヴィスの居場所を推定して二人の正面に立つように回り込んだ。


暗黒空間(イクトゥスペイ)!」


長弓の上に取り付けられた紫水晶に魔力が込められると、先端から直径約3㎝のブラックホールが出現した。そのブラックホールは正面のあらゆる物を飲み込もうと重力を発生させる。


「(あれがアスペラの息子の固有魔法。迷っている暇はないか)」


一瞬の判断だった。とてつもない速度で引き込まれるレリンは剣を振り上げて魔法を発動させた。


失礼な剣技(ボランスフェルム)断罪された(カエディオムニ)!」


刹那、スッと何かがウィクトの横を通った。ブラックホールを見ると真っ二つに斬れ、その斬撃はブラックホールやウィクトの左肩を斬り飛ばしただけでなく、地面に一直線の線を描いていた。その線はどこまで深い物なのか見当もつかなかった。


「うっ!…母さんが何でこの人たちと戦わせたのか理解できた。この斬撃の魔法は俺の魔法を正面から突破するためにあるようなものだ」


止血している暇も怯んでいる暇もない。レリンはこの隙を逃さず迫ってくる。


「今度は再起不能にするよ!」


「(私の出る幕は無いな…)」


レリンは再び魔法を繰り出そうとしている。ヴィスはその光景をただ見守るだけだった。


失礼な剣技(ボランスフェルム)断罪された(カエディオムニ)!」


剣を振る直前、魔法が発動される前にウィクトは動くことができた。


「(斬撃に当たるとブラックホールは斬られる。それなら…)」


ウィクトは横跳びで体の位置をズラすと再び固有魔法を発動させた。


暗黒空間(イクトゥスペイ)


出現したブラックホールは斬撃を横から吸い取る。このポジションであれば斬撃を吸い取ることは可能だ。


「斬撃が見たことない挙動をした…」


ブラックホールは光すら吸い込む物だ、発動できるのは身の安全を考えて2秒が限界である。ブラックホールを消したところで決着とした。


「はいそこまで」


決着がつくと魔力の使い過ぎでバタリと倒れた。その後、呼び出された二人は雑に扱われたことに文句を言いながらも帰っていったのだった。

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ウィクト

身長 169cm 体重 65㎏ 属性 無

固有魔法 暗黒空間(イクトゥスペイ)

今を生きる冒険者の青年。アスペラの息子で固有魔法は直径3㎝未満のブラックホールを作るという効果。得意な武器は弓、普段は狩猟をしたりクエストをこなしたりして生活している。


他の作品との兼ね合いから連載を一時的に停止します。また、主人公以外の視点描写を入れながらリメイクしていこうとも考えていますのでよろしくお願いします。

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