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25.公式配信で抜かれたからと言っていきなり視聴者が増えるとは限らない

「いらっしゃいませ、今日も来てくれてありがとう」


「「「いらっしゃいませ〜!」」」


『配信きちゃ〜』

『グループ配信になって早一月・・・ようやく慣れたわ』

『公式配信に乗ったのにこの過疎りよう・・・』


ギルドを組み、ギルドで配信を始めて1月が経った。ありがたいことに、以前からボクの配信を見に来てくれていた視聴者たちはギルド発足後も見続けてくれる人が多い。そのため新規の視聴者も含めると同接1000人を超えるというボク達にとっての快挙を、つい先日達成したのだった。


「公式配信って言っても、ボクが映り込んだだけで視聴者が増えるなら苦労しないよ。それにボクはそこまで広告してるわけじゃないしね。ボクも時々覗くけど、某スレで一回書き込まれただけだからね。そんなネット小説みたいなことは起きないよ」


『あ、ワイその1人です』

『俺氏もスレから』

『スレから』


「意外といるんだねぇ」

「そうですね。スレの影響力はもう無いのかと思ってたです」


「はいはい、とりあえず進めないと終わらないから、いつものいくよ。竿持って〜」


「「は〜い」」


ギルドになったからといって突然冒険をし始めては今まで着いてきてくれた視聴者に悪いし、ボクのスタイルにも反するので今までのように釣りをしながら雑談だ。ただ、ギルドを組んで複数人になったことでできることが増えた。それは大型の仕掛けを使えるようになったこと。今までは精々50cm(ボクの筋力では)までしか上げられなかったのが、2人、いやそれでも足りなさそうなので3人、4人がかりであればメートル超え、10kg超えの魚も狙えるかもしれない。


