第24話 ロディ、幽霊館の戦い
3層を進んだ先には大きな洋館があった。まるで貴族の館のような荘厳な構えだが、「廃墟の街」の名の通り、建物は古く汚れており、壁は朽ちた所が見える。
冒険者はこの館を「幽霊館」と呼ぶ。
「この館の奥に4層に行く階段があるらしい。」
ギルドの資料によれば、この館を抜けた裏庭のようなところに階段があるらしい。
裏庭だが、館の横からはたどり着けず、館の中を通り抜けるしかないらしい。
「室内戦闘になるな。2層とかよりさらに狭いだろうな。」
「でも5人が協力すれば必ず突破できるわ。」
5人はここまで危なげなく戦闘に勝利していた。
前衛のテオは、パーティからのサポート攻撃が豊富になったために1対1の状況で安定した戦いが出来るようになり、怪我が大幅に減った。そのためレミアのヒールも不要となり、魔力も温存できるようになった。
(やはり人数が多いほうが戦いが安定するな。)
ロディは多人数パーティでの戦闘の有用性を実感する。
ロディはリミッター(修正魔法の制限)を外せば、一人でもダンジョン攻略も可能かもしれない。それでも、一人で出来ることには限界がある。仲間のサポートは必要なのだ。
「ここからは遠距離攻撃が出来るスケルトンアーチャーが出て来るらしいわ。それに中ボスみたいなゴーストメイジは魔法も使ってくるので気を付けて。」
これまで遠距離攻撃はほぼ皆無だったし、魔法を使う魔獣もいなかった。なのでここからは初経験の戦闘になる。一同は気を引き締めた。
◇◇
戦いは前庭から始まった。
館からは次々にスケルトンが出てくる。そして弓を持ったスケルトンも見えた。スケルトンアーチャーだ。
「サンドウォール!」
ロディがサンドウォールを唱えると、レミア、エマ、ナコリナの前に土壁が現れる。遠距離攻撃の相手がいた場合にはロディがサンドウォールを作るように決めていた。
このサンドウォールは威力を減らしているため20秒程度しか保てないが、その時間で十分だった。アーチャーの弓はサンドをーるを突き抜ける威力はない。
後衛はアーチャーめがけて攻撃を放つ。壁が崩れるころにはアーチャーは倒されているのだ。
後ろがアーチャーを攻撃している間、ロディとテオは速攻で前にいるスケルトンを排除にかかる。彼ら2人が居れば、数体のスケルトンは即座に倒されるのだ。
遠距離攻撃には防御しつつ遠距離で攻撃。前衛は接近して攻撃。
5人は戦いつつ連携を磨いていく。ここまでは順調だ。
館の中に入ると、少し難易度が上がる。狭くて動きづらくなるのと、足元に土が無いためだ。土が無ければサンドウォールが使えない。そのためこれまでの土壁戦法が使えないのだ。
「私の出番ね。」
ナコリナはそういうと、アーチャーが弓を放つ前に魔法を唱えた。
「エアウォール!」
ナコリナが唱えたエアウォールの魔法は、その名の通り「空気の壁」だ。術者の前面にウォールを形成する。このウォールの内部は風が渦巻いていて、矢などの攻撃を方向を変えてはじいてしまう。
ナコリナの現在の力では3人を守れるエアウォールは作れない。そのためレミアとエマはナコリナの後ろに隠れるように移動する。
ただ、一列になると後ろからはナコリナが邪魔になってしまい、攻撃の手数が減るのが難点だ。その分前衛が頑張るしかない。
それでも5人は特に苦戦することもなく、スケルトンたちを倒しながら館の迷路のような通路を突き進んでいく。
館内を突破し裏庭に出る扉までたどり着いた5人は、そこから20体ものスケルトンとその奥にいるゴーストを見つけた。
ゴーストは今までのゴーストと違い、色が赤黒く、しかも魔法用の杖を持っている。そのゴーストを守るようにスケルトンが囲んでいる。
「あれがゴーストメイジね。」
「中ボスらしく、強そうな感じなのだ。」
5人は館を出る手前で立ち止まった。あの中ボス集団は、裏庭に入らなければ動きださないらしい。なので彼らは周囲を注意しつつ連戦の疲れをとるためしばし休息をとることにした。
「あのメイジの魔法がどの程度かは判らないけど、資料では初級以上の威力があるらしい。」
「スケルトンの数が多いわね。ロディが防御魔法を使うよりも、前衛でスケルトンを速攻で倒す方がいいと思う。後衛は固まらないで、動きながら相手の攻撃をよけるようにしていきましょう。」
休息の間に戦いの方針を確認し、ゆっくりと時を待つ。
「みんな、準備はいい?じゃあそろそろ行くわよ。」
ナコリナが皆を見渡し、各々が頷く。
「それ!」
掛け声とともにロディとテオが飛び出し、少し遅れてエマ、レミア、ナコリナも裏庭に入っていく。
裏庭に入った瞬間、スケルトンたちは動き出し、ゴーストメイジは杖を前に構えた。
ロディとテオは進路を左右に開きながらスケルトンに向かっていく。
ロディはエアカッターを連射して前列のスケルトンを怯ませる。エアカッターは1撃ではスケルトンは倒せないが動きを止めるには十分だ。そのすきにロディの剣が翻り、スケルトンをなぎ倒す。魔法と剣でスケルトンを足止めしながら着実に倒していく。
テオはスピードを生かしてスケルトン達に攻撃して、ヒットアンドアウェイ戦法で的を絞らせず、隙をうかがいながら倒していく。
後方では、エマがレミアとナコリナを守るように身構え、抜けてきたスケルトンにレミアと二人で対応。ナコリナは魔法で奥のゴーストメイジを狙う。
「ファイヤーボール」
ナコリナの放ったファイヤーボールは一直線にゴーストメイジめがけて飛んでいく。が、ゴーストメイジは杖を振ると、ウォーターボールが現れてファイヤーボールと衝突し、軽い爆発ののち双方が相殺されて消えて行った。
「そう簡単にはいかないわね。」
ナコリナがつぶやいて再度魔法を唱えようとするが、それより早くゴーストメイジがファイヤーボールを形成してナコリナ達を攻撃してきた。
このファイヤーボールはナコリナのそれより二回りほど大きい。威力も同様に強いとわかる。
「みんな避けて。」
魔法での相殺が無理と見て、ナコリナがエマとレミアに声をかけ、3人は散らばるようにファイヤーボールの軌道から離れた。
しかし、ゴーストメイジの放ったファイヤーボールは一直線には飛ばず、ややカーブを描くように方向を変え、エマに向かってきた。
「!」
エマはとっさの反射神経でファイヤーボールを何とか避けることが出来たが、体をかすめるくらい近くを通り過ぎた。
「魔法が曲がってくるのだ!こんなのありなのか!?」
「落ち着いてみんな。高位の魔法師は撃ち出した魔法の向きを途中で変化させることが出来るって聞いたことがあるわ。ゴーストメイジもそれが出来るって考えて行動すべきね。」
「了解。」
彼女たちが前方を見ると、ロディとテオがスケルトンと戦い続けている。
「ロディ達がスケルトンを倒すまで、牽制と回避に専念しましょう。」
回避だけでなく、ゴーストメイジの意識がロディとテオに向かないよう、ゴーストメイジの気を自分たちに引き付ける必要がある。
ナコリナ達はゴーストメイジの魔法をよけつつ、合間を見てファイヤーボールでの攻撃を継続し続けた。




