07 ラットは死んだ
☆前回のあらすじ☆
地下下水道を探検した
翌日、昨日の戦いで痛感したことがある。流石に武器が必要だということだ。勇者はそう考え町の大通りから少し外れたところにある武器屋へと足を運んでいた。
煤けた看板を掲げた古びた店。扉を開けると油と錆びた鉄の臭いが鼻を突く。壁には剣や魔法の杖がぎっしりと並び、棚には所狭しと見たこともない魔道具の数々が並び妖しい光を放っていた。
「(とりあえずオイルランタンを2つこれは必須だな…)」
装備の並ぶ棚を見回していると奥から出てきた武器屋の店主が話しかけてきた。
「いらっしゃい何がほしい?」
「あるなら銃器がほしいです」
「珍しい奴だな、あるよ少しなら」
「(魔法が発達している世界では銃はあまり発展してないのか?)」
店主は店の奥から重そうに木箱を抱えカウンターへと持ってきた。中には長らく日の目を見なかったらしい様々な銃が無造作に突っ込まれていた。。
「全然売れないからしまい込んでたよ」
「お~フリントロック式、雷管式の単発銃にペッパーボックス銃もある……おっ!これにしよう」
箱の中から取り出したのはくすんだシルバーの中折れ式のパーカッションリボルバー、この中では一番新しそうな装弾数六発の拳銃だ。ひときわ目を引いたこれは重量がズシリと手に沈む。
「これと火薬を500g、弾を120発、ワッド120枚、雷管120個、ホルスター、予備の回転弾倉2個、掃除道具をください」
「はいよ、使い方はわかるか?」
「銃は男のロマンだからねパーカッションリボルバーの使い方も大体わかりますよ」
ホルスターを腰のベルトに装着する。皮の匂いと金属の重みが武装したという実感を与えてくれる。
「結構重いな2kg くらいか?」
「他に何か必要か?」
「魔道具をいくつか試したい。面白いのあります?」
結局、四属性魔法の小瓶や燃える水など比較的に扱いやすいおすすめ品を色々購入したが集合時間までまだ時間がある。ローファーでは不便なので折角なので新しい靴を買いに行くことにした。
「すみませ~ん。少しいいですか?」
扉を押し開け靴屋に入り訪ねると明るく軽やかな声が返ってきた。勇者が前の世界で行っていたサバットは靴を履いて行う競技のため少しこだわりがある。
「はい!何でしょうかサンダルからハイヒールまで色々揃えていますよ」
「オーダーメイドで靴を作ってもらうことはできますか?」
「勿論!どう行った靴をご所望で?」
「ブーツなのですがバンプをやや尖った形にしてもらって、バンプとヒールカウンターに鉄板をいれて補強してもらいたいのですが」
「大丈夫です!完成まで2週間ほどかかります。今日はお客様の足の型を取らせていただきます」
勇者は頷き、採寸や支払を終えて店を後にした。シェレラ先輩との集合場所へ急ぐ。
「先輩どこだ?」
「あら、来たわね、それじゃ行きましょ」
集合場所である地下下水道の入り口に到着すると先輩は音も気配もなく後ろから現れた。
「色々買ってきたわね~」
「リボルバーと魔道具の燃える水と四属性魔法の小瓶詰め合わせセット。これを使って一網打尽にしようと思う」
そう言って回転弾倉に火薬と弾を込め反対側に雷管を取り付けた。
「何する気?」
「昨日みたいなネズミの大群を燃やす」
そう言って入り口に高さ30cmほどの板を固定する。そしてロングソードの鞘にオイルランタンを吊るし灯りをつけ中に入る。今回は昨日分かれた十字路を直進して浄水装置のある場所に最短経路で向かって行く。
「ま~た剣をそんな風に使って……」
道の上にある小石やごみを水路に落としながらしばらく歩くと、浄水装置のある空間に出た。そこにはやはり昨日と同じ少女がいた。
「どうするつもり?」
「まずはコンタクトを取らないとね」
言い出しっぺはお前だろという目つきでシェレラがこちらを見つめる。
「ハァ~わかったよ…」
勇者はため息をつき少女と会話しようと少しずつ一歩一歩静かに距離を縮める。
「こんちは、ぼく勇者、どっから来たの?オリスク?」
「私エクピラ…あなたは帰って」
声は冷たく、拒絶の色を含んでいる。勇者は肩をすくめシェレラの方へゆっくり戻る。
「どうしよう反応が薄い」
「なんとかネズミ攻撃を繰り出してもらわないとね、ネズミ退治中に不意に攻撃されたら対処できないわよ」
シェレラはこの少女について何か知っているようだった。しかしそれを聞こうとは何故か思えなかった。
「仕方ない、俺に名案がある言う通りにやってくれ」
二人は息を合わせてゆっくり近づいていく。
「よーい、行くぞ~」
エクピラは愚か者を見るかのような目でこちらをじっと見ている。
「捕まえろ!」
叫ぶと同時に二人で一斉に飛びかかった。
「ラットは死んだ」
短杖を取り出したエクピラが魔法を詠唱すると同時に奥からぞろぞろ這い出てきたネズミが大波のように襲ってきた。
「全力で走るよ!」
二人は出口を目指して全力で逃げ出した。濡れた石床は滑りやすく足元をとられそうになる。。
「(あらっ?この道こんなに濡れてたかしら?)」
出口が見えてくる、しかしネズミの波はもうすぐ後ろに迫っている。
「出口に仕掛けた板に引っ掛からないように跳んで!」
その声に合わせるように跳躍する。
バタバタバタチェー!バタバタバタキェー!
