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41.お料理(手作り)

よし、まずはこのタコトパスから捌いていこう。こいつ、なかなかに生命力が高く、まだ元気に動き回っている。


「なんか、このタコトパス、そろってずっと先輩の方に行ってません?」


「そういわれるとっ、確かに。こうやって動かしても、こっちに寄ってくるなあ。なんでだろ?」


「もしかして、先輩のこと狙ってるんじゃないですか?」


「こいつらが?ないない」


冗談めかしたトウカに、笑って返す。そんな知能があるなら、むしろ逃げていくはずだもの。


『そういえば、タコトパスの口はちょっと特殊らしい』

『そうなん?』

『友達が言ってた』


「そうなの?・・・あ、確かに。クチバシがなくて、なんか吸い付くための器官みたいになってる。これで吸い付いて血とか吸うのかな?」


『どこに吸い付くんだか』

『ヌタウナギみたいな感じ?』

『実はヌタウナギにも歯はあるんやで』

『そうなんや』


試しに指を近づけてみると、吸い付いてきた。


「おお・・・吸い付いた」


『なるほど理解』

『舐る・・・ひらめいた』

『通報した』


「とりあえず、締めちゃわないことには何もできないね。いただきます」


そういってから、眉間に包丁を一突き。赤みが少し抜け、白っぽくなった。これで締まったかな?

そして頭・・・もとい、胴をひっくり返して内臓を抜き取る。よし、これで締まったね。

試しに足を少し切ってみると、本当に蛸みたいな刺身になった。


「おお、本当に蛸だ。とりあえず、この足ぜったい汚いから塩もみしとこ」


塩をまぶして、主に足を入念にしごく。蛸ってのは岩とかにくっついていることが多いから、足に汚れが溜まっているんだ。


「やっぱり、すっごい汚れ。これはもう一杯もしっかり洗わないと」


これでもかというほど磨き、汚れとヌメリが取れた。


「ねえ、鮮度的には大丈夫だけど、お刺身食べる?」


「う~ん・・・せめてボイルはした方がいいかも。生はちょっと、いえ結構勇気いるわ」


「生はハードル高すぎるのです」


「分かった。じゃあ茹でるね」


「その間にキタマグロ卸しとくわねー」


沸騰したお湯に塩を少々入れ、タコトパスの足から湯に入れていく。後は茹で上がりを待つだけ。そしてサキの方を見ると、キタマグロの解体ショーが始まっていた。


「すご、サキよく捌けるね。知ってたの?」


「まあ、動画でよく見てたからね。はい、頭とカマ落としたわよ」


なんとも手際がいい。またサキの新たな特技を知れた気がする。


『こんな間近でマグロの解体見たの初めて』

『サキちゃん手際よくて草』

『憧れるわ〜』


「うわ、お腹すごい脂」


「ほんとね〜。すごい大トロかもしれないわね〜」


『脂すごw』

『美味そう』

『胃もたれしそう』

『歳とるとこういうのが辛くなってくるんよなぁ』

『分かる』

『分かりたくなかったけど分かる』


「大人になると脂がきつくなるよね。分かるよ、うん」


「そういう割にお姉ちゃん唐揚げいっぱい食べるじゃん」


「唐揚げは別なの」


『草』

『唐揚げ美味しいよね』


「よいしょ、と。はい、半身終わり」


そうこうしているうちに、半身の解体が終わっていた。早いね。


「もう半身も解体するんだけど、誰かひっくり返すの手伝ってもらっていいかしら?」


「あたしがやるわ〜。せーのっ」


「おいしょっ、と」


2人がかりでなんとかひっくり返った。流石に大きいからね、大変だ。


「てか、今思ったけど、これ私たちだけで消費しきれるのかな?」


「インベントリにしまっておけばしばらく食料に困らないのです。お財布に優しいのです」


「まあそうなんだけど・・・」


『そういやインベントリに入れとけば腐らないもんな』

『ゲームだからできることよ』

『鮮度が保たれるってええよな』


「いしょ、と。はい、5枚おろしできたわ。あとはモミジ、任せた」


「はいはい、任されたっと」


サキに大まかにおろしてもらって、後の調理はボクがやろうということになっていたんだ。


「あ、そうだ。サクラ、中落ちこそぐ?」


「お仕事なのです?だったらやるのです!」


さっきから割と手持ち無沙汰だったサクラに中落ちを確保してもらおう。中落ちとは中骨に残った身のことで、骨の形からマグロなんかは必ず残る部位・・・ってのを知らない人はいないか、流石に。


「じゃ、まずは頭からやっていこうかな」


マグロの頭には様々な部位があって、例えば目玉。例えば脳天の頭肉など、捨てる部位が少ない。


「皮をひいて、ここが頭肉。それとこの頬のところに頬肉。さらにはカマのところにはカマトロや目玉などなど。・・・で、合ってると思うけど、間違ってたらごめん」


『勉強になるわぁ』

『鮪1尾仕入れたらやってみよ』

『↑一般人には来ない条件で草』

『間違ってても俺らにゃ分からんからセーフw』


「で、こっちの大量の4枚なんだけど・・・、とりあえず背中は赤身が中心だからいいとして、お腹側が、赤身と脂の多いとこで分けよっかな。大トロだけはちょっとキツイかも」


