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第18話 ロディ、新しい魔法陣を作ろう

 2層は1層とは違って、『いかにもダンジョン』的な洞窟状の通路になっていた。

 通路は5m幅と、寸法的には1層と変わらないが、2層は自然の岩肌のようで1層とは印象が大きく異なる。


「各層で見た目が違う。実際に見ると驚くわね。」


 ナコリナが3人を代表した感想を漏らす。


 ここで出てくる魔物は、シルバーボア(Dランク)、アント(単体E、集団D)、コボルト(E)。1層よりも強くなってはいるが、まだそれほど恐れるほどではない。


「見た目と魔物は違うけど、レベル的には1層より少し強いだけでそれほど変わりがないから、同じフォーメーションで行くぞ。」


 前衛ロディ、中衛ナコリナ、後衛エマの形で進み続けると、シルバーボアが1頭で現れた。


 このシルバーボアは、以前戦ったフォレストボアと強さや特性ともに同じと考えていい。つまり真っ直ぐ突進してくるのが武器だ。

 だが違うのは、ここがダンジョンであること。ここは通路となっていて、森に比べて幅が狭いためよけにくく、また位置取りも制限される。

 とはいえ所詮はDランク程度の魔物の為、3人の実力では苦戦する方が難しい。


 ボアを避けて後ろに行かせるとエマとナコリナが危険になるため、ロディは見つけるや否や素早くファイヤーボールで左前脚を3連打して転倒させ、一瞬で接近して心臓に剣を立てて倒した・


「魔法の使い方も慣れてきたみたいね。」

「おかげさまで。やっぱり実戦で練習すると上達が早いよ。」

「今度は私が先制するから、ロディはサポートをお願い。」

「分かった。」


 それから、ナコリナの魔法とエマの弓を使った戦闘も実戦練習していった。

 アントはおよそ体長2mある昆虫型魔獣だ。この魔獣は1体で遭遇することはほぼなく、3体~5体の集団で現れる。

 アントに弓は効きづらいため、魔法ではエアカッターで手足を切断するのがセオリーになる。

 アントの時だけエマは小刀に切り替え、ナコリナの先制攻撃ののち、ロディとエマの二人で接近戦で倒していく。


 3人は、魔獣ごとの戦法や連携を確認しながら進んでいった。


◇◇


 3人は、一旦休憩するために小部屋に入った。


「一度ここで無理せずここで休憩を入れよう。」


 小部屋は10m四方くらいのこじんまりした空間だ。入口さえ気をつければ魔物に入ってこられる心配はない。


「ロディってまだ魔力は余裕があるの?」

「まだ余裕だよ。」

「私は半分ちょっとくらい。2層はまだいいけど、下層に行けばもっと使うことになりそう。」


 ナコリナが不安顔でため息をついた。ロディの魔力量は並の魔術師よりはるかに多い。だがナコリナはそうではない。常に魔力量に気を配りながら活動するしかないのだ。


「ダンジョンは外に比べて魔力の濃度が高いから、魔力回復が少し早くなるけど、それでも限度があるわね。」

「うーん、魔力回復薬を飲むのがいいけど、高いからなあ。」


 前に店先で見た魔力回復薬は高価でおいそれと使えるものではない。通常使うというよりもいざという時のために使うのが一般的だ。


 すると、エマが何かを思いついたようにロディとナコリナに振り向いた。


「そういえば、グライムスさんの残した魔法陣で、魔力を回復させるみたいなのがなかったっけ。」

「ん?そんなのあったかな?」

「魔法陣が大きくて、お金と時間がかかりそうだからってやめたやつ。」

「えっと・・・あ、『魔力譲渡』」

「そう、それ。」


 エマが言う『魔力譲渡』はグライムス氏の遺産の中にあった魔法陣の一つだ。修正して復活できそうだったが、上級魔法並みに大きい魔方陣が必要だったため、当初の取得予定から省いていた。


「あれは魔紙とインクで、魔力回復薬2本分はお金がかかりそうだ。今は無理だ。」


 ロディはエマの意見を却下したのだが、その有効性を認めないわけではない。むしろ出来るだけ早く覚えた方がいいとさえ思っていた。

 なにしろロディの魔力量は有り余るほどあるので、その一部を譲渡してもさしたる問題はない。そしてロディの魔力をナコリナたちに譲渡できれば、魔力回復薬よりもよほどコスパがいい。

