第29話 ロディ、3人組と対峙する
「何だよ、誰かと思ったら新参者の3人と、モグラ2匹かよ。」
「何!」
テオが起こって前に進み出ようとするが、ロディが手を開いて止める。
「騒がしくしていたのが気に障ったのなら謝る。すまなかった。」
ロディは頭を下げた。こんなところで冒険者同士いざこざを起こしても得になることなどない。話の内容から言えばこちらにも非があるようなので、たとえ因縁の相手だとしても頭は下げておくべきだろう。
「おろ?なんか殊勝な態度だねえ。人が変わったのか。」
「そんなことはどうでもいい。謝ったんだし、これからは騒がしくしないと約束する。だから俺たちに関わらないでくれ。」
「んー、なんだぁ、その態度は。Cランク冒険者に対する言葉がなってねえなあ。」
男は挑発気味に顔を近づけて来る。ロディは冷静だったが後ろでは4人の怒りのボルテージが徐々に上がってきていた。
すわ、一触即発・・・と誰もが思った瞬間、男はすっと体を引いた。
「ま、俺たちはお前らに構ってる暇はねえんだ。なにせこれからボス討伐に行くんだからよ。」
「ボス討伐だって?」
「そうだ。俺たちのパーティがボスを討伐する記念すべき日だ。むしろ遅かったくらいだがな。ハハハハ」
男たちはこれからボス討伐の為にボス部屋へと進んで行くという。
「ボスを討伐したら、こんなシケた初級ダンジョンなんざおさらばだ。中級ダンジョンに進出してその名をとろかせるのさ。」
そう言って男は後ろにいるナコリナとエマに目を向けた。
「俺たちがボスを討伐したら、2人とも俺たちのパーティに入れてやってもいいんだぜ。」
男は性懲りもなくまたもやエマとナコリナをナンパしてきた。まったく、性根は相変わらずのようだ。
それに対しエマとナコリナは、打合せでもしていたかのように2人ともアッカンベーを返していた。
男は2人のアッカンベーに面食らっていたが、余裕の笑みを浮かべると、くるりと踵を返した。
「ちょっと待て、冒険者として一言言っておく。」
ロディが歩み去っていく男たちに声をかけ、男たちは振り向いた。
「ん、何だ?」
「ボス戦、頑張って倒して来いよ。」
ロディは冒険者同士として、彼らに激励の言葉を手向けたのだ。
まさかの激励に、3人は驚きの表情を浮かべた。そして、
「チッ、調子狂うぜ。お前に言われなくてもやってやるよ。」
3人は苦虫をつぶした顔をして、そのまま安全地帯を出て行った。
「はー、ようやく行ったわね。ダンジョン内でアイツらに出会うなんて、今日は運が悪いわ。」
「本当。塩撒いておきましょうよ。」
ナコリナとエマは怒りが収まらないように口々に文句を言っている。
「あいつら、前にも増していやな匂いなのだ。出会った冒険者の中でも1,2を争うのだ。」
「前にアイツらが俺たちの魔石をだまし取ろうとしたことがあったんだよ。」
レミアとテオも被害にあいかけたらしい。どこに行っても迷惑を振りまいていく人間というのは居るものだ。
「ところでさ、あいつらの名前ってなんだっけ。」
ロディがナコリナに聞いた。ロディは彼らの名前を憶えていなかった。
「え、そりゃ・・・エマちゃん覚えてる?」
「覚えてるわけないわよ、あんな奴ら。」
何と、エマもナコリナも覚えていなかった。
「・・・ま、覚えなくても問題ないか。」
ロディはそう言って、記憶を探るという無駄な行為をやめたのだった。
ロディ達が3人組の名前(ゴルザ、ヘンケル、ジャイケル)を思い出すのはまた少し後の話だ。
「ところで、話が途中になっちゃったけど・・・。」
ロディがレミアとテオに振り向いて言った。ロディ達は、レミアたちが今後どうするかについて話をしていたのだが、途中で割り込まれてしまった。
「ちょっと考える時間をとりましょう。」
確かに今はそんな話をする雰囲気が完全に霧散してしまっていた。一旦仕切り直しするしかない。
ナコリナの言葉に、レミアたちも同意した。
その後、彼らはいつもと同じように4層で狩りをすべく、安全地帯を出発したのだった。
4層の狩りは、いつも以上に身が入らなかった。
5人とも4層での戦闘に馴れてしまっているので、危険な場面はほとんどない。しかし、いつものキレが全く見られず、特にそれはテオとレミアに顕著だった。
原因はやはり、拠点で話していたテオ達の秘密の事。それが気になって戦いに身が入らないことは明白だった。
「ねえ、ちょっと休憩しない?」
エマがそう提案する。場の雰囲気を察した提案だった。
「そうね。ちょうど大広間で見渡しがいいし、ここで休憩にしましょうか。」
5人が今いる場所は4層の中央付近、安全地帯と同じくらいの広さの広場のようになっていて、通路は前と後ろに1本ずつある。前に行くと5層方向に、後ろは3層方向に行ける。
そこはかなり広く開けた場所なのだが、通路から魔物が入ってきても距離があるため対応が可能ということで、通路途中の小部屋とは逆の意味で休憩に適した場所だ。
壁際に寄った5人がお茶を飲んで一服すると、ナコリナが切り出した。
「さっきの場所では邪魔が入って一旦切り上げたけど、ここで話の続きをしない?みんな戦闘に集中できていないようだし、このままじゃ不覚を取ることもあるわ。」
ナコリナが切り出すと、その話を予想していたのか、レミアとテオが覚悟を決めたような表情で頷いた。
すみません。3人組のリーダーの名前がテオと似ていたので変更しました。(第3章 7,8話)




