56 淫魔の館
☆前回のあらすじ☆
メモリア水晶に触れずに魔法が使えるようになった。
話を聞くとどうやら館は緊急事態のようだ。内線電話をかけてきた相手に会いに行くために準備をしよう。話し合って取り敢えずピンクツインテサキュバスと看守サキュバスは協力してくれるそうだ。
「スピナ、さっきはありがとう。あれは何だったんだ?」
「自分の固有魔法っす!茨の道、効果は接地面に棘を生やすっす!」
「指は大丈夫?」
「大丈夫っす!指に魔力を込めたのは初めてっすけどこうなるんっすね~」
この時勇者は今まで自分が無意識に剣やナイフに魔力を込めて魔法を使っていたことに気付いた。
「勇者さんはこれからどうするんっすか?」
「サキュバスクイーンを討伐しに行くけど、まずは電話をかけてきたやつに会いに行く」
「そぉっすか…サキュバスクイーンは集めた精の力で異常な回復力を持っているって聞いたっす。気を付けてくださいっすね」
「大丈夫だ」
勇者は魔法小袋から手投げ弾を取り出して見せた。
「紐を引いて5秒でドカンだ」
「おおっ!頑張ってくださいっす」
「スピナも頑張るんだよ」
そう言って勇者は牢屋の鍵をスピナに投げ渡した。
「っす?」
「この後、タイミングを見て他の冒険者を救出するんだ」
「え⁉無理っすよ…」
「さっきのサキュバスが手助けしてくれると言っていた。クイーンに不満があるそうだ」
「…分かったっす」
トゥルルルル…トゥルルルル…
どこからか電話が鳴る。
「また内線?…いや、俺の携帯か」
掛けてきたのが誰なのかは大体察しが付く、すぐに電話に出た。
「もしもし勇者さま!今どこですか?」
「今ね、サキュバスの根城にいる。たぶんネウダナクの中心街からそんな離れていない大きな邸宅だと思う」
「あ~大体どこか分かりました。何か必要なものはありますか?」
「不死身の化け物も吹っ飛ばせるような武器が欲しい」
「なんとか用意してみます」
準備は整った。内線の相手がいる上の部屋に向かおう。牢屋のある地下から出る扉に一番近い牢屋にとても大きな頭の無い鎧がある。
「なんだこれ?…まあいいか」
扉を開けるとすぐに全身からカビを生やした人間が襲ってきた。
「ごぉぉぉぉお゛!」
「クソッ!」
ナイフを抜いて顎の下を思い切り突き刺す。一発で倒れたが、音を聞きつけカビ塗れの人間やサキュバスが集まってきた。勇者はそっとナイフを鞘に戻し右手にサーベル、左手に拳銃を構える。
「かかってきやがれ!」
次々と襲ってくる敵をサーベルで切り伏せ、銃で頭を撃ち抜いていく。だが襲ってくるのは化け物だけではない。
「人間⁉愛欲の奴隷!」
サキュバスも敵だ、この館には強力な精神支配ができる愛欲の奴隷を使うサキュバスがうじゃうじゃいたのだ。彼女らも魔法を使われる前に撃ち抜き、斬り倒して看守サキュバスに教えてもらったルートで階段を駆け上がっていく。途中、壁に張り付いたもはやサキュバスの原型を留めてない肉とカビの塊のような化け物が襲って来たりもしたが、無事に例の部屋にたどり着いた。
ガチャ
「おっ、やっと来た。はやく中に入りな」
「ああ…」
中は高校の実験室のような簡単な研究室だった。そしてその中には白衣を身に纏ったサキュバスが一体いる。
「早速本題に入ろう。座りな」
背もたれのない木製の椅子に腰掛けると彼女はすぐに話を始めた。
「言いたいことは3つ。1つ、クイーンを殺してくれ、あれはもうサキュバスではない。2つ、ここの化け物はとある性病の感染者の成れの果てだ、殺して結構。3つ、クイーンにこの注射を打て、静脈か動脈に刺すのが理想だが筋肉でもいい」
端的過ぎてなにがなんだか全く理解できない。
「もっと詳しく頼む」
「仕方ない…まずこの件の原因はとある性病だ。この病にかかると体の免疫システムが機能しなくなる。それだけでなくカビと栄養の交換を行って生き続けようとするようになるんだ、それがあの化け物の正体だ」
「病気については理解した」
「次にクイーンだ、彼女の名はマーテル。元々は人間の精を効率よく集めて搾精能力が低い奴らも飯にありつけるようにするためにサキュバスを集めていたんだが、次第に性格が暴力的になってな…。こっそり調べてみたらクイーンもこの病に侵されていた。厳密に言うと無理やり共生していた。カビで体を作って永遠の美しさを実現しようとしているんだ。…狂っているよ」
「サキュバスクイーンについても理解した」
「最後にこの薬だな、これはまあ、私が研究して作ったワクチンと消毒剤みたいなものだ。詳しくは言っても意味ないだろう」
「とにかくそれを打てばいいんだな」
「そういうことだ、出来るな」
「ああ」
話が終わると彼女はどこかに電話をかけ始めた。部屋を見学して待つこと数分。
「内線で各部屋のサキュバスにお前のことを伝えておいた。この話を聞いてなかったサキュバスはお前を捕まえようとすると思うが気にせず倒してくれ、仕方のないことだ」
「ありがとう」
注射器を受け取り彼女に背を向け歩き出すと、平常を気取っていた彼女の本音がこぼれた。
「私達を助けてくれ…」
勇者はドアノブに手をかけて質問する。
「その『私達』にクイーンは含まれているのか?」
「………」
研究室を後にした勇者は、教えてもらったクイーンの部屋に走った。その途中化け物やサキュバスが攻撃してきたが気に留めることなく廊下を血で染める。
「ひっ!愛欲の奴隷」
「(させない…)」
サクッ
「ぎゃぁ゛!」
途中、子供のサキュバスが魔法を使ってくることもあったが勇者は冷静に両目を斬った。
「はぁ…はぁ…ここか。広かったな」
大きな量扉を押し開け部屋の中に入ると、そこには一際角や胸の大きなサキュバスがいた。
「あら♡いらっしゃい」
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スピナ
身長 162cm 体重 55kg 属性 赤
固有魔法 茨の道
行方不明になった冒険者の捜索クエストで館を突き止めたCランク冒険者。顔立ちは中性的で整っておりサキュバスからも人気がある。固有魔法は敵の足止めや隙を作ることに特化しているが、空を飛ぶことが出来るサキュバス相手には無力だった。おち〇んちんがデカい。