4.初めての交流
それからも黙々と敵を狩り続け、気が付くとレベルも20目前。このゲーム、レベル10で尻尾が増えるのだが、おかしいと思っただろうか?・・・そう、レベル10で尻尾が増えると、最終的にレベル90になった時、尻尾の数が10本になってしまう。そのためベータテストではレベル20では尻尾が増えなかったのだけれど、果たしてこちらではどうだろうか。
などと考えていると、丁度レベルが20に。しかしレベル10になった時のように視界が光に包まれることは無く、ただレベル20に達したことをシステムが告げるのみ。どうやらこれは仕様となったようだ。・・・テニスの試合で15、30ときて突然40になるような感じだろうか?
「あ、あの!」
「うん?ボクに用かい?」
ふいに声をかけられた。声のした方へ視線を向けると、そこには一人の女の子が立っていた。
「さっきはありがとうございました!」
「へ?・・・もしかして、さっきの敵群に苦戦でもしていた?」
「はい・・・。お恥ずかしいことですが・・・。私、今日始めたばっかりで右も左も分からないうちにここに来ちゃって・・・敵を倒そうにも歯が立たないので回避に専念するしかなくて。助かりました」
「それはよかった。ふむ、そうだね。ボクで良ければレベリングのお手伝いをしようか?」
一人より二人の方が効率はいいし、目の前で困っている女の子に手を貸さない程非情ではないからね。
「えっ、いいんですか!?」
「もちろん」
「じ、じゃあお願いします!あっ、私、トウカっていいます!」
「よろしく。ボクはモミジだよ」
こうして、女子二人のレベリングが始まるのだった。
しばらくして。
ファンファーレの音がレベルアップを伝える。これはボクの音だ。実は、今ので現在のレベルキャップ・・・つまり、30レベルに到達してしまった。
「わっ、モミジ先輩もうレベル30なんですか!?凄いです!」
「まあ、かなり篭っていたからね。そういうトウカだってレベル3だったのがもう20じゃないか」
「それは先輩が一網打尽にしてるののおこぼれを散々貰っていますから・・・」
「いや、そんなことはないさ。このゲーム、最低でも1ダメージ与えないと経験値は入らないんだ。トウカが頑張ってる証拠だよ」
「はわ・・・。あ、ありがとうございます!先輩!」
いつの間にか、トウカはボクのことを先輩と呼ぶようになった。途中彼女の口から高校生だということが伝えられたけれど、ついうっかりボクも高校生だとこぼしてしまったらそう呼ばれるようになった。
当のトウカは、ボクの後ろを見ながら視線を揺らしているのだけど・・・
「どうした?」
「いえ、何でもありませんよ?」
「そうかい?」
試しに3本に増えた尻尾を大きく揺らしてみる。するとそれを追うように大きく揺れる視線。今度は右に曲げて止めてみる。右を向く。左へ。--左へ。真ん中に向けて、上に。--ボクと目が合う。
「ぷっ」
「あ・・・わ、笑わないで下さいよ、先輩!」
「ごめんごめん、面白かったからつい」
「もう・・・」
「ふぁ・・・。眠くなってきてしまったよ。ボクはそろそろお暇させてもらうよ」
「あっ、でしたら先輩、フレンド申請を送ってもいいですか?」
「ん?いいよ」
「ありがとうございます、では早速」
≪ トウカ からフレンド申請が届きました≫
承認を押して、フレンド登録完了。
「はい、できたよ」
「ありがとうございます、先輩。それじゃ、おやすみなさい!」
「うん、おやすみ」
ボクは街まで戻り、ログアウトし、そのまま寝た。