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40.雪国、いつもの配信を

「いらっしゃいませ。今日も今日とてクワトロからお送りしております」


『きちゃ~』

『寒そう』

『いつにもましてみんなもこもこ』

『かわいい』


「今日はまた釣りをしていこう・・・と言いたいんだけど、ここ残念ながら釣りできないんだよね」


『あー』

『確かに川沿いでもないわな』

『水辺でもない』


「どうするのって話だけれど、実はこことは別にモミジが一個拠点を購入しててね。そこはそこそこの広さで、水辺だから釣りできるらしいのよ」


「だから今日は少し久しぶりに釣りをしようと思うわ~」


『そういえば最近釣りしてなかったな』

『いろいろあったから忘れてた、そういえばこのチャンネル最初は釣りしてたわ』

『今となっては懐かしいモミジちゃんのソロ釣り時代・・・』


「てなわけで、移動~」


「あ、位置バレを防ぐためにカメラは映らないようにしておくね。しばらく音声のみでお楽しみくださいってやつだよ」


そう言ってボクは手でカメラをふさぎ、胸元で抱える。正直これが一番運びやすい。


『ふおお、モミジちゃんの吐息が聞こえる!』

『ASMRや・・・』

『ここが天国か』

『しぬな~w』



しばらく移動して、部屋に入る。拠点の内装は、どこもほぼ同じにしてある。違いといえば、家具の素材とデザインをその土地に合わせたものにしているくらい。


「はい、到着っと」


『うわ、なつかしいこの景色』

『初めの頃、まだ視聴者が俺ら一けた二けたの頃を思い出すな』

『お兄お姉たちが感慨にふけっておる』

『最近知ったワイらからするとむしろ新鮮』


「わあ、懐かしい内装ですね、先輩!」


『ここにも古参がw』

『バカ、最古参だぞ』

『先見の明にあふれた後輩ちゃんやぞ』

『ただ先輩大好きなだけである』


「確かに、最近はずっと向こうで配信してたからね。ボクの拠点の内装はほぼ同じだから、懐かしく感じる人もいるかも。もうそんなに経ったのかなあ?」


「間違いなく経ってるわよ。私たちが知り合う数か月前からやってたんでしょ?配信は」


「まあ、そう言われればそうだね。・・・それじゃ、早速釣りをしよう」


『よっしゃ』

『またモミジちゃんの魚捌きが見れる!自動だけど』

『自動とはいえ洗練された動きだもんなあ』


「あ、そのことなのだけど~。新しく実装された機能を使ってみようと思うわ~」


『なぬ』

『まさかそれって』


「今日は全部手動でお料理するわよ~。みんなで手分けしてね」


「ボクが捌くから料理は任せた」


『草』

『最初から料理をする気はないのねw』

『ま、まあ一番大事な下ごしらえしてくれるからセーフ』


それから数分間、アタリが来るまで雑談した。


『寒くないの?』

『一面銀世界だよ?』

『見てるこっちが寒くなってきた』


「装備で凍えはしないけど、確かに肌寒いかも。・・・あ」


昔やったことを思い出した。尻尾であったまろ。


「もふもふ・・・」


『キターーー!』

『もふもふだー!』

『後輩ちゃんすっごい見てるw』


「・・・こっち来る?」


「ぜひ!!!」


「およ?サクラも来るんだ」


『みんなでもふもふ』

『もふもふは人を狂わせるw』


「あら~、仲良しねぇ~」

「ほんと、仲のいいこと」


「そういう二人もしれっとくっついてるじゃん」


『ホンマやw』

『いつの間に』

『ぴったりくっついてるw』

『てえてえ』


そうこうしているうちに、竿先がくんくんっと振動する。さらに待っていると、突然竿がズンっと重くなった。


「きたっ」


すかさずフッキングして、巻いていく。


「ん~、あんまり引かないなあ。ゴミでも引っかかったかな?」


巻けているので根掛かりではなさそうなので、最後まで巻いてみる。最後まで巻いて、重りと針が上がってくると、そこには。


「タコ?にしてはちょっと足が違うような・・・」


足に吸盤ではなく、表はタコ足、裏にはヒトデみたいな柔毛が生えたタコっぽいなにかが重りにしがみついていた。


「・・・なんだろ、これ」


『タコ?』

『にしてはなんか違くね?』

『触手みたいな足やな』

『あ、それもしかして・・・』


「え~っと?」


説明を見てみると、


〈タコトパス〉

 魚介の蛸とエネミーのオクトパスの混雑種。両方の特徴を併せ持つ。食用可。身の肉感は蛸そのものであるが墨袋はなく、代わりにオクトパスの媚毒液袋がある。一部のご婦人らには夜のお供として人気らしい。