「『久々に上手い酒の肴が出来そうな予感がする。酒飲みの勘だけど』だって。こりゃあ、頑張らなきゃねぇ」


「ほんと?なら早めに釣ってあげないとね。明日も平日なんだし」


『明日仕事の俺たちを気遣ってくれるサキちゃん優しい』

『毎朝味噌汁作って欲しくなる』


「私が毎日味噌汁作ってあげるのはマリアだけよ。あとは時々ギルドのみんなにも?」


「へ?あ、あたし?」


『てぇてぇ』

『なんだ百合の花か』

『綺麗な百合が咲いています。汚さないように。あと挟まろうとしないように』


「見るだけで肴になるのです?お酒が好きな人っていうのは?」


「サクラちゃん、オタクってのは推しで酒が飲めて飯が食えるのさ・・・」


「お、流石もと限界オタク後輩」


『ワロタ』

『理解者いるやんw』

『メンバーに限界オタクのいるギルドなんて他にないだろw』


「・・・お、引いてる」


「まじ?さすがギルマスだねぇ」


「っと、釣れた。鰯か、大型の仕掛けに使えそうだね」


<トイワシ>

トレス沿岸部でよく獲れる。地元では食用としてよりも大型魚用の餌として用いられることが多い。


「よし、それじゃこっちの仕掛けにつけて・・・いってらっしゃ〜い」


泳がせ釣り用の仕掛けに鰯をつけて、遠くに向かって投げる。


「おっきいの、ください!」

「マグロ!」

「サメ以外がいいのです」

「モンスター以外ならなんでも」


『段々願望が低くなってないかw』

『モンスター釣れるん?』

『釣れる。モミジちゃんがソロの頃、何回か雑魚釣ってた』

『それは魚の雑魚なのか難易度的な雑魚なのか』


「さて、何かかかるまで待ちだね」

「んじゃまたなんかコメント拾う?」

「ん〜と、あ、これよさそう。『リアルも含めて特技を知りたい』だって」

「高校の面接かな?」


『ベタな質問で草』

『まあ他の質問が放送に載せれるようなものじゃなかったししゃーない』

『誰だスリーサイズ聞いた奴』


「私の特技はお祓いができることかな」

「お姉ちゃんうちの跡継ぎだもんね」


『モミジちゃんの実家神社?』

『ワンチャン今ので身バレする説』

『流石にw神社といえどもいくらあると思ってるんやw・・・ないよ、な?』

『自信無くさんでもろて』


「ボクはギターが弾けることかな?」


『あ〜』

『前にロックバンド好き言うてたもんな』


「特技〜?なんだろ・・・ブラインドタッチとか?」

「マリアキーボード打つの速いよね〜。あ、私は歌かな。1番得意な曲ならカラオケで100点取ったことあるし」


『地味にすごいやつ』

『逆に親近感湧いてよき』


「私は走りが得意なのです。100m10秒切ったことあるのです」


『はやっ』

『学生でそれはすごい』


「私は・・・なんでしょう、人間観察でしょうか?特に先輩のことは常に見ていますし」

「ゑ?」


『後輩ちゃんそれストーカーっていうんやで』

『モミジちゃんが嫌がってないならセーフ?』

『てえてえのでヨシ』


「モミジちゃんの実家って神社なの?さっき言ってたけど」

「そうよ。まあ正確には神社を管理してる家の分家で、直接うちが持ってるわけじゃないんだけど」

「お姉ちゃんが跡継ぐ予定だからボクは特に関係はないんだけどね」

「ほえー」




「ん?っと、引いてるよ!」


不意にマリアさんがそう叫んだことで大型の仕掛けに魚が掛かったことに気づいた。


「危なかった〜、誰か手伝って〜」


流石に1人では上げられ無いので手伝ってもらう。


「せーの、よいしょぉ!」

「いしょお!」


ザバァッと大きな水飛沫と共に獲物が釣り上がる。釣れたのは大きなカジキだった。


<トレスマカジキ>

トレス地方に生息する肉食魚。一般に角と思われている部分は鼻の骨が伸びたものである。食用可でトレスでは親しまれているが、時折突進して攻撃してくるので注意。


『でかぁぁい説明不要!』

『でかっw』

『カジキだぁー!』


「やったね、モミジちゃん!」

「初めてこの仕掛け使ったけどこんなのも釣れるんだ・・・」


その後は残念ながらこれといった釣果はなく、だらだらとお喋りをしながら時間が過ぎていった。


「今日のハイライトはカジキだったわね」

「まあ、そんな時もありますよ。さて、カジキ料理して終わろうか」


カジキでできるのは・・・兜焼きと塩焼きか。刺身もあるけどちょっと手抜き感が・・・。


「今日は兜焼きを作ろうか。一つしか作れないのが難点だけど、それは後で配信外で他の料理何か作るよ」


『配信外!?そんな』


「こればっかりは時間がね・・・」


とりあえず厨房に立ってカジキを取り出す。そこからは自動にお任せ。頭を落として内臓を取る。いつになっても思う、ここまでリアルにする必要はあったのだろうか、と。

そんなことを思いながらも解体作業は進み、既に中骨と身に分けられ3枚卸しの状態に。その時点で使わない身はアイテムとしてインベントリにしまわれ、頭だけが残った。

さて、これをどうするのかというと、シンプルに焼く。といってもフライパンなんかでは到底焼けないので、網に乗せて直火。元々カジキは鱗が細かいわ尖ってるわで取り辛いので、皮が焦げても食べないので問題なく、結構な強火で焼いてしまおう。ちなみに長い鼻は既に落としている。塩をまぶして豪快に直火で焼いていき、途中で何故かみんなから歓声が入ったけど完成。


<トレスマカジキの兜焼き>

頭なので大きさの割に可食部はそこまで多くはない。食べる時は皮を剥がして食べる。

HP回復(200)

攻撃力上昇(中)


「できたよ」

「「おぉ〜」」


『焦げてる訳ではないのか』

『まあ、カジキの皮食うことあんまないし』

『酒!飲まずにはいられない』


「と、いうわけで今日はこの辺りでお開き。今日も来てくれてありがとう。あ、そうだ。明日から1週間くらい帰省するので配信が不定期になるのでご理解ください。それではまたのご来店をお待ちしているよ」


「「ありがとうございました〜!」」



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― 新着の感想 ―
[気になる点] カジキのウロコは、皮の中にありますので、食べるのは身の部分だけにして下さいね。 後、カジキって沖に出ないと釣れない気がする。稀に、漁港にバショウなら餌を追って入ったのは聞いたのですが。…
[一言] 可食部が少ないけど絶対おいしいやつじゃん!
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