先頭のネズミの内数匹は板を跳び越える、しかし中にはタイミングを見誤り引っ掛かるネズミ、後ろのネズミに押され止まれなかったネズミがいる。すると入り口には次第にネズミの山が出来る。
「こっからどうするの!?」
「燃やす!」
そう言うと武器屋で購入した四属性魔法の小瓶詰め合わせセットの炎の小瓶を開けてネズミの山に投げ込む。
「火が弱すぎるわよ!」
「大丈夫!」
間髪いれずに風の小瓶を開けてネズミの山に向けると、ヒュゴォォォォっと突風が地下下水道を襲う。
「入るときに燃える水を撒いておいた。俺らの勝ちだ!」
地下下水道内は業火に包まれるた。
「(なんてこった…やりやがった)」
火が落ち着くまでしばらく待機、時折、体に火が着いたネズミが飛び出してくるのでその都度踏み殺していく。燃え広がるものがないからあまり時間はかからないだろう。
「このネズミ…あの透け乳首野郎の固有魔法で産み出したのか、それとも下水のネズミを洗脳したのか…まあ、どっちでもいいか」
「あなた攻撃されると口悪くなるタイプ?」
何はともあれネズミ退治完了だ。辺りは焦げ臭いにおいと黒焦げの死骸で満ちていた。
「二千匹ってとこかしら?大したものね」
「本当はかっこよくリボルバーで着火したかったのに、よく考えたら無理だったよ…」
「まあ、ドンマイ」
シェレラが用意していた魔法小袋にネズミを全て詰める。
「シェレラ先輩、一緒にギルドに報告に行きましょう」
勇者が声をかけるとシェレラは地下下水道の入り口をじっと見ている。
「先輩?」
「一人で報告に行って、私はまだやることがあるから、ランタン借りるわね」
そう言い残して、シェレラは一人で暗い地下下水道に入っていった。
「(そういえばシェレラ先輩何もやってないな)」
勇者は苦笑しつつ、一人でギルドに報告に来た。報告窓口では今まで対応してくれた職員さんが手続きをしている。
「一人で2005匹もカダバネズミを倒すなんて…すごいですね~。お疲れ様です」
「一人?いやシェレラさんと二人ですが…」
「ギルドカードには戦闘の記録がされるので間違い無く一人ですね。報酬の16000ピクニは今受け取りますか?」
「はい」
その日の夜、宿の小さなベッドで考え事をしていたが次第に眠りについた。
翌日、Eランク難度のクエストを終えたので、正式な冒険者の資格を取得するための手続きをするためにギルドにやってきた。
「というわけでこれで正式に冒険者として認められます。こちらのエンブレムを胸元にわかりやすいように身に付けてください」
Eランクのエンブレムとはいえかなり洒落たデザインであり学ランの胸ポケットにつけると様になる。
「あとお客様は転移者ですので勇者のエンブレムも一緒につけてください、あとクエストの報酬を振り込むためのギルド銀行の口座もお作りします。以上で終了です」
「ありがとうございます。あとこのギルドで依頼をすることはできますか?」
「はい。書類を書いて依頼を受けた人への報酬と掲示料を支払っていただければ誰でも依頼をすることができます」
「わかりました」
早速とある依頼の書類を書いた。
☆地下下水道の落とし物探し☆
Eランク難度
内容:地下下水道でランタンを探して下さい
注意:地下下水道の全体の水底を調べてください
報酬:16000ピクニ
あの地下下水道にはまだ誰かいる。
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エクピラ
身長 152cm 体重 リンゴ3/10個分 属性 緑
固有魔法 ラットは死んだ
華奢で透けている少女、乳首も透けている。
地下下水道の中でネズミたちと静かに暮らしている