第27話 ロディ、4層で戦う
翌日、ロディ達5人は朝食を済ませてから、素早くダンジョン内を進んで4層に侵入した。
「4層は・・・、見た目は1層と同じだな。」
ロディはそう感想を漏らした。
目の前に広がるのは、石のブロックで形づくられた迷宮の通路。ロディの感想通り、1層とほぼ同じだ。
「本当、1層と同じね。だけど4層は1層より3倍くらい広いから迷わないように注意しないと。」
ダンジョンは、基本下層に行くにしたがって広くなっていくのが通例だ。ここミズマダンジョンもご多分に漏れずそういう造りになっている。
しかしボス階層だけは異なる。このミズマダンジョンのボス階層は、階段を降りてすぐに大きなボス部屋の扉がある。つまりボス部屋だけなので階層としては非常に小さい。
そして扉を開けて中に入ればボスが待ち構えており、ボス戦が始まる。
このミズマダンジョンの最終ボス階層は5層。つまりこの階層の次は、ボスとの戦いになるのだ。
ただ、ロディ達はすぐにボスと戦うつもりはない。お金を稼ぎ、装備を整え、パーティの連携を十分にしてからでないと、危険が大きいと考えていた。
「この層には、グレーウルフとバーミリオンウルフ、それにオークが出るわ。」
ナコリナが階層の情報を皆に伝える。
グレーウルフはすでに1層で戦っている。バーミリオンウルフはその上位個体だ。体毛は赤みがかっており、それが名前の由来でもある。グレーウルフよりスピードとパワー共に高い。また、「咆哮」という特殊能力を持ち、咆哮を浴びた者はわずかに身がすくんで動きが止まると言われている。
オークは豚と人間のあいの子みたいな魔物で、その巨体からのパワーは侮れないが、その分スピードは遅い。
バーミリオンウルフもオークも魔物ランクはDなので、油断しなければ問題ないだろう。
◇◇
「前方に3体。多分魔物よ。」
索敵中のエマの言葉に臨戦態勢に入る5人。
慎重に進んで行くと、前の方から3つの影が現れる。
「オークにグレーウルフにバーミリオンウルフ、各1体ずつ。」
この層で現れる魔物が1体ずつ。1戦でいろいろと確認できそうだ。しかしオークはでかい。通路幅の半分を占めているように見える。棍棒を手に持っているが、狭くて自由に振れないのではないだろうか。
「よし、じゃあオークは自分が。テオは前に出ているバーミリオンウルフと戦う。後ろ3人は後方のグレーウルフを遠距離攻撃。」
「「「「了解」」」」
ウルフの方が足が速く、途中オークを置き去りにしてこちらに近づいてくる。
戦闘のバーミリオンウルフはロディ達と10mくらい離れたところで一旦立ち止まり、
「ウォォォォォォォォォォ!」
と吠えた。これを聞いたロディ達は一瞬体がすくんで動きが鈍くなる。どうやらこれが「咆哮」という能力のようだ。
しかしロディは一瞬で立ち直り、テオを見た。テオもすでに効果が解けているようだ。
「大丈夫か?」
「こんなの平気だ。」
咆哮は一瞬動きが鈍るが、さほど大きな効果は無いようだ。戦闘中は注意すべきだが、しっかり気を持っていれば即座に動くことが出来る。
咆哮を放ったバーミリオンウルフはすぐさまダッシュをかけていたらしく、すでに至近まで近づいていた。ロディは慌てず剣を構え、すれ違いざまにバーミリオンウルフに1度剣を振るいその体を切りつけてから、そのままオークに向かう。
バーミリオンウルフは傷でやや動きが遅くなり、そこにすかさずテオが至近距離からナイフとを突き入れていく。
グレーウルフはというと、すでに飛来した複数の魔法と矢が当たり、立ち止まっていた。
ウルフを残して奥に進んだロディは、オークと正面から対峙した。オークは体が大きくて、手には太い棍棒を持っている。いかにもパワーがありそうで、もし棍棒での一撃が当たったならば相当のダメージになるだろう。
ロディは初めての敵に少し緊張していたが、しかし恐怖は無かった。
(こんなもの、ダントンと対峙したときに比べれば全然楽だ。)
ロディは過去の戦闘をわずかに思い出し、そしてそれをすぐに頭から消した。そしてオークの振るう棍棒を軽やかに避ける。