 ただ、なににせよ先立つものがない。お金を貯める必要があるので、まだ先の話だ。


「仕方ないよ。なあナコリナ・・・」


 ロディはナコリナに同意を求めるように振り向いた。が、ナコリナは指を顎に当てて何やら考え込んでいた。


「ナコリナ、どうしたの。」


 ロディが声をかけるが、ナコリナはすぐには反応せず、しばらくそのままの体勢で動かなかった。


「「・・・?」」


 ロディとエマは顔を見合わせ、首を横に振った。ナコリナの考えがまとまるまで、2人は待つしかなかった。


 しばらくののち、


「・・・決めたわ。」


ナコリナはそうつぶやいたかと思うと、ロディに振り向いた。なにやら決心したような少しこわばった顔だ。


「ロディ、お願い。『魔力譲渡』の魔法陣を作って、魔力譲渡を取得して。」

「「え?」」


 2人は驚いた。ナコリナはどうやら魔力譲渡のことをずっと考えていたようだ。


「で、でもお金がないよ。魔紙は大きいものを買わなきゃだし、インクも買い足さなきゃ。」

「お金ならあるわ。」

「え!?」

「私が個人でこれまでためてきたお金があるわ。ギリギリだけど何とか足りるはずよ。これで魔法陣を作って。」

「え、ちょ、ちょっと待って。落ち着いて。」


 勢い込んでいるナコリナを落ち着かせ、ロディは尋ねる。


「どうしてそんなに急いで『魔力譲渡』を取得する必要があるの。」

「だって、このままじゃ私は足手まといになるから。」

「足手まとい?俺たちそんなこと思ってないけど。」

「今はいいのよ。でも今後もっと強くてもっと難しい魔物と対戦していくことになったら、私の魔力じゃすぐに枯渇してしまう。エマちゃんは独自のギフトだから貢献できるけど、私は魔力が無くなればただの足手まといになる。それじゃダメなのよ。」


 ナコリナは真剣にロディたちに自分の考えを語った。どうやらロディに比べて魔力量が少なく、それでは付いていけなくなることに危機感があったようだ。


「だからお願い。私のお金を使って魔力譲渡の魔法陣を作製して、取得してほしいの。」


 ロディとエマは、ナコリナの必死のお願いを黙って聞いていたが、やがて、ロディが口を開いた。


「ダメだよ。ナコリナのお金は使えない。」

「ロディ・・・」

「お兄ちゃん・・・」


 ロディに拒否されショックを受けるナコリナ、そして驚くエマ。しかしロディの話には続きがあった。


「俺たちは仲間なんだ。みんなで使う魔方陣にナコリナだけお金を払うのはおかしいよ。制作費は三等分だ。今俺とエマにお金はないから、ナコリナから借りる形にして、後で返すようにする。ナコリナ、魔法陣を作るからお金を貸してほしい。」

「!ロディ・・・それでいいの?私のわがままみたいなものなのに。」

「そんなの言いっこなし。みんなのための魔法だ。ナコリナだけが恩恵を受けるわけじゃない。必要とあればエマにも使うから大丈夫さ。」

「・・・ありがとう。」


 ナコリナは今にも泣きそうな笑顔を見せ、くるりと後ろを向いた。どうやら今顔を見られると恥ずかしいようだ。

 ロディは隣のエマに顔を向けた。


「エマもいいか?お前の分も勝手に借金にしちゃったけど。」

「もちろんいいわよ。お姉ちゃんのためだもの。」


 エマは明るく親指を立ててOKジェスチャーをした。


「そうと決まれば、じゃんじゃん稼いで借金を返さないとね。」

「おい、危ないぞ。急いでいくなよ。」

「へーきへーき。魔物がいないのは確認済だから。」

「まったく・・・」


 部屋を飛び出していくエマの後ろに、あきれ顔のロディと笑顔のナコリナが続いていった。


◇◇


 3人が2層を進んでいくと、索敵をしているエマがSTOPをかけた。


「前方に5つの反応。・・・たぶん戦ってる。」


 どうやら魔物と冒険者が戦っているようだ。かすかに打撃音や魔物の声などが聞こえてくる。


「近づいてみようか。」


 通路を進んでいくと、戦闘の音が大きくなってきた。3人は足早に戦いが見える場所まで接近した。

するとそこには、アント3体と戦っている、2人の少年少女がいた。

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