第22話 ロディ、昼食を共にする
翌日、ロディが起きると、エマはすでに起きていてベッドにいなかった。
どこに行ったんだろうか、とナコリナと準備をしながら待っていると、やがてエマが荷物を抱えて戻ってきた。
「あ、起きてたんだ。おはよう。」
「おはよう。朝早くからどこに行ってたんだ?」
「理由はこれよ。」
エマが手に持ったものを差し出す。それはバスケットだった。
「お、これはもしかして・・・。」
ナコリナが何かに感づいてバスケットを開けると、
「わ、おいしそう。」
「いい匂いだ。」
中にはサンドイッチやサラダ、肉や果物など、まるでピクニックに持っていく食事が入っていた。
「これ、エマちゃんが作ったの?」
「そう。宿屋のおかみさんに無理言ってお願いして、厨房の一角を貸してもらったんだ。」
エマは朝早くに起きて、テオとレミアの為に食事を作っていたのだった。昨日夕食の時に思いついたのは、この事だったわけだ。
「エマちゃん、頑張ったわね。これなら彼らも間違いなく喜ぶわ。」
すでにエマに胃袋を掴まれているであろうナコリナが太鼓判を押す。
「エマ、いい考えだよ。間違いなくファインプレーだ。」
ロディもエマを褒める。なにせエマの料理上手は定評がある。自分が出来る最高の仕事をしてくれたのだから文句のつけようが無い。
「えへへ、ありがとう。」
エマはくすぐったそうな笑みを浮かべて喜んだ。
「じゃあ、さっそくダンジョンに行きましょう!」
ナコリナが高らかに宣言した。
「・・・と、その前に、朝食を食べてからね。」
◇◇
「うまいのだ。うまいのだーーーーーーー!」
レミアが目の前にあるサンドイッチやら肉やらを頬張りながら叫ぶ。
ダンジョン2層の安全地帯にやってきたロディ達は、早速みんなで早めの昼食をとることを提案した。
エマの作った料理が入ったバスケットは収納スペースに入れ、到着直前に取り出した。なのでまだ暖かい。
「今まで食べてきた料理の中で一番うまいのだ。絶品なのだ。」
レミアは一口食べるなり目を丸くして、勢いよく食べ続けて絶賛し続ける。
つられて手を出したテオも、その味に驚きの表情を浮かべて黙々と食べ続けた。
「どう、テオ、美味しい?これ私が作ったんだ。」
エマが自慢げにテオに聞くと、テオは驚いて一旦食べるのをやめ、エマと、手に持ったサンドイッチとを交互に眺めた。
「美味しい?」
念を押して聞くエマに、テオは赤らめた顔を横に向けてから、
「・・・美味しい。」
とつぶやくように言った。
「テオは照れておるのだ。ちゃんと褒めないと女性は喜んでくれないのだ。」
「う、うるせえ。ちゃんと言っただろ。」
テオは恥ずかしそうに言うと、下を向いて手に持ったサンドイッチを黙々と食べ続けた。
その3人の微笑ましいやり取りを見ながら、ロディとナコリナも笑顔でバスケットの中に手を伸ばしていた。
◇◇
食事も済んで皆がお腹いっぱいになった。特にテオとレミアの二人はかなり食べていたようで、何度もお腹をさすっていた。
どうやら彼らもエマの料理に胃袋を掴まれてしまったようだ。テオに限っては別のものも掴まれてしまっているようだが。
「少し休んだら、私たちは3層に行くわ。」
ナコリナがテオ達に話をした。
すると、テオは一度レミアを見てお互いに頷いた。そして3人を見て決心したように言った。
「なあ、俺たちも一緒に3層に連れてってくれないか。」
それは共同で探索しようという提案だった。テオは話し続ける。
「買い出しも予想以上に多く持ってきてくれた。美味しい昼食も作ってくれた。だからお礼をしなくちゃいけない。でも俺たちにできることは、一緒にダンジョンを探索することくらいだ。だから、ダンジョンでその手伝いをしたい。」
「え、一緒に来てくれるの?」
ロディたちにとっては実は願っても無いことだった。こちらから臨時パーティをお願いしようかとも考えていたのだが、もう少し様子を見てからにしようかと、今回は保留する予定だった。
だが思いがけずテオ達から提案してくれた。これは予想外にうれしいことだった。ダンジョンになれている2人が加われば戦力面だけでなく、危険もはるかに小さくなるだろう。
「もっちろん、大歓迎だよ。2人が居ればもう攻略出来たも同然だね。」
エマが大喜びで賛成する。エマに喜ばれて、テオも嬉しそうだ。
「レミアもいいの?」
ロディは、またもやくっつかれているレミアに向いて確認した。
「もちろんなのだ。『いい匂い』のロディについていくのだ。」
レミアはやはり匂いで判断してOKだという。ロディは笑って
「じゃあ、テオ、レミア、こっちからもお願いするよ。一緒に3層に来てくれ。」
とお願いした。
もちろん2人に否はない。5人は全員嬉しそうに笑顔を見せて喜んだのだった。




