73 プロローグの勇者
☆前回のあらすじ☆
アウル仮面連載予定
混乱を極める戦いの中、勇者は再びロングソードの持ち手に力を入れる。
「うおぉぉぉお!」
パチリと刃が見えた瞬間どこかの誰かからの攻撃が飛んでくる。そんな状況であらゆる攻撃を避けつつ剣を抜き振り抜いた。
「変身!」
金の炎に包まれた勇者はその炎を振り払うと金色の角にドラゴンの鎧を身に纏っていた。
「体に馴染んできたのか?でもこれ動きづらいな」
完全体ドラゴンブレイブの誕生の瞬間である。しかし、勇者がオーラを体の内に戻すようにイメージすると鎧は粒子状にバラバラになり体内に集まっていった。勇者は脚に魔力を溜め瞬間的にドラゴンの足のように変形させ、モンストラム教徒やクローンと戦っているアミスとクローン・アミスの間を駆け抜けた。
「力を試すには丁度いい。まずは一人」
「ヤメテ!」
バシュリとクローン・ルーデを縦に真っ二つに斬り裂いた。その光景を見たモンストラム教徒やクローンが一斉に勇者に狙いをつけ攻撃を始める。
「失礼ナ剣技!」
「無駄だ」
勇者が腕に魔力を籠めるとドラゴンのように変形し飛んでくる斬撃をいとも簡単に受け流し、斬撃はモンストラム教徒やクローンを数人斬り飛ばした。そしてそのままの勢いで地面を踏み抜きクローン・レリンに向かって跳び、ドラゴンの鈎爪で頭を握りつぶした。
「もっと…」
手に着いた彼女の脳の一部を口に入れると鉄味の中にクリーミーなうま味を感じた。その様子はさながら人間ではない何かのようだった。そこからの戦いは一方的なものであった。勇者の力は絶大であり、雑に振った剣の面に触れた敵の身体が次々と砕け跳んでいき、その様子を見たモンストラム教徒たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「雑魚共が…」
剣を鞘に戻すと勇者は元の姿に戻り力なく倒れる。駆け寄ったアスペラは勇者の体を支えこの戦いは幕を閉じた。
翌日
「「「かんぱーい」」」
勇者とアスペラ、シェンティア、ゴーレムちゃん、アミスとクローン・アミス、カエデ、ルクス、ベナトの9人は卓袱料理を囲んでいた。先日の戦いに勝利したご褒美である。刺身や煮物や天ぷら、馴染みの味に舌鼓を打つ。
「うん。やっぱ天ぷらのクオリティはいまいちだな」
「勇者さま、この角煮おいしいですよ」
アスペラに勧められ口に入れた角煮はドロリと舌に纏わり着き、濃厚な脂の甘みが口いっぱいに広がりおいしかった。いろいろな料理に箸を伸ばしているとルクスが話しかけてきた。
「昨日の戦い、勇者様はまるでノヒン創世譚のプロローグに書かれた勇者みたいでしたね」
急に何の話だろうか、よく分からないがルクスの顔は冗談のように喋りだしたとは思えないほど真剣そのものだった。妙な気迫に押され思わず箸を置いた。
「何ですかそれ?」
「この国の誕生を題材とした物語なのですが、内容が妙にリアルということで有名な作品です。そのプロローグでは『ドラゴンの勇者が魔王を討伐した』というところから始まるのです」
妙な話だ。確かに勇者は現在、超巨大特殊個体ワイバーンの力を使っている。しかし、それは成り行きでそうなったのであって、勇者がそうなりたくてなったわけではない。ましてや現在魔王は存在しているのでこの物語との関係は皆無であろう。
「プロローグの勇者ねぇ…」
「勇者さま、あまりその力は使わない方がいいんじゃないですか?正直あの姿は少なくとも人間ではなかったですよ」
妙な気分が込み上げてきた。おいしく食べていた料理の数々も途端に味が抜けてしまったようだ。
「ゴシュジン?」
ゴーレムちゃんはそんな勇者の様子を心配していた。そしてこの状況はカエデの発言でさっぱり切り替わることになる。
「これ食い終わったら配下帝序列四位のソニウムを皆で討伐しに行こう。クローンを作っている本元を潰すんだ」
「(いや…その話は本当だったのかよ)」
ベナトが会計を済ませると早速カエデの案内で崖の上にある大きな教会に向かう。その道のりでは無数の魔獣が現れたが特に苦労することなく進んでいく。
「流石にこれほど人数がいると楽だな。カエデたちはソニウムについてどこまで知っているんだ?」
カエデはこちらの顔をチラッと見て言った。
「正確なのは魔力採掘機を含めた場所だけだ。あとは…物凄く強いということしか分からない」
場所がわかっているだけでも十分ありがたい。勇者は今まで一番まともな理由でも、強い魔族が現れそうなクエストを受けたら偶然そこに配下帝がいた、というようにあまり覚悟をしていない状態で配下帝とエンカウントすることが多かった。
「よし、着いたぞ」
カエデの情報でやって来た教会の前には見張りのモンストラム教徒すらいない。静まり返っていて不気味である。ほんとうにこんなところにクローンを作っていたやつがいるのだろうか。
「入ろう!」
勇者がそう言って重い扉を押し開けるとその奥に見える祭壇に確かに彼女はいた。
「いらっしゃい。静かにね、みんな起きちゃうから」
側頭部から生えた羊のような角が顎よりも下で曲がっている。巨大な角と威圧感で彼女が紛れもなく配下帝序列四位のソニウムだということがわかる。
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なかなか続きを書けなくて申し訳ありません。お詫びに今後連載予定の数作品の1話をフライングして公開します。




