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第31話 ロディ、気絶する

 ゴルザたちは疲れ切っているのか、部屋に入ったところで立ち止まって息を整えようとしている。


「おい、どうしたんだ。なにかあったのか?」


 ロディは近づきながら問いかけ、ゴルザは息を切らしながら顔を上げた。


「お、お前は・・・ヒョロヒョロの・・・」

「ロディだ。それで、何があったんだ?やけに慌ててるようだが。」


 ロディは自己紹介を手早く済ませて質問した。彼らの状態から、悠長にしてる暇がなさそうなのは感じ取れる。

 しかし、彼らの口からは思いもよらない言葉が飛び出してきた。


「ボスが、ボスがこっちに向かって来てるんだよ。」

「え、ボスだって?」


 ボスというのは、5層のオークジェネラルの事だろう。彼らがボス部屋へ向かったのは聞いていたから、失敗して逃げているのだろう。しかし・・・


「ボスはボス部屋から出られるわけないじゃない。こっちに向かってくるって、間違いじゃない?」


 エマが信じられない、と口にする。エマの言う通り、ボスはボス部屋から出る事はない。それがミズマダンジョンの常識だ。

 が、それを聞いてもゴルザは前言を翻さなかった。


「そんなことは知ってるぜ!・・いや、知っていた、になるか。だが実際にヤツはボス部屋を子分を連れて出てきたんだよ。俺も信じられねえが本当だ!」

「何だって・・・。」


 ゴルザが言うのは、彼らがボス部屋の扉を開けると、待ち構えていたかのようにボスとその取り巻きが扉付近にたむろしていて、開いた扉をさらにこじ開けて一気に外に溢れ出てきたらしい。

 不意を突かれたのと、ボスが外に出て来る、という今までの常識が否定されたことで、彼らは慌てふためいて満足な戦闘も出来ずに逃げ出してきたらしい。


「それと逃げ出す前にボスが見えたが、あれはオークジェネラルじゃねえ。もっと上位の・・・多分オークキングだ。」

「!オークキングだって!?」

「しかも奴らは階段も登っていた。4層に来てるんだよ。」

「何だって!」


 まさに信じられない情報だった。ボスに率いられた軍団がボス部屋を出て、そして4層にまで来ている。しかもボスはオークキングだという。


「ウソじゃないでしょうね。」


 ナコリナがゴルザに言う。というよりむしろナコリナ自身の「そうであってほしい」という願望が、その言葉を言わせていた。が、残念ながらそれはかなわなかった。


「ウソなんか言うかよ。俺たちは全力で逃げて来たんだぜ。ウソでそんなことするかよ。」


 ゴルザは、「逃げる」という冒険者として恥になる言葉を使っている。ウソや冗談なんかではないだろう。

 そういえば、とロディは昔ギルドで読んだ資料を思い出した。

 ミズマダンジョンで20年ほど前に、通常のボスとは違うレアボスが突然変異のように発生し、ボス部屋を出てダンジョン内を暴れまわり多数の死者が出た、という話があったことを。ただ、その事件はそれ1回限りで、以降はそういう事件は発生していない。


 しかし今聞いた彼らの話は、その20年前の話と符合する。信じたくはないが、最悪の想定をしなければならない。


「どうも本当の事のようだ。ボスに出会う前に逃げよう。」


 ロディが振り向いてみんなに指示を出した。

 その時、エマが悲鳴のような声をあげた。


「魔物が急速に近づいてる。数は・・・多数!」


 その声に、ロディ達は入口を振り返って通路の奥を見た。

 通路からは多数の魔物の走る音が聞こえてくる。そして魔物たちが見えた。オークだ。しかしそのオークの何体かは4層のオークとは違った。彼らは剣を持ち、防具を着ていた。


「オークソルジャーがいる!」


 オークソルジャーは4層にはいない魔物だ。いるのは5層のボス部屋。それが今ここにいるということは、つまりそういうことなのだ。


「逃げろ!」


 ロディが叫ぶや否や、彼らは逆側の通路の方へ駆け出した。

 ロディ達よりも早く、エマが敵を見つけた声を聞いた瞬間にゴルザたち3人は走り出していたため、彼らはロディ達よりも先を走っていた。しかしすでに体力が無いのか、ロディ達が追い付けるスピードしか出ていない。というより遅いはずのオークよりも遅く感じる。

