表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/62

47. 怪異物語 転(2)

上へ上へと進むボクたち。その間にも、風里は四宮さんを探している。


「正直、これで回収し損ねたアイテムがあったら詰みだよね」


「それはちょっと胸糞よね」


そんなことを話しながら進んでいると、図書室に辿り着いた。


「・・・ここ、電気がつく」


「えっ」


スイッチを押すと、確かに電気がついた。暗めではあるけれど、図書室全体が照らされ・・・


「っ、かお!!」


「あ、山神さん・・・?」


図書室の真ん中に座り込んだ女性がいた。それを見た風里が飛び出したので、あの人が四宮さんなんだろう。


「山神さん、ほんもの・・・?」


「本物だよ!無事で良かった・・・」


風里と抱き合う四宮さん。濡れ烏色の綺麗な髪には木の葉が付き、腕にはどこかで引っ掛けたのか、擦り傷があった。


「かお、心配したんだから・・・」


「ごめんね、山神さん。あの教室にいるのが正解だったんだろうけど、1人で待ちぼうけはできなかったや」


そこで、四宮さんがボク達を認識した。


「あの方々は・・・?」


「ああ、わたしの仲間。最近こっちに巻き込まれたみたいなんだけど、強いわ。彼女らと力を合わせれば、わたしたちも出られるかもしれない」


「そうなんだね。皆さん、山神さんと一緒にいて頂きありがとうございます。私も、微力ながら協力させて頂きますので宜しくお願いします」


「礼儀正しいんですね。こちらこそ、よろしくお願いします」


簡単に自己紹介を済ませたボク達は、風里と四宮さんの案内で最上階を目指していた。

しかしながら、段々と四宮さんの歩調が遅くなっていった。心配になってサクラとボクで様子を見に行くと。


「うぅっ・・・」


「四宮さん、大丈夫なのです?」


「うぅう・・・うぐっ!」


一瞬呻き声が強くなり、蹲る四宮さん。


「かお、どうし・・・、サクラ、離れてっ!」


「え?」


サクラが風里の叫びに振り返った瞬間、


「うああっ!」


それまでと違い、澱んだ目をした四宮さんが襲いかかってきた!


「サクラ、危ないっ!」


思わずサクラを押しのけ、代わりに四宮さんに押し倒されてしまった。


「何が起きて・・・まさか」


四宮さんが口をあけ、舌をのばしてくる。みんなが慌てて駆け寄ってくるけど、四宮さんは一瞬でボクの唇を奪った。


「モミジっ!そんな・・・」


「な、何が起きたの?」


「かおが・・・、怪異になっちゃったかも」


「!それじゃあ」


四宮さんの口から、どろっとしたナニカが流れ込んでくる!必死で押し退けようとしても、女の子とは思えない強い力で押し込まれ、身動きが取れない。


======


「あれ・・・ここは・・・?」


さっきまで抑え込まれ、苦しかったはずなんだけど、気がつくと真っ白な空間に佇んでいた。そして、視線をあげると、そこには誰かがいた。


「ようやく意識を繋げることができました。こうして相見えるのは初めてですね、紅葉さん」


「あなたは・・・?」


ボクのことを知っている?けど、ボクはこの女性を知らない。女性は稲荷さんみたいに、きつねの耳と尻尾を生やしているけれど。


「私の名は桔梗。あなたがまだ乳児であった頃に、訳あってあなたの中に匿わせて頂いていた狐です」


ボクの中に・・・?


「それは、取り憑いたとかそういうこと?」


「簡単に言えば、そうなります」


そんなんだ。でも、だったらどうして今になってなんだろう?


「それは、あなたが仮想空間で妖狐の姿をとったからです。そのおかげで私の姿に似通った姿となったことで、私の覚醒が近づいたのです」


話せば長くなるが、と桔梗さんは一息おいて、語り始めた。


「私は、かつて稲荷様のように狐神になりかけの存在でした。そのまま何事もなければ稲荷様のように人型となり、どこかの神社で御神体として祀られる・・・。そのはずだったのです」


「でも、そうならない何事かが起きた?」


「その通りです。ある日、長年人々の怨念を吸収してきたとある大蛇が怨念の塊に堕ちてしまったのです。彼は元々、大蛇様として信仰の対象だったそうですが、次第にその信仰心は薄れ、負の感情の捌け口になってしまいました。その負の感情が溜まってしまい、彼は怨念に堕ちたのです」