(アーノルドさんの剣に比べれば、遅すぎて当たれという方が無理だ。)
ロディはオークの棍棒を余裕をもってよけ、隙を見て剣を振るう。さすがにオークは体が分厚い分、剣での傷も深くならずになかなか致命傷を与えられない。
それでもロディは次々とオークに傷をつけていき、オークに出血を強いる。しばしの戦闘で血まみれになったオークの動きが鈍り、体がやや揺れる。
それを見てとった瞬間、ロディの剣はオークの首筋に伸びる。オークは出血により動きがままならず、その剣をよけることが出来なかった。
ロディの剣はオークの首を半分切り裂き、そこから大量の血を出したオークは、しばらくもがいていたが、やがてそのまま倒れていった。
「ふう。オークとも問題なく戦えるな。」
剣を鞘に戻したロディが後ろを振り替えると、テオ達の戦闘はすでに終わっていた。
集中攻撃を受けたグレーウルフはそのまま反撃も出来ずに消え、それにより手が空いた3人がテオのフォローに回り、戦闘を有利に進めてそのまま倒したのだ。
「みんな大丈夫か?」
「うん、全然問題なし。テオはどう?」
「さすがにグレーウルフより強かったけど、援護があったから楽に倒せたぜ。」
「このくらい楽チンなのだ。こいつらはもはやわれらの敵ではないのだ。」
「その通りだけど、あんまり油断しないようにね。」
しばらく4層を進み、数回の戦闘をしてみてロディは考えた。
4層も特に問題なく戦えるようだ。この4層は浅い層に比べて魔物の魔石やドロップ品は平均して倍くらい高値で買い取られる。ならばしばらくここでお金を稼いだりするのもいいかもしれない。パーティの戦闘訓練にもなりそうだ。
「みんな、しばらくこの層を集中的に回らないか。ここならお金が貯まりやすそうだし。」
「そうね、私は賛成。2層よりこっちのほうがレベル高い分、実入りがよさそう。みんな戦い方もうまくなって、危険も少ないから4層でいいわよ。」
「まあ、いいんじゃないか。」
「ロディの言うことなら賛成なのだ。」
「ばっちりお金を稼げるわね。」
ということで、ロディ達5人は4層を狩場として集中的に回っていくことにしたのだった。
◇◇
そのころ、5層のボスに挑んでいる冒険者パーティがいた。
「これで、終わりだ!」
パーティリーダーと思しき男が、その大剣を袈裟懸けに振るう。その剣はボスであるオークジェネラルの肩から胸にかけて深い傷を負わせた。
「ガァァァァァァァァ・・・」
叫び声に似た断末魔を残し、オークジェネラルは彼らの前から消えていった。あとには魔石とドロップ品の斧が残っていた。
「やった!倒した。」
「やったわ!ついにボスを倒すことが出来たのね。」
そのパーティはボス討伐を喜び合う。激闘を物語るように彼ら全員が体に怪我をしていたり、魔法を受けていたりして、全く無傷の者はいなかった。
「よくやった。みんなの力でボスを倒すことが出来た。これで初級ダンジョンは卒業だ。俺たちはもっと上を目指せる。」
リーダーはそう言ってパーティをねぎらい、しばしの休息のあと、パーティの仲間たちと共にボス部屋を出て行った。
◇◇
このダンジョンのボスは倒されたが、1日ほど時間が経つと蘇る。そのため何度でもボスに挑むことが出来るのだ。今回のボス攻略も、その繰り返しのうちの一つである・・・はずだった。
だが次に現れるはずのボスは、1日が経っても現れなかった。2日経っても3日経っても現れなかった。まるで現れる前に力を貯め込んでいるかのように・・・。
その間、ボスに挑む冒険者は現れなかった。初級ダンジョンということで冒険者のランクが低く、その割にはボスは比較的強い、ということで、あまり頻繁にボス討伐がなされていないためだ。
もしその間ボス討伐を考えるパーティがボス部屋に来ていたならば、「ボスが現れない」という異変に気付き、ギルドはその異常を認知して対応を取ることが出来ただろう。
しかし残念ながらそうはならなかった。
次にボスが現れたのは、それから優に7日経ったあとだった。
新たに現れたボスは、7日前に倒されたオークジェネラルと外見は似ていた。しかし、そのまとう雰囲気は大きく違っていた。