 オークは足は遅いがスタミナはあるのでなかなか疲れない。


 逃げながら後ろを見たゴルザは、「ヒィィ・・」と情けない声をあげた。オークたちはすでに先頭が広間に入ってきていて、その数はさらに増えている。


 ロディ達はとにかく逃げるしかない。上位ボスとの遭遇戦なんて避けるの一択だ。5人は通路に向かって走った。


 その時、ゴルザの声が聞こえた。


「ジャイケル、やれ!小さい子供だ!」


 最初は彼が何を言っているのかわからなかったが、その行動でいやでも理解させられることになる。

 魔導士風の男が走りながら振り向き、そして、


「ブラスト!」


 と唱えた。

 ブラストは、竜巻状の風を横一直線に送り出し敵を吹き飛ばす魔法。それが彼の手から放たれた。そしてその魔法の向かった方向は、


「レミア!」


 ナコリナが悲鳴にも似た声をあげる。

 一直線にレミアに向かったブラストは、そのままレミアに直撃し、レミアを10mほど後方に吹き飛ばした。


「レミア!」


 ロディ達はレミアの名を叫び、急停止した。レミアはあおむけに倒れてうめいている。

 ゴルザたちのやったことは、「小さい子供」であるレミアをおとりにして自分たちが逃げる事だった


「き、貴様ら!」


 ロディが怒りのこもった目をゴルザに向けた。しかしゴルザたちはその目を見ることも無く、ただひたすらに逃げ去るだけ。


(文句言ってる時間なんてない!レミアが危険だ。)


 ロディはゴルザの事を意識から強制的に切り離し、今やるべきことの為にレミアを見る。


 レミアはまだ起き上がれない。そしてオークは既に近くまで迫っている。

4人はレミアに向かって同時に駆けだした。


(身体強化!)


 ロディは瞬間的に身体強化をかける。身体強化によりロディは一気にスピードに乗った。テオもスピードは速いが、魔力身体強化を覚えておらず、ロディの方が速く走れる。そのためロディが最も速くレミアに近づいていく。


「レミア!」


 ロディの目にはレミアの体を見下ろしながら棍棒を振りかぶる3体のオークが見えた。今にも棍棒が撃ちおろされてしまう。

 ロディの思考が高速で回る。オークの動きがひどくゆっくりに見える。人は極度に集中したときに、周囲の動きが緩やかに感じることがあるという。この瞬間のロディの状態はそれだった。


「間に合え!エアカッター」


 ロディが即座にはなったエアカッターは、力を制御していない「修正」エアカッターの3連撃だった。

 高速で飛んだエアカッターは、レミアを取りかこむ3体のオークに飛び、うち2体の腕と体を真っ二つに切り裂いた。

 しかし残る1体のオークには狙いがずれて、左腕を切り飛ばしただけに終わった。いかにロディといえども全力疾走中に3つの魔法を完全に命中させることは困難だった。


「グアアアアァァァ」


 左腕を切り飛ばされながらも、すでにモーションに入っていたオークの右腕の棍棒は振り下ろされてはじめていた。数瞬後には棍棒は横たわったままのレミアに当たってしまう未来が見える。


(まずい!今からじゃ魔法は間に合わない。ならば、もうこれしかない。)


 意を決し、ロディはレミアの体をかばうように飛び込んだ。そしてそこにオークの棍棒が振り下ろされた。


ガツンッ


「がっ・・・」


 大きな打撃音と共に棍棒はロディの頭を撃ち、ロディは苦悶の声をあげ、レミアのそばに横たわるように倒れ込み、そのまま気絶して動かなくなった。

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