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第26話 ロディ、クリーン魔法大人気に

 3層の中ボスを倒したロディ達は、その日は2層の安全地帯に引き返してダンジョン内で一泊することにしていた。

 3層の中ボスは倒したので、いつでも4層に進むことが出来る。ロディ達は翌日の4層に向けて十分休養を取る予定だ。

 ダンジョンの4層まで進む場合、日帰りでミズマを往復するのは時間的に無理がある。そのため4層で戦う冒険者はダンジョン内で泊まるのが通例だ。


 安全地帯に戻ると、同じ目的であろう冒険者たちが数組いた。彼らは楽しそうに話をしたり、また疲れ切った顔をしたり、傷の手当てをしたりと、それぞれに過ごしているようだ。



「ふー、美味しかったのだ。もう動けないのだ。」


 昼食と同じく、お腹いっぱい食べたレミアはお穴をさすりながら満足そうに横になっている。


 ロディとエマ、ナコリナは今日寝るためのテントを立てる。テントは2つ。1つに3人ほどのスペースがあるため、5人とも中で寝ることが出来る。

 ちなみに組み合わせは当然ロディとテオが一組。レミア、ナコリナ、エマがもう一組だ。宿と同じようにロディとエマ、ナコリナが一緒に寝ることは(残念ながら)無い。


「テントは便利そうなのだ。我らも欲しいのだ。」


 レミアたちは今まで雑魚寝で、テントらしきものは使っていない。本当に必要最低限のものでここに暮らしている。

 テントに興味を示していたレミアに、ナコリナが提案する。


「そんなに高くはないから、魔石を換金して、次に買ってきてあげるわよ。」

「本当なのか?ぜひ欲しいのだ。」


 レミアとナコリナの間で話がまとまり、テントのほかにもいくつか必要な物を買ってくることになった。


◇◇


「お兄ちゃん、クリーンをお願い。」


 夜寝る前に、エマがロディにクリーンの魔法をお願いしてきた。

 クリーンの魔法は、水を使わない簡易シャワーというものだ。風呂に入れないダンジョン内ではクリーンの魔法での汚れ落としは冒険者、特に女性冒険者にとって必要不可欠なものだ。

 当然、エマもクリーンの魔法を取得しているのだが、こういった場合にはいつもロディに頼っている。


「じゃあ行くぞ。クリーン!」


 ロディがクリーンを唱えると、エマの体が淡い緑色の光に包まれる。


「ふわーーーーー。」


 気持ちがいいのか、エマの声が漏れる。

 10秒くらいののち、緑の光が消えてクリーンが終わる。


「はー、さっぱりした。やっぱりお兄ちゃんのクリーンは最高ね。」

「ロディ、次は私よ。」


 続いてナコリナもロディのクリーンを希望してきた。


 なぜロディのクリーンが大人気なのか。それは、ロディが「修正」クリーン魔法を使っているからだ。

 エマやナコリナが取得している「普通の」クリーンは、シャワーを浴びるような感じらしい。

 ところが「修正」クリーンは違う。まるで石鹸で洗い流したかのように体がキレイになり、また湯船につかったかのような満足感も得られるのだ。使用感に差がありすぎるので、2人ともクリーンはもっぱらロディの魔法をお願いしているのだった。


 え?修正魔法をそのまま使っていいのかだって?

 それは考えなくもないのだが、女性の『キレイ』に懸ける情熱が、そんな決まり事など吹き飛ばしてしまった。


「これは例外よ、例外。外から見ても普通のクリーン魔法とあまり変わらないから、使っても大丈夫よ。」

「そうそう。だからお兄ちゃんは修正クリーンを使ってね。」


 まあつまり、『女性の美容にかけるパワーには逆らえない』ということだ。これは世のことわり、仕方のないことなのだ。


「レミアちゃんもやってみる?ただし、絶対秘密にするならね」

「”ちゃん”ではないのだ。・・・でも、やってみたいのだ。秘密は守るのだ。」


 レミアも女の子・・・いや、成人の女性なので、当然興味はあるようだ。ナコリナ達も、さすがにこの場で仲間外れにするつもりはない。

 レミアの了解を得て、ロディはクリーン魔法をかけた。


「ふぉ?・・ふぉぉ!?・・・ふぉぉぉぉ!!」


 クリーン魔法に包まれている間、レミアは奇声を発し続け、魔法が終わったときには満面の笑みを浮かべてロディに駆け寄ってきた。


「凄いのだ。これは凄い魔法なのだ!」

「しー、声が大きいよ。他の冒険者に聞こえちゃうよ。」

「あ、ごめんなのだ。・・・でもこれは普通ではないのだ。私はこれが気に入ったのだ。」


 どうやらレミアもロディのクリーンの虜になってしまったようだ。


「テオもやってみる?」


 エマがテオに尋ねると、何気なく騒ぎを見ていたテオは、ハッと気づいたようにエマを見て、あわてて視線をそらした。


「俺は、別にいいぜ。」

「一人だけ仲間外れはダメだよ。」

「い、いいって言ってるだろ!」

「テオも素直にクリーンしてもらうのだ。キレイになった姿をエマに見せたいだろうなのだ。」

「!・・いや、いいって。」


 散々いじられたテオだが、結局最後にはロディの修正クリーンをかけてもらった。

 最初はイヤそうな顔をしていたテオも、次第に驚きの表情になり、クリーン後は口に出さずとも満足していることが表情からも分かった。



 その夜、寝ているロディにテオが声をかけた。


「なあ、ロディ」

「ん?」

「さっきのクリーン。すげえ気持ちよかった。ありがとう。」


 時間がたった後でお礼を言われたロディは、フッと笑って、そして答えた。


「どういたしまして。だけど絶対内緒にしてくれよな。」

「分かってる。」


 テオはそう言うと、寝返りを打ってロディと反対の方を向いた。

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