23.ギルド結成
TRF初の大規模イベント終了から数日、一時は某SNSで国内トレンド一位を記録し、公式動画を見た参加できなかったプレイヤーたちが阿鼻叫喚のつぶやきを残していたけれどそれらも落ち着きを取り戻しいつものTRFが戻ってきた。
「・・・で、ギルド結成かぁ」
そんな中ボクは少々困ったことになっていた。原因はイベント終了時にその時パーティを組んでいた面々から口を揃えて提案された、『現メンバーでのギルド結成』。いや、ギルド結成自体はいいのだけれど、ギルド名に手こずっている。自慢じゃないけどボクはネーミングセンスが恐ろしく無い。
「ど〜しようかなぁ」
うだうだ悩んでも仕方ないとは分かっているけれど、中々いい案が浮かばないのだった。
<『ユリ』よりメッセージが届きました>
「ん?お姉ちゃんからだ。なになに・・・?」
『数日ぶり〜。紅葉、配信してるんだね。たまたま流れてきた配信見たらモミジが映ってて、意図せず知っちゃった(笑)。ところで、ここからが本題なんだけど、紅葉のことだ、どうせギルド結成しようとは思ってても名前浮かばないんじゃないの?』
「だぁあぁぁ!?」
まさかの配信見ました報告。まさか姉バレするとは。多分今すっごい顔真っ赤だと思う。それから流石は我が姉と言うべきか、今のボクの状態を当ててきた。
『ば、バレた・・・。それと、良くギルド名で悩んでるって分かったね。そうだよ、中々いいのが浮かばないの』
『やっぱりね(笑)。モミジがギルドマスターになるんだし、モミジの特徴をギルド名にしてもいいんじゃない?例えば『居酒屋フォックス』とか』
「いや、それじゃギルドにならんでしょう・・・」
『流石にそれは他の人に聞いてみないとじゃない?あと居酒屋ってどうなのさ』
『意外とあるよ?ふざけてるギルド名のとこ。例えば『中華料理連合』とか、『陽キャ撲滅連盟』とか』
「ええぇ・・・」
『ま、そんな感じだからあまり深く考えなくていいと思うよ。それに行き詰まったら集めりゃいいんだよ。多分みんないるよ?』
それはどうなんだろう?みんなそれぞれの予定があるだろうし、明日早いとかだったら申し訳ないような。
『とりあえずトレスのカフェに集合って連絡入れたから、モミジも後で来てね。絶対だよ?来なかったら紅葉の恥ずかしい過去を話しちゃうから』
「それはやめて!!」
これ以上ない脅しを喰らったので仕方ない、いくしか無いか。
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「あ、モミジちゃん来た〜」
「おひさ〜」
「お久しぶりです。みんな揃ってるんですね」
「はい。ユリさんから『モミジが大切な話があるから集まって、だって』といった旨の連絡がきましたですから」
「お・姉・ちゃ・ん?」
「ワタシナニモシラナーイデース」
「ん?今お姉ちゃんって」
「あ」
「うん、そうだよ。私はモミジの姉です。いつも妹がお世話になっております。ちなみに妹を無類の女好きにしたのは私です」
「言うなっ!」
「へぇ、やたら仲良いと思ったらそういうことなんだ〜。なんかジェラシー感じちゃうな〜、お姉さん」
「勘弁してください・・・」
「ほらサキ、モミジちゃん困ってるでしょ。それにジェラシー感じてるなら自分の方にオトしちゃえばいいのよ。ほら、こうやって」
「むぎゅ!?む〜!」
両手を掴まれマリアさんの胸に引き寄せられ顔が埋まる。ついでに手を胸に押し付けられ揉まされている。何だこの状況。というか苦しい!!
「さっさと放しなさいよこのエロフ!」
スパァーンと何かを叩くいい音が響く。
「あっ、たぁ〜・・・」
「大丈夫?モミジちゃん?」
「はぁ〜、はぁ〜、死ぬかと思いました」
「あははっ。・・・ふう、はい、それじゃ本題に入ろうか。モミジ、お願い」
お姉ちゃんが手を叩き話題を変える。
「あ、うん。今回集まってもらったのは他でもありません、ギルド結成に際してのギルド名についてです。ボクはネーミングセンスが皆無なので助言をいただきたいです」
「ふ〜ん。例えばどんな?」
「え?た、例えば・・・『人外ガールズ』とか、『男子禁制の花園』とか」
「うわダサッ」
グサァっ!
「グハッ、改めて言われると精神的に来るものが・・・」
「ご、ごめん!思ったことがつい口に・・・」
グサグサァッ!!
「いいもん、どうせセンスないもん・・・」
「あ〜あ、拗ねちゃった。とまあ使いものにならなくなったモミジは一旦置いておいて、モミジが配信者だってことは知ってる?」
「え、そうなの?」
「初知りなのです」
「私は知っていましたよ!」
ドヤァ、という表情をして答えるはトウカ。
「そう、ちなみにこれがモミジの配信」
『いらっしゃいませ、今日も来てくれてありがとう』
「わぁあぁぁ!!!」
「へぇ〜、可愛いじゃない」
「そうそう、他の配信より血生臭く無いっていうか、平和っていうか」
「そう。そこで私が考えた案なんだけど、この配信からとって『居酒屋フォックス』というのはどうだろう?」
「だからそれじゃボクしか要素がないって・・・」
「いいですね、フォックスのところを少し変えればモミジちゃんの懸念にも対応できるし」
「あ、え?」
「そうね。それこそ人外しかいないわけだし、あと夜行性な種族が多いから『人外居酒屋ルナメイツ』とかどう?」
「ルナメイツ、月の友たちってこと?いいんじゃない?」
「人外揃いってところも明記してますしね」
「私は賛成なのです!」
「え、ええ?」
「あとはモミジ、君だけだよ?」
いや、急すぎはしないか?と思うボクの方がおかしいのだろうか?
「ま、まあみんなが良いと思うなら・・・」
「オッケー、ギルド名は『人外居酒屋ルナメイツ』で決まりね。あとの作業は任せたよ?」
「あ〜、うん、分かった」
もうどうにでもなーれ。
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「よし、登録と。・・・オッケー、承認されたよ」
「ありがとう。それじゃ私達を勧誘して?」
「うん。・・・はい、これでいけたはず」
「うん、来てる」
「私にも来てるわ」
「あたしも〜」
「私もです。加入、と」
「私もいけたのです!」
「ギルドメンバーは6人、うん、合ってる。はぁ〜、終わった〜」
「お疲れ様。ねえねえ、モミジちゃん。ちょっとご相談が」
「どうしたんです?マリアさん」
「これからも配信する?」
「あ〜、まあ一応は」
「やり!それならいっそのことギルドで配信しようよ。あたしも配信やってみたいし」
「え?それは・・・?」
「いいんじゃない?この面子なら見に来る視聴者も多いだろうし、ギルドの宣伝にもなるし。私は賛成だよ?」
「私も賛成。配信気になるし」
「視聴者だった私が肩を並べて配信・・・うへへ」
「私もやってみたいのです!」
「あ、はい。それならいいですよ。ボクのチャンネルをギルドチャンネルにしますか」
「いや、せっかくならギルド垢作ろうよ」
「え〜、それ人来ます?」
「来るには来ると思うよ。ギルド紹介配信ってまだ出てないし、話題性はあるよ」
「なるほど・・・」
確かに。それなら次はギルドで配信してみるか。




