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第20話 ロディ、気に入られる

 5人は一緒に安全地帯まで移動することになった。そこにテオとレミアの拠点があるらしい。


 この安全地帯は、3層へ行く階段が近くにあるため冒険者が3層へ行く前の小休止場所として大いに活用されていた。5人が大ホールのような安全地帯に入ると、他に4組の冒険者パーティが休憩をしていた。結構な広さがあるため、他のパーティがいても狭いとは全く感じられない。


「こっちなのだ」


 レミアが先頭に立って歩いた先には、敷物の上に道具や食器が置いている場所があった。どうやらここが2人の定位置らしい。


 5人は敷物の上に、と言っても敷物はそれほど大きくないので、ロディ、エマ、ナコリナは地面に直に座った。


「へー、いつもここが二人の場所なの。」

「そうなのだ。私たちはいつもここにいるのだ。」


 一息ついた後、彼らは自分たちの自己紹介や、その他いろいろな情報交換を始める。

 そこからわかったことは、まずテオとレミアの二人は特に血縁関係はなく、ただ「理由あって」一緒にいるだけとのこと。

 テオはやはり獣人の血を引いている。しかし獣人らしいところは耳としっぽくらいで、他は人間と変わらない外見だ。

 そしてレミアはなんとハーフエルフだという。いつもフードをしているのは耳を隠すためらしい。フードを少し開けて見せてくれたが、確かに耳がとがっていた。

 獣人もエルフも、この王国では普通に生活している。以前住んでいたメルクーにも一定数暮らしていた。

 ただ、別の国では人間以外の人種は迫害されているとも聞いた。また少数とはいえ、この王国でも一部地域では差別の対象になっているという話もある。

 彼女が耳を見せないようにしているのもそういったところに原因があるかもしれない。


「ところでさ、テオとレミアって、ひょっとして、ここで生活してるの?」


 エマが軽い感じで聞いた。

 エマに限らずロディとナコリナも、今いる場所の様子からそんな感じが見て取れたので、確認の質問だった。


「やっぱりわかるのだ。そう、私とテオの2人はここで生活しているのだ。」


 レミアはそう答えた。少しうつむいて、少しいやそうに。


「・・・理由を聞いても?」

「ダンジョンは魔力が豊富だからなのだ。」

「魔力?生活するために魔力がたくさん必要なの?」

「私たちの体はいつも魔力を使い続けなければいけないのだ。そういう体なのだ。だから普通の人よりたくさんの魔力がいるのだ。でもダンジョンの外に出れば魔力の回復ができなくて、すぐに動けなくなってしまうのだ。ダンジョンなら魔力濃度が濃いから回復が追い付く。だからダンジョンに住んでいるのだ。」


 彼らの答えにロディ達は驚く。彼らは体質ゆえか、常に魔力を消費し続けている。だからダンジョンで生活しているという。

 ダンジョンの外では魔力が薄く、レミアの話では、外で生活すれば体内魔力が減少して2日と持たずに死んでしまいほどだという。

 なので彼らはここにずっと住んでいる、というより出られないようだ。


「でもどうしてそんな体質に?それまではどうして生活していたの?」

「・・・それは言えないのだ。」


 ナコリナが理由を聞いたが、レミアは答えなかった。テオも同じく口をつぐむ。どうやら人に言ってはいけない理由のようだ。


「ごめんなさい。これ以上詮索するつもりはないから、安心して。」


 3人は他人の秘密を無理に聞き出すようなことはしない。話さないということは少なくとも今は話せないのだ。それに突っ込もうとすると、せっかく好転している関係がこじれてしまうかもしれない。必要ならばいずれ話してくれるだろう。

 ナコリナがあっさり引いたのにホッとしたのか、テオとレミアの表情が少し緩んだ。


「もう1ヶ月くらいここにいる。俺たちがここに住んでいることを知らないってことは、最近どっかから来たのか?」

「え、そうだけど、貴方たちの事はミズマでは有名なの?」

「いつもここにいるから、冒険者の間では知ってる人も多いのだ。」

「知らなかったわ。・・・テオの予想通り、私たちは3日前にメルクーの街から来たの。」

「メルクー?どこにあるんだ?」

「ここから南に馬車で3日間行った先にある街よ。」

「どんな街なのだ?」

「私が教えてあげるわ。メルクーはね、この近くのミズマの街より小さいけれど活気のある街よ。人口は・・・・・・」


 エマがメルクーの街の説明を始める。どうやらテオもレミアも他の街のことに興味があるようだ。

 エマもミズマの街に初めて来た時は興味津々だったので、それを思い出したのだろう、メルクーの街の様子を楽し気に2人に話していた。

 エマの話で、先ほどの少し重い空気は霧散したようで、それからは最初のころと同じ雰囲気で会話ができた。


 話はそれから様々な話に変わっていき、それを2人は興味深そうに聞いたり質問したりしていた。

 だいぶ打ち解けてきたようだ、とロディは安心した。


 しばらくの後、ふとロディは、テオがこちらを不思議そうにじっと見ているのに気づいた。


「どうしたテオ。俺に何か?」

「いや、ロディというよりレミアだが。・・・お前ら近すぎないか?」


 そう言われてロディは横を見た。

 レミアはロディの隣に座っていた。というより、ほとんどくっついていた。


「わ、レミア、近すぎない?」


 ロディは少し驚いてレミアに聞いた。するとレミアはすました顔でこう言った。


「ロディの近くは、すごくいい匂いがするのだ。私はこの匂いが好きなのだ。」

「えぇ・・・」


 どうやら褒められているようだが、「いい匂い」というのはちょっと微妙だ。体臭(?)をかがれているように思えて素直には喜べずに、苦笑いを返すしかない。


「ロディって、レミアにすごく気に入られたな。レミアがここまで気に入るのは見たことないぜ。」


 テオが口を大きく開けて笑った。それは年相応の屈託のない笑顔で、最初に会ったときの警戒心はもう全く感じられなかった。

 それを見てロディは「まあいいか」と思い、レミアがくっつき気味なのもそのままにすることにした。


 が、そんなロディ達の姿を見てジト目を向ける者もいる。


「・・・お兄ちゃんって、そういう趣味もあったの?」

「は?なんだよそういう趣味って。」

「年上キラーだけじゃなく、幼い子供まで毒牙にかけるなんて、お兄ちゃん見損なったわ。」

「何の話だよそれ。それに毒牙なんてかけてない。」

「ロディの二つ名がまた増えたわ。『全方位オールレンジロディ』という」

「ナコリナ、勝手に増やすな。」


 ロディの女ったらしぶりを肴にわいわい騒いでいると、突然不服の声が上がった。


「待つのだ!私は年上なのだ。「お姉さん」なのだぞ。」

「「「あ、」」」


 そういえばレミアは最年長だった。幼女ではない。

 と頭では分かっていても、どう見ても幼女だ。子供扱いされてブンむくれるレミアを見ると、子供が癇癪を起こしているようにしか見えない。


「あー、本当に年上なの?」

「さっき言ったのだ。私はレディーなのだ!」

「やっぱりそうは見えないけど」

「な!・・・ちょっと発育が遅いだけなのだ。あと5年もすれば、ボン・キュッ・ボーンになるのだ。」

「が、頑張ればなれるかもね。」

「ムキー!その眼は信じていない目なのだ。絶対に素敵なレディーになってやるのだ。」


 レミアの話題で盛り上がる(?)4人のそばで、テオは腹を抱えて笑っているのだった。

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