69 茶番の終幕
☆前回のあらすじ☆
帆船は歴史に沈む
壊れた帆船戦艦と共にソルムの首を抱えた勇者は海に落ちた。爆発の衝撃で朦朧とした意識は入水の衝撃で今はしっかりしており、瀕死のクラーケンと目が合った。
「(前にもこんなことがあった…。服が重い)」
海水をたっぷりと含んだ衣装や鉄板入りの靴は、ここではただ勇者の邪魔をするだけの何の役にも立たない物体だ。勇者は必死に脚やソルムの首を持っていないほうの腕を必死に動かした。瓦礫が降り注ぎ、体が海底に引っ張られても彼女の首を放すことはできない。メタリクのように怪物にさせられてしまう可能性があるからだ。
「(息が…でき)」
勇者の意識はここで途切れた。そして、勇者の腕に抱えられたソルムが目を覚ました。
「(あぁ、うちの負けか…まっ、勝った人には敬意を払うとするかね)」
ソルムが意識を集中させると、近くを沈んでいたソルムの身体の手がしっかり握っている古いクンナトラの量産品の杖が青く光り出した。
「(これが最後の私の傍に)」
クラーケンの目が一瞬動き、一本の足がゆっくりと動き出し沈みゆく勇者の背中を押した。ソルムの頭は勇者の腕から零れ落ち、眠るようにゆっくりと海底に沈んでいく。
「(うちも馬鹿なことをしたな…。勇者のことなんて魔王様がやっつけるのに)」
しばらくすると、勇者は何者かに小舟に引き上げられた。ふわっと香る甘い香りを感じ、勇者は目を覚ました。
「ここは⁉」
「ちっ…大きな声を出さないでください」
小舟の端に座っていたのは、製鉄所で見たあのメイド服を着た魔族だった。小柄で小さな角の彼女は静かにこちらを見ている。
「君が引き上げてくれたのか?」
「そうだよ。はやく陸まで漕いで」
無表情な彼女は前を向いて静かに座っている。本当にそれだけだ。
「航路の案内は任せたよ」
「はい」
こうして戦いを制した勇者と魔族のエモティの乗る船は星空が映る海を進むのだった。
『レジーナマリス号の最期』
~企画・原作・脚本~
ソルム
~監督~
なし
~キャスト~
勇者 〇〇〇〇
メンダ ソルム
勇者の仲間A アスペラ
勇者の仲間B シェンティア
勇者の仲間C 十二年式魔導ゴーレム人形2型
執事 ミニスト
その他使用人 モンストラム教徒の皆様
冒険者A オヴ
冒険者B リネア
艦長 ナウィス
砲術長 イアケ
水夫長 ナタレ
上等水兵 バルナ
その他水兵 ノヒン国水兵隊の皆様
海賊船長 ローニック
その他海賊 ローニック率いる海賊の皆様
その他船客 居合わせた乗客の皆様
小柄な魔族 エモティ
~演出~
クラーケン
レジーナマリス号船員
勇者
特殊個体ワイバーン
~編集~
黒板係
ソルムの茶番ともいえる演劇が終わり、勇者は小さな魔族の乗る小舟をこいでいる。無口な彼女には聞きたいことが山ほどある。
「名前は?なんで助けてくれたの?」
彼女は面倒臭そうに口を開いた。
「私はエモティ。ソルム様を私の固有魔法太古の記憶で旧魔族に戻そうとしたところで船が大破、さらに瞬間移動できる魔道具も衝撃で調子がおかしくなったところで、クラーケンがあなたを持ち上げたから」
「俺は送迎役か…」
エモティの案内で数時間漕ぐと、人気のない砂浜に辿り着いた。
「私は魔王城に帰るけど、一緒に来る?」
エモティの提案だが今は他にやるべきことがある。
「大丈夫、自分たちで行くよ」
「…せっかく案内してあげようとしたのに」
「恩返し?」
「魔王様があなた達を倒せば普通の日常に戻りますからね」
「そう…」
少し視線を外すと、エモティは消えていた。とりあえずアスペラ達に電話しようと魔法小袋から携帯を取り出して電話を掛けると、魔法小袋の中から着信音が鳴った。
「あぁ…レジーナマリス号で借りたんだった」
どうしようもないので荷物の確認をすることにした。魔法小袋の中の物をすべて取り出し、一つ一つ確認していく。
「とりあえず学ランは無事だ。無くなったのはサーベルくらいかな」
流石の魔法小袋の性能だ。ムスクルが貯金を崩して買ってくれただけのことはある。
「燕尾服はクリーニングに出して船の管理会社に郵送で返すとして、その後どうしよう」
心地よい潮風を感じながら立ち尽くしていると、どこからか聞き覚えのあるエンジン音が聞こえ、草むらを踏み分けてくる足音が聞こえてきた。
「やあやあ、勇者さんこんなとこに居ましたか」
「ベナトさん⁉」
現れたのはノヒン新聞社のベナトだ。こんな場所までどうやって来たのだろうか。
「どうしてここが分かったんですか?」
「う~ん…記者の嗅覚かな」
「それ固有魔法の類では?」
「どうだろう…それに、迷子の子を探すのは大人の役目だろ?」
「もう『子』って感じの歳じゃないし、俺は冒険者ですよ」
ベナトさんが来た方向に二人で戻っていくとベナトはあることを伝えた。
「…冒険者は二次被害を防ぐために捜索届を出すことが出来ない。気を付けることだね」
車が走ることが出来る道に出ることが出来た。道には見慣れたボロボロの車が停められている。
「乗ってくかい?近くの町まで送るよ」
「ありがとうございます」
こうして勇者はベナトと共に次の町へ向かうのだった。
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ソルム
身長 165cm 体重 51kg 属性 青
固有魔法 私の傍に
配下帝序列三位の魔族。配下帝だけでなく魔族としても古株であり、大きく立派な角が生えていた。しかし勇者とプロディの戦闘の知らせを聞いて、勇者の侵攻を止めるために偶然近くにいたミニストと共に角を切り落とし変装して待ち構えていた。自分の弱さは自覚していたため勇者と接触した際の状況を予想し、モンストラム教徒たちと演技を数通り練習していた。
テストがあるためしばらく投稿お休みします。