そして、と続ける。


「なんの故かは存じませんが、狐神になりかけの私に襲いかかって来たのです。私は必死に逃げましたが、やつは執拗に追ってきました。そして幾度にわたる逃避行の末、稲荷様に頼み込み、あなたに取り憑いたということです」


「そうなんだ。それじゃ、なんで今になってボクの前に姿を現したの?それまで何年もあったのに」


「それは当時の私は瀕死だったということもあります。瀕死の私はあなたの保護下に入り、休眠状態に。少しづつ体力を取り戻しつつあったのですが、あなたが妖狐の姿をとったことでその回復が早まり、今復活することができました」


そうなんだ、それで、このタイミングでなんだ?


「あなたが意識を失ったから、というのもありますけれど」


「意識を・・・?あっ、そうだ!大変な事になってるんだった!」


「一部始終は私も理解しています。そして私の力なら、この状況を打破できる。それもあって、あなたとこうして直接相見えたのです。紅葉さん、強く念じるのです。私を呼び出さんと。そうすれば、私はあなたの救いに、必ずやなりましょう」


そうして桔梗さんは微笑んだ。仕方ない、一か八かだ!お願い、桔梗さん、助けて!


======

「むぐっ、ぐうぅっ!!」


気づいたら、また四宮さんに抑え込まれていた。いや、さっきのが意識を失って見ていた精神空間なんだとしたら、戻ってきたと言うべきかな。


(あなたも、このお嬢さんも助けてみせます!)


桔梗さんのそんな声が聞こえ、腕に力が。

ぐぐぐっと四宮さんの腕を持ち上げ、起き上がる。


(このまま、お嬢さんの体に私の力を注ぎ込みますよ)


未だに繋がっている口から、暖かい何かが通り抜けていく。不思議とさっきのナニカと違い嫌悪感はなかった。

しばらくすると澱んでいた四宮さんの瞳が元の綺麗な瞳に戻り、口が離された。


「ぷはぁっ!」


『今のなんだったんだ?』

『とにかく百合百合してて素晴らしかった』

『思わず画面録画したわ』


「モミジっ!」


サキが駆け寄ってくる。いや、みんな駆け寄ってきた。そりゃそうか、怪異に襲われてたんだもんね。


「大丈夫!?それと、今のは・・・?」


そして四宮さんを見ると、風里が質問責めにしていた。あっちはあっちで大変だろうし、そっとしておこう。


「ボクは大丈夫。それと・・・強くなったの、かな?」


「はあ?」


「・・・モミジ、そういうことなんだね?」


「うん、そうみたい」


「姉妹だけで解決しないで欲しいです。私たちに説明を求めます」


かくかくしかじがうんぬんかんぬん・・・。


「にわかには信じ難いけど、本当なんでしょうね」


「桔梗っていう子がいるのね〜?」


「やっぱり先輩は神秘です!先輩しか勝たん!」


「モミジスキーは落ち着こうね〜」


「モミジさん、その桔梗さんは大丈夫なのです?」


「うん、どうやらボクが妖狐だから回復が早まったみたい」


何とか納得したみんな。そして風里と四宮さん落ち着いたみたいだね。


「それじゃ、みんなの無事が確認できたことだし。最終決戦と行きますか!」


「まだ最終か分からないけどね」


「それはほら、気の持ちようよ!」


どっと笑いが起きる。そうだね、こういう時こそ笑っていかなくちゃね!


======


「桔梗、目覚めたのですね」


「漸くと言うべきか、早いと言うべきか・・・。19年前にあなたから伝えられた時は耳を疑ったわ」


「そうですね、あの時は私もまさかと思いましたから。でも、これであの子も元気になってくれましたし。懸念は、彼奴がどれくらいで勘づくか・・・」


「彼奴って、桔梗ちゃんを狙っていたという?」


「はい。正直、私の力だけでは彼奴に対抗するのは難しいかもしれません。せめて、紅葉だけでもお守りしなければ・・・」

これまでに何度か伏線を張っていた、「紅葉の中にいる何者か」が明らかとなりました。伏線として、アンドロメダで1回だけユリを呼ぶ際に「姉様」と言ったこと、クワトロの神社でイナリと談笑していた際に感じた圧に何故かモミジが震えたというのがあります。我ながら伏線の張り方が下手くそだとは思うんですが、お許しください(汗)


最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいね・感想をいただけると嬉しいです。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