第25話 ロディ、中ボスを倒す
ロディとテオはスケルトン達を着実に減らしていった。
最初はスケルトンの数が多くすべてに対応が出来なかったために、2~3体ほど後ろに行かせてしまったが、それらはエマたちが無難に対応できていた。
そしてナコリナ達の頑張りにより、ゴーストメイジの攻撃は後衛に集中していてロディ達には飛んできていない。
(その頑張りに答えなきゃな!)
そしてついにロディ達は進んできたスケルトンをすべて倒し切った。
「よし、スケルトンを倒した。前に進むぞ!」
ロディは後ろにも通るように声を出し、そのままテオとともにゴーストメイジに向かう。
ゴーストメイジのそばには2体のスケルトンがゴーストメイジを守るように残っていた。他のスケルトン達に比べて剣や盾の装備が良い。スケルトンの上位のスケルトンソルジャーのようだ。
ロディとテオはお互いをちらりと見て、暗黙の了解のようにそれぞれが左右のソルジャーに向かって攻撃を開始した。
またその間に後衛の3人が前線に近づき、順々にゴーストメイジに攻撃を仕掛けてゴーストメイジが他を攻撃するすきを与えなかった。
ロディは剣術で、テオはそのスピードでスケルトンソルジャーに立ち向かうこと数合。二人はほぼ同時にソルジャーに致命傷を与えて倒した。
こうなるともう5対1では勝敗は見えている。ロディ達は慌てることなくゴーストメイジに攻撃を仕掛けつづけた。
ゴーストメイジは防戦一方になっていたのだが、このままではジリ貧になることを理解したのか、最後の勝負に出る。すべての防御を捨て、最高の魔法の一撃を放とうとしたのだ。ゴーストメイジの目の前に大きなファイヤーボールが現れる。至近距離からの魔法はよけるのが困難だ。
しかし、ロディは防御を無視したゴーストメイジのスキを見逃さなかった。即座に魔法を発動する。
「ファイヤーアロー!」
ロディにより至近距離で撃たれた高速のファイヤーアローは、ゴーストに魔法を撃つ間も避ける間も与えず、その体の中心にある核を寸分違わずに撃ち抜いた。
「グォォォアァァァァァァ・・・・・・」
ゴーストメイジは苦しみの声をあげ、目の前のファイヤーボールは撃ち出されることなく消え、そしてゴーストメイジの体が徐々に薄れていき、やがて魔石を残して消えて行った。
「やった、倒した!」
「すごいのだ!勝てたのだ。」
「これで4層に行けるわ。」
勝利したことで、5人は連戦の疲れも忘れて喜び合った。
ゴーストメイジを倒したその奥には、下層へ続く階段が見える。これが4層への入り口だ。
ちなみに中ボスであるゴーストメイジは、1度倒すと次からはそのメンバーには現れないため、何度も戦闘をする必要はない。ただ、館に入るときにゴーストメイジを倒していないメンバーがいた場合には再度戦うことになるのだが。
中ボスを倒した後、この幽霊館は一時的に安全地帯となる。ゴーストメイジを倒したパーティはここでしばし休憩をとることが出来る。ただ次を待っているパーティがいるかもしれないため、あまり長居は出来ない。
5人は円を作るように地面に座りしばしの休息をとった。
「しかし5人だったら全く苦戦せずに中ボスを倒せたな。」
「ほぼ無傷で・・・といってもテオは仕方ないけど、それでもここまで楽だなんて思ってなかったわ。」
ナコリナがテオとレミアを見ながら評した。テオはその戦闘スタイルの為に軽く怪我をしていて、レミアがそれをヒールで癒している。
「テオは武器と防具をもう少しいいものを使えばもっと安全に活躍できるんじゃないかな。」
例えば、腕を覆うガントレットやナックル付きの手袋なんかがあれば、攻撃力と防御力が上がるだろう。今までは素手とナイフだったのでその効果が高いはずだ。
