21 襲撃者
☆前回のあらすじ☆
海賊達をやっつけた
モグ モグ モグ
狭い宿の一室でアスペラがお土産に買ってきたアップルパイをルーデと頬張る。
「これうまいな、唾液腺が破裂しそうだ」
「そうだね、僕もこんな甘いものは久しぶりだよ」
アスペラがルーデのことを観察している。
「なんで勇者さまと一緒にいるんですか?そしてお名前は?」
「ははっ自己紹介がまだだったね。僕の名前はルーデ、全国共通ギルドの基準でBランクの冒険者さ」
「…それで?」
「まぁ成り行きでかな?」
「そうですか…私はアスペラ、ランクはA。その…よろしくお願いしますルーデ…さん?」
二人の会話を聞いていたら思わぬ情報だ。一緒に旅をしていたアスペラのランクを今さら知ることになるとは…
「俺がDランクで最低か…」
「気にすることはないですよ。話は変わりますが、なんでデルフィーニ号が襲われたかわかりますか?」
「俺がウラトでノヒン新聞社のインタビューを受けたから勇者の情報が広まって、悪用しようとした人達が襲ってきたんだよ」
「なるほど...気を付けてくださいね」
今日はたくさん体を動かしたからよく眠れそうだ。狭い部屋に並べられたシングルベッドで眠りについた。
翌朝、窓から入る日差しで目を覚ました。
「久しぶりに快眠だった気がする」
朝食を食べていると、アスペラが昨日聞き込みで手に入れた魔族の情報を教えてくれた。
「ここから南にあるアイェミシン村で失踪する人が多発しているそうです。行ってみますか?」
「うん、行ってみよう」
宿から出ると朝日が眩しい。
「ルーデはこれからどうするの?」
「僕はとある魔道具を求めて一人で旅をしていたんだけど…君たちを見ているとなんだか楽しそう、もしよかったら一緒に行っていいかな?」
ルーデがいるのは心強い、断る選択肢はない。
「じゃあ一緒にアイェミシン村に向かおう」
ウラグトからアイェミシン村までは地図を見る限り徒歩で一週間ほどだ。キャンプしながら歩き続けると、村まであと10kmの場所まで来た。
「明日には到着しそうだね」
「勇者さま、お腹がすいたのでご飯にしましょう」
「そうだね、俺はご飯を炊くからアスさんはルーデとおかずのよういをお願い」
30分ほどすると、辺りが肉やスープのいい匂いに包まれた。
カサカサッ
茂みの奥になにか気配を感じる。
「勇者さまどうかしました?」
「少し歩いてくる」
そう言って森の中に入る。すると音の正体はすぐにわかった。汚れた服を纏った5才くらいの少女だ。
「お嬢ちゃん、こんなところで何をしているのかな?」
「……………」
スッ
少女が大きなガラスの破片に包帯を巻いた粗末なナイフをこちらに向ける。
「いい匂いにつられたのかな?ちびっこギャングだ。それで俺をどうする気?それをゆっくり渡しな」
恐る恐る少女にてを伸ばす。もう少しでガラスに触れられるという距離まで近付くと、手首に熱い感覚を感じた。
「……………」
手首から血が流れる。
「痛い…もう何をされても文句は言えないよ」
今度はガラスのナイフを奪うつもりで近づく。すると、足が地面にピタリとくっついてしまった。
「ノリテ………イレ」
「なんだこれ?」
弱々しい声で少女が呟く。するとガラスのナイフの先端が微かに光った。よく見ると少女の口元に少し血がついている。
「(どうしよう)」
少女がこちらに向かって歩いてくる。その目には明確な殺意がこもっている。
ドゴッ バタ…
走ってきたアスペラが少女の頭を杖で殴って気絶させた。
「勇者さま、気を付けてくださいね」
倒れた少女は頭から血を流す。
「アスさんやりすぎ、頭蓋骨が砕けたんじゃないか?」
「回復するので大丈夫です。もう動けるはずなのでその子を運んでください」
「わかった」
焚き火の横に寝かせ、怪我を確認する。
「栄養失調かな?それと喉が少し裂けている」
「とりあえず回復しますね」
アスペラの杖の魔石が光る。
「癒しの風」
「…大丈夫かなその子?」
ルーデが少女の顔を覗く。
「とりあえずご飯を食べて寝ましょう。」
3人で見張りを交代しながら夜を明かした。
翌朝、少女は目を覚まし慌てて何かを探している。
「捜し物はこれかい?」
見張りをしていたルーデがガラスのナイフを少女に見せる。
「あたしの………ん⁉」
「よかった、喋れるみたいだね。僕にお話し聞かせてくれないかな?」
ルーデはナイフを返した。少女は寝ている勇者やアスペラを見て戸惑っている。
「大丈夫だよ、君が切りつけたお兄さんも、君を杖で殴ったお姉さんも、今は寝ているから。君の名前は?」
「あたし、セム…村のみんなが殺されちゃった。喉が渇いた。お腹もすいた。なにもできない…」
「頑張ったねセム、大丈夫だよ僕たちがなんとかするから」
「うん…」
セムは少し安心したようだ。
「少し寝てな」
すぐに村に向かえるように準備を整える。
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セム
身長 109cm 体重 17kg 属性 赤
固有魔法 魔法のミシン
アイェミシン村に住んでいる少女。素直で頑張り屋、親の手伝いもするけどまだ失敗することも多い。




