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45 祝勝会

☆前回のあらすじ☆

目には目を、歯には歯を、化け物には榴弾を。

 あれから3日後。


「「「かんぱ~い」」」


勇者・ルーデ・ゴーレムちゃん・アスペラ・シェンティア・ベナト・フィーデス・ラボリオ、その他メタリク戦に協力して頂いたマスケット銃兵隊数名でちゃんこ鍋の店に来ていた。


「こんな人数で戦っていたのか…」


「勇者さまとルーデさんは高炉の上にいたので気付かなかったと思いますが、下では数十人のモンストラム教徒や夢の島植物園で交戦したテヌイの仲間の魔族2体との激しい死闘があったんですよ」


「そうだったのか…まあ、みんなお疲れさまでした」


勇者のねぎらいの言葉を受けたマスケット銃兵隊の兵士たちは皆、誇らしげな顔をしている。このノヒン国にとって勇者という存在はこれほどまで大きなものとなっていた。


「そういえば銃兵隊が動いたことは、本部は知っているんですか?」


ちゃんこ鍋をつつきながら、勇者は気になったことを聞いてみる。これだけの人数だ、上の人間が認識していないのは大問題だろう。


「知っていますよ。私とラボリオが最初電話で呼び出されましたけど、その時に使用した大量のマスケット銃の用意は手伝ってもらいましたし、戦闘中の増員も許可してもらいました。無理やり…」


「無理やりか」


国の兵隊を勝手に動かした責任は重いものだろう。それでもフィーデスは笑顔だった。


「まあ、今回の一件の全責任を取って正直怒られましたし、処分は受けましたが『勇者』と戦えたことの喜びのほうが大きいです‼」


「何故?」


「本当は私は冒険者になりたかったんですが、親に止められてしまって…。それでも、強い人間になったら認めてくれると思ったんですが、そのままズルズルとマスケット銃兵を続けて気づいたら今年で33…」


思いを吐き出して、フィーデスはジョッキのビールを一気に飲み干した。酔いが回ったフィーデスの顔はみるみる赤くなったが、雰囲気はソーダガラスのジョッキのように爽やかだった。


「そうなんですね…」


それとは対照的に嫌な酔い方をしている人もいた。


「ふぃ~。もっと酒持ってこ~い」


「ルーデさん。もうその辺に…」


「ルーデ殿にこれ以上飲ませるわけにはいかんの。ほれ、水じゃ」


「おぇ、美味しくないよ~ミネラルがない」


「…なんだ平常運転か」


シェンティアも回復して途中からアスペラと参戦していたらしい。魔族の自己修復能力とアスペラの回復技術の賜物だ。信頼しきっている存在ではないが、今は回復したことをうれしく思う。


「あれ…?肉と魚介が消えている」


「エッ?ナゼデスカネ…」


「…まあ、今日はいいよ。ゴーレムちゃんがいなかったら死んでたし、ベナトさんの奢りだから」


「え⁉私の奢りですか⁉…まあいいですけど」


「よっしゃ!食べるぞーッ!」


「「「おーーー‼」」」


「ひぇ…」


皆で鍋を楽しみ、たのしく、そしてにぎやかな祝勝会が終わった。


「…やっぱ冒険者と兵士って物凄い量食べますね」


「ベナトさん。ゴチになります」


「トホホ…」


その日の夜、宿に戻った勇者一行はこれからの予定を決めるために宿の一室に集まった。


「グゥ…」


「…ルーデさんは寝かせておきましょう」


「ああ」 「そうじゃな」


地図を広げて次の目的地を決める。


「どこに行こうかな」


「勇者さま、実は私次の配下帝についての情報を入手しているんですよ」


「え?どうやって?」


「製鉄所で倒した魔族がたまたま知っていたので」


「そうか…それで、どこにいるんだ?」


「さあ?頭のない鎧の姿をしている魔族ということしかわかりません。すぐに死んでしまったので」


重要な情報。だが肝心の場所がわからなければ意味がない。


「シェンティアは何か知ってる?」


「…ノーコメントじゃ」


シェンティアも配下帝、同僚を売るようなまねはできないのだろう。


「まあ、そうか…」


ルーデとゴーレムちゃんはベッドで完全に夢の中だ。こうなれば最後に頼れるのは、いつだってノヒン国のガイドブックだ。よく見るとこの本を書いたのはベナトだ。ページをぺらぺらとめっくていると、とある内容が目に入った。『ノヒン国最後の騎士団』、とても興味深い。

.

「アラハギケスという街に騎士団があるみたいだ。ここに行ってみよう」


「わかりました」 「今日は早く寝るとするかの」


アスペラとシェンティアは隣の部屋に戻っていった。借りた部屋は二部屋、ベッドは4つ、そしてゴーレムちゃんがベッドで眠っているということは勇者の眠る場所がないということだ。


「主人が床で寝ることになるとはね…野宿よりはマシだけど」


勇者はローブにくるまり、板についたてるてる坊主スタイルで寝ることにした。そして、皆それぞれ眠りについた。勇者はこの世界に来てからあまりいい夢を見ていない。ただ本人は夢の内容を覚えてはいないが。




翌朝、身支度を整えた勇者一行はオヤコト駅に来ていた。人々で賑わい、駅の前には多くの馬車や自動車が停まっている。


「切符を買おう。5人分…4?ゴーレムちゃんは荷物扱いか?」


「ゴマイカッテキマス」


ゴーレムちゃんに買ってきてもらった切符でまずはアヨガン行きの蒸気機関車に乗り込む。車内は板張りで天井はアール型。対面座席のシートは赤色でどこを切り取っても絵になる。4人で向かい合って座りゴーレムちゃんを膝にのせて汽車にゆられること数分、アスペラと勇者以外は夢の世界に旅立った。


「テンション上がっているのは俺だけ?」


「まあ、気楽に過ごしましょ」

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オヤコト駅

ノヒン国最大の駅。観光客や冒険者、時には兵隊も利用する。残念ながら駅弁はない。

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