64 お嬢様
☆前回のあらすじ☆
火災にソーダ、覚えておこう。これはファンタジーだ。
エルクから少し離れた森の中、休憩していたプロディに話しかける一人の小さい魔族がいた。
「プロディ様、お疲れ様です」
プロディは彼女の顔を見て少し考える素振りをして紙巻き煙草に火をつけた。
「ああ、エモティさんか。俺は旧魔由来の魔族じゃねぇから『太古の記憶』は効かねぇぞ」
「そんなことではありません。せっかくこの私が退職届を預かってあげようと思っていましたのに…」
エモティは呆れたような表情で淡々と、まるで機械のように会話を続ける。
「助かる。後で飛竜便で送ろうと思っていたんでね」
プロディは黒のロングコートの内ポケットから封筒を取り出してエモティに預けた。これでプロディは魔王とは無関係の魔族になったのだ。紙巻き煙草をプッと吐き落としブーツで火を踏み消した。
「世話になった…」
「お疲れ様でした」
最後のあいさつを交わすとエモティはどこかに消え、プロディは再び歩き出す。
一方、錆と潮風と少し焦げた匂いのする港町、勇者一行は次の目的地に行くために船着き場に来ていた。
「さてと…次はどこに行きましょう」
「とにかく西に進もう」
ノヒン国のガイドブックをペラペラと捲りながら話す。左手に残るページは次第に薄くなり、この旅が終わりに近付いてきているのを感じた。
「船で行こうか」
「そうですね」
乗る船を調べチケットを買いに窓口に向かうと、なにやら賑やかな人たちが話し合っていた。
「じいや!わたくし達の乗る船はどうしたのですか!」
どうやら乗る船が見当たらないようだ、じいやが騒いでいるお嬢様をなだめている様子が見える。
「お嬢様…実は先の火災によって一部が燃えてしまったのであります」
大事な船が火災で燃えてしまったようだ。大きな帽子とシンプルなドレスを身に纏う上品なお嬢様が乗るような船だ、さぞや豪華な船だったのだろう。
「勇者さま…」
「……………」
勇者には心当たりがある。とてもある。絶対プロディのミサイルを爆発させたときに発生した火災が燃え広がったのだろう。ならばやるべきことは一つ。
「申し訳ありませんでしたァ!」
謝罪だ。すぐにお嬢様一行の目の前まで走り、勢いそのまま額を地面に擦り付ける見事な土下座を見せた。
「何事ですの⁉」
「その…」
ことのあらましを説明するとお嬢様方は静かに話を聞いてくれた。
「事故ならしょうがないですね。じいや、客船を押さえてきてください」
「はっ」
故意ではないとはいえ何もしないというわけにもいかない。どう補償するべきか考えているとお嬢様がある提案をしてきた。
「わたくし達の護衛をお願いします。プライベート船でなくなったので護衛を増員したいのです」
「お任せください」
その日の夜、街灯に照らされた港に多くの人が集まった。皆同じ客船に乗る乗客だ。
「勇者さま、あれですか?」
アスペラの指差すほうを見ると巨大な豪華客船がこちらに迫ってきている。あれは全長120m、高さ28mを超える外輪式蒸気船レジーナマリス号だ。
「蒸気エンジン付きの帆船か~凄いな」
多くの乗客がぞろぞろと乗り込んでいき、最後に勇者一行と護衛対象のお嬢様方が乗り込んだ。内装にはクリスタルガラスや大理石がふんだんに使われており、レストランだけでなく劇場やカジノなどもあるらしい。乗り込むとそれぞれの部屋に分かれ、お嬢様の部屋には、じいやと勇者、アスペラ、ゴーレムちゃんが一緒に入った。
「「「おぉ~!!」」」
客室は豪華であり、あらゆる場所に細かな装飾が施されていた。とりあえずテーブルに着いて落ち着こう。
「自己紹介がまだでしたわね。私の名前はメンダ、大手魔道具製造会社クンナトラの社長の一人娘ですわ。そしてこちらはミニスト、わたくしの執事ですわ」
「おぉ~!社長令嬢と執事か」
「クンナトラ⁉」
アスペラが社名に反応した。何かと思えば杖をテーブルの上に置いて見せた。
「あらまぁ、この杖はまだクンナトラが小さな工房だった頃の製品ですわね。当時は性能はいいものの、その大きさと重さから鈍器として使ったほうがマシとよく言われていた珍品ですわ。生産数が他の製品と比べ極端に少なく、確か今はプレミア値で取引されていたはずですわね」
「(やっぱ鈍器じゃねぇか…)」
「クンナトラは自然との調和をモットーにし、木と天然石と金属をバランスよく組んで作られる製品が特徴なんですよね。この杖は学生の頃に買って今までずっと私を支えてくれたんです」
アスペラは杖をなでながら語った思い出はとても面白く、それだけで本が書けそうだった。旅の思い出やこれまでの出来事を語り合ってしばらく過ごした後、甲板で行われるダンスパーティーに行くため各部屋に戻る。勇者も学ランを脱ぎシャツの上にワインレッドのジレを着てターコイズのループタイを締めた。
「今夜もダンスパーティーが始まります。ぜひ皆様もご参加ください」
オシャレなドレスやタキシードに身を包んだ人々が甲板に集まり、曲の始まりをパートナーと共に待つ。その中にアスペラもいた。レンタルした薄緑色のドレスに身を包む彼女はまさに森の妖精そのものだった。
「あっいた。勇者さま、燕尾服の上だけ借りてきました。どうぞ」
「ありがとう」
すっかり太くなった腕を燕尾服の袖に通しボタンを一つ掛ける。
「勇者さまって意外とかっこいいですよね。私と踊ってくれますか?」
「タンゴなら踊れるんだけどなぁ~。まあ頑張るよ」
アスペラが差し出した手をそっと握った。
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使用可能な固有魔法が増えてきたようだ
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