45.怪異物語 承(2)
「とりあえず、次の目的地はこの異界に巻き込まれた学校よ」
「学校?」
「そう。今は、と言ってもあたしが取り込まれた時点でだけど、廃校になってた学校がこっちにあるの。そこが、1番可能性があるんじゃないかと踏んでる」
『なるほどな』
『もしや隠しアイテムはそこに関係あるんか』
『学生証とか校章とか、ワンチャンあるかも』
あまりこういうところに時間をかけるのもどうかと思ったので、少し話をして(他愛のない話も含めて)、早速向かうことにした。
「で、また大遠征ってわけね」
「足が痛くなってきたわ〜」
「救いなのは道中に怪異があんまりいないことですね」
「そうだねぇ」
怪異は脅威なだけでなく、絵面的にBANの対象になりそうだから、出逢わないに越したことはないんだよね。
「そろそろ着くよ」
『意外と近いんやな』
『ストーリー的には今どんくらいなんやろ』
藪をかき分け進むと、暗がりの中から学校が現れた。
「これが・・・」
「そう。ここが、『緑谷学園』だったところ。・・・あと、あたしが無意識に避けてたとこでもある」
「?それってどういう」
「さて!うだうだ言う前に、ちゃっちゃと探索しちゃおっか。あなたたちも早く返さなきゃだし」
風里が何か意味深なことを言ったのに対して言及しようとしたら、あからさまに遮られてしまった。
「中は意外と綺麗ね」
「そうね〜。もっと埃だらけとか、汚れがいっぱいかと思ってたわ〜」
「ここの最上階から、強い気配がする。歪みがあればいいんだけど。ついてきて」
今回は迷いなく進む風里。探索はしないのかな?
「電気はついてないのに、火災報知器のランプはついてるの怖いですね・・・」
「なんか落ちてるのです」
サクラが指差した方を見ると、消火栓のランプに照らされて、何かが落ちているのが見えた。
『気づかんかったわ』
『結構しっかり見ないと気づけないなこれ』
『他の人達の配信だとスルーしてたわ。よく気づいたな』
「なんだろうこれ。またメモっぽい?」
『あの子はいつも自分を悪者にする。こうなったのはあの子のせいじゃないのに。しかも私を置いて1人で行ってしまった。ここが1番安全ってことは、私も分かってる。だけど』
「ここで千切れてる・・・」
『重要な情報が書いてない』
『そっからどうなった?』
『あのビルのやつも関係してるんかなぁ』
「繋がりそうで繋がらないわね」
「・・・ほら、急がないと置いてくよ!」
「あ、待って〜!」
もう少し考察したいけど、置いていかれたらたまったもんじゃないし、仕方ない。
電気のついていない校舎の中、1教室だけ明かりが着いている教室があった。中を覗いてみると、懐中電灯によって室内が照らされているみたい。
「あ、また紙が落ちてるのです」
「ほんとだ。えっと?」
『私にも出来ることがあるかもしれない。道中で力尽きちゃうかもしれないから、メモを残しておくね。■■(塗り潰されている)さんが戻ってきた時、私がいなかったらそういう事だと思って下さい。 四宮』
『伏線回収きちゃ〜』
『四宮ァ!』
『なるほどここからビルに行ったんやな』
他にも何かあるかもしれない。謎解きゲームでいう、TRUEENDに辿り着く為の何かが。今の情報だけだと、なんか違う気がするんだよね。だって、これだけだと風里関係ないし。
「・・・ちょっと、ここで休憩しようか。ここなら安全だし、疲れたでしょ?」
「私はまだまだいけるのです。けど・・・」
「あたしは休みたいわ〜。足が棒になりそう・・・」
「マリアの語尾がのびなくなったってことは、ガチ限界っぽいわね」
「じゃあ、少し休もうか。マリア、大丈夫になったら言って〜」
「はぁい」
「風里、あなたも大丈夫?元気がないように見えるけど」
「ん?・・・ああ、大丈夫。わたしもちょっと疲れちゃったから、少し休めば良くなるよ」
『マリアさんの語尾って疲れると無くなるんだw』
『マリアたん運動苦手そうだもんねw』
『まあ常にでかい重り付けてるようなもんだしな』
じゃ、時間できたことだし、ちょっと探索してみようかな?
引き出しとか、掃除用具ロッカーとか。
掃除用具ロッカーを開けてみると、予想通り箒やちりとりが入っていた。けれど、その他にブレザーが入っていた。なんで掃除用具ロッカーに?
「名前・・・あ、名札あった。・・・四宮、か」
『また出た』
『ちゃんと探索してない人は意味分からんやろうな』
ロッカーの中には他にめぼしい物は見つからなかった。引き出しも見てみようかな。
「モミジ、何してるの?」
「ん?ああ、またなんか隠し要素無いかなって。多分この休憩時間、要するに探索しておけってことなんだと思うから」
この机には何も無いなぁ。
「こっちは・・・あ、なんかあった。これは・・・また学生手帳?と、お札の束?」
・・・もしかして、これかなりのキーアイテムなんじゃ?ボクの予想が合ってるならだけど。
「名前・・・山上、風里」
全員がバッと風里の方を向いた。風里は苦笑してる。
「で、でも漢字違うし、人違いの可能性も」
「戸籍上は、上って漢字を使ってるんだ。他の一族との兼ね合いもあってね」
「ってことは、やっぱりこれは風里のなんだね」
『すごっ』
『初見でtrueエンドルート来るか?』
『モミジちゃん探索ゲーやってた説』