「・・・だって」


「そりゃまた業が深いもんを釣ったねえ」


「それ食べれるんですか?」


「食用可とはあるけど・・・」


『タコではあるんか』

『オクトパスってあれか?水場におるでかい触手みたいなやつか』

『まあ媚毒液くらわなけりゃただのタコだから・・・』


「とりあえずこれはキープで。ボクが下処理はしておくよ」


それからまた糸を垂らす。アタリが来るまで雑談。


『投げ銭の使い道は?何買ってるん?』

『そういえば投げ銭の配分ってどうなってるんやろ』

『教えてモミジちゃん』


「ああ、投げ銭ね?ありがたいことにみんなから結構もらってるけど、メンバーみんなで等分してるよ」


「それでも一人あたりの金額は結構あるんですけどね」


「でも私たち社会人組は貰ってないわよ。定収のない3人だけで分配してもらってるのよ」


「最初はモミジちゃん、泣きそうな顔であたしたちにもお金が行くようにしようとしてて、こっちが辛かったわ~」


「それでもなんとか説得したのはいい思い出だね」


「恥ずかしいからその辺にして・・・」


『想像したら可愛い』

『脳内再生余裕ですわ』

『いい子たちやわぁ』


「とまあ、そんな感じで、独り占めとかはしてないから安心してほしいのです」


「何買ってるかって言われると、私は先輩の非公式グッズとか、先輩のファンアート描いてる絵師さんにサブスク登録したりしてます」


「ちょっとまって初耳なんだけど」


『やっぱり最古参だった』

『それでこそトウカちゃんだわ』

『なんか安心したw』

『リスナーならとりあえずグッズ買うよなぁ?』


い、いつの間に・・・。というかボクのグッズなんて作って売れるの?こんなただのんびり釣りしてる妖狐にそんな需要あるの?


「モミジさんはもう少し自分の人気を認識した方がいいと思うのです」


「そもそも、こんな投げ銭もらって人気ないは無理があると思うわよ?」


『それな』

『好きじゃなかったら貢がない』

『モミジちゃん大好きはあはあ』

『通報した』


「そ、それもそっか・・・」


正直エゴサとかあんまりしてない。ボクは絹ごし豆腐並みのメンタルだから、アンチに出くわしたら間違いなくヘラる。でも非公式グッズとか、ファンアートを書いてもらえるくらいには人気が出たのはありがたいし、少しは調べたりした方がいいのかなあ?


『モミジちゃんはそれでええんやで』

『俺らがアンチから守る』

『実際他のメンバーちゃんたちがSNSで色々やってくれてるし』

『トウカちゃんのSNSフォローしとくと高確率でモミジちゃんのファンアート見れるし』

『まじか急いでフォローしとこ』


「え、そうなの?」


「そうですよ。先輩がアンチと出くわさなくていいように、私とサキがSNSでエゴサとかしてるので」


「え、サキもなの?」


「まあ、教えてないから知らないのも仕方ないかしらね。まあ、そういうことだからモミジは今のままでいていいのよ」


『サキちゃん甘やかし方が上手い』

『ワイも甘やかされたい・・・』

『やめとけマリアたんに滅ぼされるぞ』


コメントも盛り上がっている。というか結構な数、命知らずがいるみたい。


『モミジちゃんのファンアート、可愛いのからえっちいやつまで色々あるよ?』

『モミジちゃんがバストサイズ公開してからえっちいの増えたよな』

『夜のお供に最適なんだぁ・・・』

『黙ってろ定期』


「んな、そんなのもあるの・・・?」


「へ、へーそうなんですねー」


ん?トウカ?なんで棒読み?


『トウカちゃんがいいねしてるの、3割くらいえっちいやつで草』

『おいこらやめてさしあげろ』

『でも知らん男に無理やりとかはいいねしないあたり流石』


「やっべ」


「ト・ウ・カー?」


「ッスー、すいませんでした」


「いや、別にいいけど・・・。嘘はよくないよ?別にボクはそういうの気にしないけど、正直に言ってくれればいいのに」


『言えるかぁ!w』

『気まずいよw』


≪居付いたセレブ さんから¥50000が送られました≫


『てえてえざます!最高ざます!』


「どわあ!」


いきなり5万円の投げ銭をされて、思わずびっくりする。


「あはは、そこは変わらないね、モミジは。別に初めてじゃないんでしょ?5万の投げ銭は」


「で、でも5万だよ?バイトの月給くらいのお金だよ?当たり前のように受け取れないって」


『モミジちゃん毎回可愛いリアクションしてくれるからつい投げたくなる』

『セレブありがとう』

『礼を言うのはこちらざます』

『セレブ普通にコメントするんかいw』

『てかいつまでも庶民的な反応するほうがいいんやで』


高額の投げ銭を惜しげもなくしてくれる視聴者に感謝と申し訳なさの混じった感情を抱きつつ、その後始まった投げ銭祭りにボクはまたふやけるのだった。




「というわけで、本日の釣果です!」


「わぁ~~」


『モミジちゃんまだ溶けてるw』

『可愛い』

『お持ち帰りしたい』

『通報した』


「今日の釣果は、『タコトパス』が二杯、『クワタラ』が一匹、『キタマグロ』が一匹ね。数はそこまでだけど、このタラとマグロが大きいわね」


『これが釣れた時はアガッた』

『それもサクラちゃんが釣ったのがまた』

『力持ちなサクラちゃん』


「えへへ・・・」


サクラが照れていたので、とりあえずなでなでしておいた。


「さて、それじゃこれからお料理と行きましょうか」


『待ってた』

『酒とってくる』

『手作りのお料理』

『モミジちゃんの包丁さばきにも注目』


まずはボクがこの魚介たちをさばいていくわけだけども、どれから捌こうかな?

料理編は次回に回させていただきます、すいません!

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいね・感想をいただけると嬉しいです。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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