「ねえ、やっぱり大部分はしまっておいた方がいいんじゃない?これ全部使おうと思ったら一年くらいかかるよ」


「そう?ならお姉ちゃんのいう通り、6人分だけ切り出してあとはインベントリに保存しておこうかな」


大体15cmくらい切り出して、あとはしまう。


「じゃ、使いやすい大きさに捌いておくね。後の料理はみんなに任せた」


そう言って、部位ごとに切り分け、使いやすい大きさに切り揃える。端っことかの余った部分はサクラがこそいでくれてる中落ちに混ぜるか。


「それでは最後、クワタラを捌いていくよ。にしてもこいつ、太ってるなぁ」


「オスだったら白子いっぱい入ってたりして」


「かもね。どうする?先にお腹開いて白子かどうか見る?それとも頭先に落とす?」


「撮れ高もあるし、お腹開こ?」


「はいよ〜。では内臓を傷つけないように慎重に・・・。お、これは」


中に詰まっていたのは、大量の白いひだひだ。白子だ。それも血が回っていない綺麗なやつ。


『白子きちゃ〜』

『現実だったらいくらになるんやろなぁ』

『湯がいてぽん酢かけて食いたい』


「これがタラの白子ねぇ。この中に子種がたくさいたぁっ」


「マリアあんたねぇ・・・。最近少なかったと思ったら・・・」


配信上で余計なことを言いそうになったマリアをすかさずサキが(どこから取り出したのか分からないけど)ハリセンでしばいた。ナイス、サキ。


『草』

『いちゃいちゃしやがって』

『いいぞもっとやれ』


「ま、まあ話を戻して、これも全部調理すると多すぎるから、半分くらいはインベントリになおしておくね」


「オッケー」


「なおす・・・あ、しまうってことか」


「あ、ごめん。つい方言が」


『モミジちゃん動揺してる?w』

『そりゃあわや放送中止だからなぁw』


「こっちの身も3枚におろしておくから、あとは任せた」


「はいはい」


「よしっ、と。これでボクの出番は終わりかな。あとはみんなのお料理だよ。晩酌したい視聴者さん、後ちょっと待ってて」


『もう飲んでる』

『モミジちゃん肴に酒が進むんだわ』


「あらら。もう始めちゃってるみたいね〜?」


「えぇ〜・・・」


その後、それぞれが料理をしてだんだんと献立ができてきた。


「まずは刺身作って、残ったこっちの脂おおいとこは塩振ってグリルで焼きますか」


「和食ね〜」


「あたしは白子をボイルして、いくつかは天ぷらにするわね〜」


「それも美味しいねぇ」


「私はどうしたらいいのです?」

「サクラはボクと待ってようか。大変だったでしょ?」

「確かに大変だったけど楽しかったのです」


『サクラちゃんは癒しだった』

『黙々と中落ちとってるの可愛かったw』


「ほら、視聴者さんもそう言ってくれてるし」


「うちの癒したちが可愛く待ってる間に私はタラをぶつ切りにして煮ておこうか。あとついでに何切れかみりん焼きにでもしようかな」


「お姉ちゃん、感情漏れてるよ」


『平常運転で草』

『いつも漏れてるよw』

『姉妹てえてえからヨシ』


「じゃあ、私はこの執拗に先輩に向かって行ってたタコをボイルしますね。あとは焼くかユリさんの煮汁に一緒に入れて煮るとか、唐揚げにするとかします」


「おっけー」


みんな手際がいいなあ。あっという間にお料理ができていく。


『揃いも揃って手際がいいw』

『料理上手なんだなぁ』

『ただし本日の献立は魚介のみである』


そのあと30分くらいで料理が完成。テーブルは壮観だった。


「いっぱいだね」

「品数多すぎたかしら」

「まあ、いいんじゃないかしら〜」

「6人だし」

「私も早く料理上手になりたいのです」


『すげえw』

『あ〜、無性にタコ唐食いたくなってきた』

『腹減るわw』

『酒が止まらぬ』


「それじゃ、今日はここまで。この料理は後でスタッフが美味しく頂きます」


「次もまた見てね〜」


「あ、そう言えば次のイベントの告知がありましたよね」


「そう言えばあったね。ホラー系だっけ」


「ちょっとホラーは苦手だからなんとも・・・」


『そういやあったな』

『ホラーイベント・・・もうそんな季節か』

『このマップは季節関係なく冬景色だもんなぁ』

『ホラー苦手・・・ひらめいた』

『通報した』


「じゃ、その内そのイベント配信とかもするかもね。それじゃ今日もありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」


「ばいばーい」


「・・・よし、配信切れたよ」


「じゃ、食べますか」


「別に配信中に食べてもいいんだけどね?」


「それはボクが気にしいだから・・・」


誰かに見られてるって思うと、どうも気にしちゃうんだよね。


「ま、今は大丈夫だから。それじゃ、いただきます」


「「「いただきます」」」


「あ、タコトパスの唐揚げ美味いわ。見た目に反して」


「別に触手の形状以外はタコだもんね」


====================


結局、作った料理は全て食べてしまった。みんなの料理の腕前が高くて美味しかったから、気づいたらテーブルは空っぽに。


・・・ホラー系のイベントかあ、どうしようかな。やるにはやるけど、内容によってはギブかもね。


大学とバイトの連携攻撃!痛恨の一撃!作者はブランクに陥った!・・・はい、というわけで大変期間が開いてしまいました。いやはや、もっと先の話のネタは浮かぶのに、目の前の話のネタが思いつかないなんてこともあるんですね。つくづく毎日投稿なんてされてる方の凄さを分からされております。

今回も最後までお読み頂きありがとうございます!評価や感想いただけましたら幸いです。また次回を気長にお待ちください。

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