71 戦わなければ
☆前回のあらすじ☆
クローンとオリジナルの見分け方①
クローンはオリジナルと違いまともな食事をとっていないことが多いから体系で見分けよう。クローン・アミスよりもアミスのほうがおっぱいが大きいぞ。
レストランでクローン・アミスがカステラを頬張る姿を見ながら今後のことについて相談している。
「アミスさんはモンストラム教の聖堂に侵入できないの?」
「いや無理だよ。今私は脱走者扱いだし、顔見知りがいるはずだからバレる」
「俺も顔割れてるからな~」
勇者がベナトのほうに顔を向けるとアミスもそれに合わせてそっとベナトに視線を移した。
「なんです?」
「ベナトさんなら取材ってことで中に入れたりしない?」
コトッとコーヒーカップを置いたベナトはため息をついて、いかにも面倒なことを頼んできやがったといった顔をした。
「アポとってみます。正直、宗教関係の取材は知識がないからやりたくないですけど」
店を出ると、早速ベナトはモンストラム教の教会本部に電話を掛ける。
「そういえばクロミスはクローンのこと話してよかったのか?」
勇者がそういうとさっきまで笑顔だったクローン・アミスの顔がどんどん青ざめて体が震えてきた。
「マズイ…殺サレル。ドウシヨウ」
助ける義理はない。彼女がどうなろうと自分には関係がない。しかし、ここで見捨てるは違うだろう。
「ついてくる?」
「…行ク」
クローン・アミスは先程までとはすっかり雰囲気が変わり大人しい少女のようにうつむいている。そしてベナトは話が終わったり電話を切っていた。
「アポとれましたよ」
「流石です」
早速4人でモンストラム教の教会に向かおうとすると、それを止める人が現れた。
「止まれ」
振り返るとそこには40代ほどの男性冒険者と聖女のような冒険者が立っていた。胸のエンブレムを見るとどちらもSランクのようだ。
「なんの用です?」
「この件から手を引け。でなければここでお前を倒す」
男性冒険者が巨大なツヴァイヘンダーを抜いてこちらに構える。
「いきなり何です?てか何者?」
「俺はカエデ、そっちの聖女様はルクス。クローンを作っている本元を探しているただの冒険者だ」
ギルドがSランクと認めた人間だ。ある程度の信用はできる。しかし彼らが纏っている雰囲気は異様なものであり関わりたい人間ではない。
「そうですか…じゃあ任せます。みんな行こう」
関わりたくない人間と無理に関わりあう必要はない。ここは大人しく引き下がるのが吉と判断した。
「おいちょっと待て!」
「なんですか…もうかかわりませんよ」
勇者がそういうとカエデは不服そうな態度で話し始める。
「俺と戦え!72番目の転移者!」
「そっちが本命かよ…。とりあえず場所を変えよう」
全員でイカサガンから少し離れた荒れ地に移動した。カエデの目的は分かったが行動原理がわからないので警戒を緩めることはできない。
「え~と…みんな見学?」
「勿論デス」
「Sランク相手じゃねぇ…」
「撮影は任せてください」
「私はカエデの保護者なので」
岩だらけの荒野で勇者とカエデが向かい合い、お互い武器を握る。
「なんで俺と戦いたいんですか?」
勇者が質問すると、カエデは怒髪天を衝いたかのような声で話し始める。
「転移者はみんな魔族だ!俺は…俺たちは裏切られた!だから!お前が人として生きているうちに殺す!」
カエデの過去に何があったかは分からない。だが、どんなことがあったのかは容易に想像できた。前に出会ったプロディは魔族として生き、勇者自身も魔族になりかけ…いや、もう魔族になっているのかもしれない。だからこそ、勇者はこの時カエデと本気で殺し合おうと思った。
「始めようか」
勇者はロングソードで殴り掛かる。鞘はドゥルムガニの殻で作られていそこらの鈍器より遥かに硬い。カエデはツヴァイヘンダーを抜いて打撃を受け止める。
「がら空き!」
勇者はカエデの腹部に強烈な蹴りを入れる。カエデは後ろに跳び魔法を詠唱する。
「火球!纏う炎!」
ツヴァイヘンダーに込められた魔力が十数の火の玉となってこちらに飛んでくる。慌てて避けると地面の表面の岩が解けパチパチと音を鳴らしている。
「そこだーッ!」
カエデは炎を纏ったツヴァイヘンダーで斬りかかってくる。その衝撃と熱で勇者はとっさに魔法を詠唱した。
「不定形の土塊!」
「なんだ⁉」
勇者のロングソードが光ると巨大な岩の壁が作られ、同時にカエデの足元に何かが投げ込まれた。
「…っ!」
ドーン!
手投げ爆弾だ。勇者が手内職で作った爆弾が容赦なく炸裂する。カエデは一応防具をつけていたが全身から出血するだけでなく、衝撃を至近距離で受けてしまい地面に伏した。
「降参してくれ。殺すことはできない」
勇者がそう言ってもカエデの戦意は消えなかった。
「うっ…怡玖さん。俺は…信じたい!」
カエデはゆっくり立ち上がると灰色の8枚羽の風車を取り出し、腕を高く掲げた。
「…変身」
腕を大きく振ると手に持った風車は高速で回り、灰色の鳥の羽がブワッと溢れ出してカエデの体を包み、羽の塊の中から現れたのは仮面を着けた半人半鳥のフクロウのような戦士だった。
「アレ何⁉」
「あれは…まさか」
その怪物のような姿を見たベナトが勇者に向かって叫んだ。
「勇者さん逃げろ!そいつは69番目の転移者の変身能力、『アウル仮面』だ!本気で殺されるぞ!」
カエデの持っていた風車が巨大な回転のこぎりになり、空を飛びながら勇者を襲う。
「クソッ!なんだよそれ」
逃げようにも飛行する相手からは逃げ切ることはできない。勇者は覚悟を決めた。
「槍獄!」
「ふんっ!」
槍の魔法でカエデが距離をとった。この隙に鞘とグリップに渾身の力を籠める。
「うぉぉぉぉぉーッ!」
カチャッ
全力の力で引かれた鞘から刀身が少し見えた。しかしそこにはワイバーンの目があり、ギョロっと動くワイバーンの目と目が合った瞬間に意識が移動した。
「…ここは?」
「来たか人間よ」
暗くて狭い空間、そこにいたのは銀山で戦ったあのワイバーンだった。
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ルクス
身長168cm 体重55kg 属性緑
固有魔法 日よ東へ沈め
カエデとコンビを組んでいる冒険者。ノヒン国の中で10本の指に入るほどの実力者だがその戦闘を見たことがある人間はあまりいない。