「そうだ、良ければこういった防具とかを買っちゃおうか?」
エマがそう提案したところ、テオは少し喜んだ顔をしたが、すぐにその表情を消して答えた。
「気持ちはうれしいけど、いらない。」
「お金の事を気にしてるの?それほど高くない装備でも怪我を防ぐくらいできるから、身に着けておいて損はないとおもうけど。」
「でも肝心な時にすぐ壊れることになる。だから必要ない。」
「すぐ壊れる?どうして?」
「・・・言えない。」
テオは悔しそうに唇をかみながら言った。テオの口ぶりからすると、テオ自身の秘密に関連があるように感じられる。しかし言えないというのであれば無理には勧められない。
レミアを見ると、その会話を聞きながらやはり同じように少し苦しい顔をして口をつぐんでいる。本心はどうであれ、どうやら今はテオと同じ意見ということだろう。
ロディ達はテオの防具をあきらめるしかなかった。
「そういえばあのゴーストメイジの魔法って少し曲がって飛んで来たわ。初めて見た。」
ナコリナが雰囲気を変えるために話題を戦闘の話に戻す。
「魔法を曲げるには魔力のほかに制御力も必要だって聞くわ。私は全然できない。・・・ロディはどう?出来る?」
ナコリナがロディに興味深そうに目を向ける。
ロディは前線で戦っていたので、ゴーストメイジの魔法を直接は見ていない。ただ、『魔法を曲げる』話は少しだけ聞いたことがある。
「いままでそんな練習やったことないな。出来るかな?」
ロディは体を館の壁の方に向け、ファイヤーボールを目の前に出現させる。そして壁の方に向けて撃ちだした。
「ファイヤーボール!」
ロディの放ったファイヤーボールは壁に向かって真っすぐに向かう。
が、次の瞬間ファイヤーボールは急激に左方向に向きを変えた。
「「「「あ!」」」」
皆の驚きの声をよそに、進行方向を変えたファイヤーボールは、しばらく真横に進み、そして消えていった。
「うん、曲がった。意外と簡単かも。」
そう言ってみんなに向き直ったロディは、4人の怪訝そうな視線が集中していることに驚く。
「ど・・・どうしたんだみんな。」
「どうしたもこうしたも、魔法を直角に曲げるなんて聞いたことないんですけど。」
「でもできたけど?」
「あのゴーストメイジのファイヤーボールも、ちょっとカーブしただけだよ。」
「ゴーストメイジって、意外とたいしたことないんじゃない?」
「そんなわけないじゃない。お兄ちゃんが異常なのよ!」
ロディは最初のお試しで、いとも簡単に、しかも急峻に魔法の向きを変えることが出来た。これは普通ではありえない驚異的なことだ。
しかし当のロディはすごいことだとはあまり感じていない。日々の魔力訓練の方がもっと難しいことをやっているからだ。
「今のはスピードを落としてたから、速くして曲げると命中精度が落ちるだろうな。練習が必要かな。」
ロディの魔法はスピードが速い。これは魔力制御が優れているロディならではの技術で、並みの魔法師ではその速度も命中精度も歯が立たない。そしてさらにカーブをかけることが出来れば脅威度はさらに増す。
「あれより早くできるの!?お兄ちゃんの高速魔法で、そのうえカーブかかって来たらもう防ぎようがないわよ。」
「はー、ロディには驚かされてばかりだわ。」
エマとナコリナはあきれて文句をぶつぶつ言っている。
一方テオとレミアはというと、魔法にあまり詳しくないからか、ロディの魔法にただ単純に感心していた。
「ロディの魔法、すげえな。あんなに曲がるんだ。・・・俺もやってみてえ。」
「さすが私のロディなのだ。いい男は匂いも魔法も格別なのだ。」
ロディは、2人のあきれ顔と、2人の賛美のまなざしを同時に向けられるのだった。




