68 沈む
☆前回のあらすじ☆
変身!男のロマンだろ?
アスペラ達が最後に帆船軍艦に飛び移り、レジーナマリス号から離れていく。誰もいなくなったレジーナマリス号に一人残る勇者。これからクラーケン討伐のための最終手段に出るため空中の穴から信号弾を取り出し夜空に向かって発射した。
パシュ~ン
「砲術長!合図が見えました!」 「船長!合図が見えました!」
レジーナマリス号を挟んだ海賊船と帆船軍艦に緊張が走り、軍艦に避難した乗客たちは一斉に姿勢を低くして衝撃に備える。
「「砲門を開け!」」
戦艦の砲術長とローニックが号令をかけると、船の側面にある十数の砲門が一斉に開き大砲が飛び出る。そして、水兵や海賊たちが点火の合図を待つ。
「「撃てーッ!」」
ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!
大砲から次々と砲弾が発射され、極太のクラーケンの足に大きな傷をつけていく。反対側にある船がお互い味方ではないからできる戦術だ。とはいえ避難してきた人たちに被害が無いようしっかりとクラーケンの足だけを狙う。
「よし、暗闇の王!」
砲撃によって燃え盛るレジーナマリス号、その炎で姿を隠し、瞬間移動できる魔法を発動する。しかし移動先は砲撃した帆船戦艦ではない。
「プハァ!海に落ちたか…例の軍艦はあと200mくらいか」
勇者は海に潜ると三度暗闇の王を唱え、少し離れた場所を航行していた帆船軍艦に乗り込んだ。するとメモリア水晶の魔力が少なくなり、角やローブの炎が消え元の姿に戻った。
「うっ…。体力と魔力の消費が激しい…」
明るいが、静かな甲板。そこで一人の男が勇者の到着を待っていた。
「君か。俺の船を爆弾にしようと言い出したのは」
「はい…ごめんなさい」
「…帆船の時代は終わる。最後に大役を任せてくれてありがとう」
この人はこの帆船軍艦と数々の戦争を乗り越えてきた艦長だ。彼は最後まで相棒と共に戦った。
「足元にある導火線に火をつけたら3分後に爆発するように調整しておいた」
そう言って艦は避難用の小舟に下ろしたロープに掴まった。導火線は長く、船倉の奥の樽につながっている。
「後は任せた」
「はい」
艦長が避難したのを確認するとメモリア水晶を取り出して高く掲げた。メモリア水晶の光と魔力におびき寄せられるように特殊個体のクラーケンはゆっくり移動し始めた。
「(あいつ…まだあんなに元気なのか)」
ミシミシッ! バキッ!
しばらくするとクラーケンの足が船に絡みついてきた。木造の船体が悲鳴を上げ折れたマストが落ちてくる。
「(もっとだ、もっと締め付けろ。掌の上で爆竹に火をつけても火傷をするだけだ。だが、爆竹を握った手を握れば二度と銃の引き金は引けなくなる)」
ある程度締め付けたところで導火線に火をつけた。シューという音と共に船倉にあるエンディングに向かっていく。勇者も脱出するために小舟を切り離そうとしたその時だった。
「させないですわよ」
クラーケンの足の一本からソルムが下りてきた。
「…水玉」
彼女の杖が光るとドレスの水分が杖の先に集まり水の玉になった。そして、その水玉を導火線に落とし火を消した。
「…マジかよ」
「青属性を持って一番うれしいのは服を早く乾かせることですわ」
お互いが向かい合う。導火線に火を着けなくてはこの怪物は殺せない。
「もうお気付きかもしれませんが、わたくしの固有魔法の効果は生物を操る。具体的には半径5㎞圏内のわたくしより知能の低い存在を操れますの」
「へぇ~じゃあメモリア水晶の魔力が無くても殺せそうだ」
海に入る前に魔法小袋に入れていた拳銃やサーベルなどの装備を取り出し、落ち着いた様子でベルトに装着していく。そして袋の口をギュッと締め一呼吸置きリボルバーとサーベルを抜いた。
「…ッ!」
その瞬間、ソルムの首に斬撃が入る。ヒュッと血が飛び体が仰け反ると同時に後ろに跳んで距離を取る。
「はい着火」
再び火が付いた導火線、火種が進むのを見てソルムは水弾を放ち消そうとするが勇者はサーベルでそれを防ぐ。互いに譲ることが出来ない意地を見せ、魔法と弾丸を斬撃が飛び交い火種は消され、再び着けられ短くなっていく。
「ハァ…ハァ…やりますわね」
「ふぅ…うっ。そっちこそ」
回復魔法なんて忘れたかのように攻撃全振りの魔法、ソルムは魔力が少なくなり肉体の再生もできなくなっていく。
「これが最後ですわ!」
杖の先の水弾の圧力を魔力で高め構える。勇者もサーベルとリボルバーを構え最後の一撃を加えるために走った。
「抉る水流弾!」
バシュン!
勇者は飛んできた水弾に向かってサーベルを投げ、軌道を変えるとそのままの勢いで、ソルムに跳び蹴りを入れ馬乗りになるとリボルバーに残っていた3発の弾丸をソルムの顔に向かって撃った。
バンッ! バンッ! バンッ!
「うっ…」
「死んだか?いや、一応」
勇者は魔法小袋から手斧を取り出し、ソルムの首を斬りそれを確保した。
「そうだ!導火線!」
導火線の方に目線をやると既に船内に入っていた。すぐにメモリア水晶とリボルバーを魔法小袋に入れ、ソルム髪を握って海に飛び込んだ。
「うぉぉぉーーーッ!」
ドーーーン!
爆風で吹き飛ばされた無数の木片が空中で体に突き刺さる。耳がキーンとするのを感じたと同時に海に落ち、体が沈む感覚を覚えた。
読んでいただきありがとうございます
下の☆☆☆☆☆から応援お願いいたします
ブックマークも是非お願いします
(モチベーション向上のため)




