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プロローグの勇者  作者: 黒板係
兵港街編
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☆前回のあらすじ☆

あの臨時分隊強くね?

 のどかな昼下がり、さんさんと太陽が照らす港でプロディの首は飛んだ。プロディは配下帝の序列7位、魔王からの信用はあまり無く、中位の魔族としてもまだ弱かった。臨時編成した分隊は全員軽症だ、海に落とされた水兵も引き上げられた。


「…死んでいるよな?コイツ」


「クヒッ、もう一度確認しますね」


バルナが吹き飛んだプロディの首を拾い上げ瞼を開いてみる。反応はない、そう思い地面にそっと置こうとしたその時だ。


「…まだ」


「「「⁉」」」


プロディの声、今ここにいる全員が聞いたのは明らかに先程死んだはずのプロディの声だ。ナタレが再びプロディの首を確認したその時だった。


「これが最後だーッ!」


プロディが叫ぶのと同時、高さ30m程の空中に今までとは違い、人が肩車しても通ることが出来そうな程のとても大きな穴が開く。


「一体何が来るんだ⁉」


「クへ…何か不味いですね」


ナタレ水夫長は今までの経験から、今から起こるありとあらゆる最悪を想定して叫んだ。


「全員死ぬ気で走れーッ!」


その声を聞いた分隊、巡回中の水兵、近くにいた船乗りや市民がナタレの声とは反対方向に向かって走り出した。穴が出現してからここまでの時間約三秒、最悪はもうすぐそこまで迫ってきていた。




一方数分前、エルク沖を航行している商船や客船に紛れ一隻の海賊船が停泊していた。その海賊船の甲板でもまた問題が起きていたのだった。


「お前ぇ…小舟に張り付いて来るのは反則だろうがよ!勇者ぁ!」


「まあまあ、そうかたいことを言わず、話を聞いてくれ」


勇者は港で市民に注意喚起をしたり協力を仰いだりした後、海賊数人が小舟で海賊船に向かおうとしているのを見かけ、適当な鉄パイプをシュノーケルの代わりにして小舟の下に張り付いて潜入していた。目的は一つ、プロディを止めるためだ。


「それで俺たちは何をしたらいい?」


「そう来なくっちゃ!」


勇者の指示で甲板に一門の大砲を用意して港に向けた。遠くを狙えるように角度を調整していたその時だ。


「穴が開いたぞ!」


「あの大きさ、たぶん弾道ミサイルだな」


見張り台でエルク港を監視していた海賊からの知らせだ。勇者も確認した。この声を聞いたローニックが最終調整に入る。正確に狙っている時間はない、長年の経験、そして最後は己の勘に頼って角度を決めた。


「撃てーッ!」


ドーン!


放たれた一発の砲丸は綺麗な弧を描き、吸い込まれるように正確に空の穴に撃ち込まれた。


ドォーーーン!


穴から強力な衝撃波が発生した。その威力は凄まじく、穴の前にあった火薬工場を吹き飛ばし、火のついた瓦礫を飛ばした。


「おぉ…すげぇや」


「ありがとうローニック、戻るよ」


「あぁ、手下に舟を漕がせる」


大砲を外せばローニックはさらに懸賞金を掛けられ多くの人間から追いかけられることになっただろう。それにも関わらず発射したローニックはやはり海賊船の船長なんだと小舟に乗った勇者は思った。


「もう俺の船に来るなよ!」


「ああ、電話番号は控えたから大丈夫」


「いつの間にっ⁉」


燃え盛る港に着いた勇者はプロディの頭を胴体に密着させた。するとみるみる繋がっていき仕舞いには元通りにくっついた。


「あぶねぇ…助かった」


「よかったな。これからどうするつもり?」


プロディのは少し考える素振りをして髪を整え、レミントンM870を拾い上げて言った。


「銃を回収しなくちゃいけねぇな。メタリクさんに大量製造を頼んだ銃はこの世界にはまだあってはいけない」


「出来るの?」


「無煙火薬の匂いと銃の声を聞けば可能だ。時間はかかるがな…」


プロディは燃え盛る道の奥へ消えていった。


「じゃあな!」


最後の別れの挨拶を済ませると、アスペラ達3人が戻って来た。


「勇者さま大丈夫ですか⁉」


「大丈夫、そっちは?」


「クーデター計画は完全に破壊したのじゃ」


ある程度の問題は片付いたようだ。ただあと一つ問題が残っている。


「この炎…どうしますか?」


燃え盛る街、潮風によってどんどん火の手は広がっていく。しかし勇者は冷静に協力者たちの到着を待っていた。そして数分待っているとホースを持った人たちが大勢やって来た。


「放水開始!」


「「「おおーッ!」」」


屈強な男たちが次々に放水していく。すると炎の勢いがみるみる弱まっていく。


「勇者さま、なんだかシュワシュワしません?」


「ああ、消火用炭酸水だ」


ここは戦艦と火薬の街エルク、消火用炭酸水の工場はあちこちに点在している。彼らの事前対策と決死の消化活動により、火災規模に対しとても短い消火時間で完全に鎮火した。勇者たちはプロディが管理していたあの小さな造船所に足を運ぶ。そして、3人の首に着いた爆弾を外し、魔力採掘機に置いた。


「それにしても何で残り時間があんなに長かったんですかね?」


「これを作った人の悪足掻きだな」


爆弾が爆発するまでまだ8時間以上ある。造船所に立ち入り禁止の看板をいくつか立て街長に会いに行くことにした。幸いにも街役場は燃えておらず中に通された。


「今回は魔族との交戦によって町を破壊してしまったことを深くお詫び申し上げます」


「もういいんだ。君たちのやったことには大義がある、ここで足を止める必要はない」


街長はもう行けと手を振って追い出すように勇者たちを見送った。爆弾の件を伝えた勇者たちは再び魔王討伐の旅を続けるため、プロディとは反対の方向へ進むのだった。

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