第13話 ロディ、エマのひらめきに感謝する
「1回発動した魔法は魔力を周辺にまき散らして消えていくから、魔力を減らすという考えは正しいと思うわ。」
「でも『威力減少』魔法は魔力を減らすとか奪うとかいう効果はなさそうだよ。」
実際に魔法を使ってみて、ロディは『威力減少』魔法は魔力を減らすような効果はないと断言できる。
「じゃあどうすれば威力を減らせるのかな?」
しばらく3人で考えたが、いい案が浮かばない。
いい加減に詰まってきて、思いついた方法を手あたり次第やって行こうかという「下手な鉄砲」理論に陥りかけていた。
そこに、エマがボソッとつぶやいた。
「ねえ、少ない魔力で攻撃魔法を発動することはできる?」
「少ない魔力で魔法を発動?でもそれは無理だ。攻撃魔法は一定量の魔力を込めないと発動しない。エマも分かってるだろう?」
魔法には発動の為の魔力が一定のものと、可変のものがある。ファイヤーボールなど、攻撃魔法は発動の際の魔力量は決まっていて、一定の魔力を使わなければ発動しない。また、魔力を込めても無意味で、同じ威力のファイヤーボールしかできない。
攻撃魔法が魔法の威力やサイズなどを変えるのが困難な理由はここにある。
「じゃあ『威力減少』魔法も魔力は一定なの。」
「いや、威力減少魔法は魔力量は決まってないみたいだ。魔力が少なくても一応発動できている。収納魔法の魔力と同じで、必要に応じて変えられるみたいだ。」
収納魔法は、収納したいものの容積に応じて必要な魔力量が変わる。小さいものはごく少量の魔力で、大きなものを収納する場合はより大きな魔力が必要だ。威力減少魔法も同様に、対象に応じて魔力量を変えて発動できるようだ。
それを聞いてしばらく考えていたエマが、何かをひらめいたように2人に振り向く。
「もしかして、「威力減少」魔法は、魔力の不足分を補ってくれるんじゃないかな。」
「ん?不足分を補う?」
「それ、どういう事。」
すぐには腑に落ちない顔の2人にエマが説明する。
「ファイヤーボールとかは、魔力量が少ないと発動しないんでしょ。じゃあ、わざと少ない魔力量でファイヤーボールを発動しようとして、その足りない分は威力減少魔法の魔力で補うの。2つの魔法の合計で通常のファイヤーボールを発動させるのと同じ魔力量にするのよ。」
「・・・つまり簡単に言うと・・・えーっと・・・」
ロディがうまい言葉が見つからずに悩んでいると、ナコリナがポンと手を叩いた。
「つまり、威力減少魔法で魔力をかさ増しするってことね。ファイヤーボールと威力減少魔法の合計魔力でファイヤーボールは発動するけど、ファイヤーボール自体の魔力量は少ないので、その分だけ威力は薄まって弱くなる。」
「そう!その通り。」
なるほど、とロディは理解した。
例えると、壁を乗り越えたいけど身長が低いので届かない。しかしはしごを使って高く昇れば壁を越えられる。このはしごにあたるのが威力減少魔法ということか。
「いい考えだ。早速試してみよう。」
ロディは、ウォーターボールと威力減少魔法を同時に発動てみた。ウォーターボールは魔力量を大体10分の1にして、残り魔力は威力減少魔法で補う。
すると、ロディの目の前に、およそ20cmくらいの水球が現れた。さっきの水球よりも小さい、普通サイズの大きさだ。
「どうやら成功のようだ。すごいぞ、エマ。」
「エマちゃんのひらめきが大正解だったわけね。さすがエマちゃん。」
ロディとナコリナが笑顔でエマを褒める。2人に褒められて、エマはまんざらでもない笑顔ではにかむ。
威力減少の魔法は、対象の魔法を発動させてからその威力を減らす役割だと考えていたが、根本が違っていた。この魔法は、対象魔法の魔力量が少なくてもそれを補って発動可能な状態にする、いわば補助魔法だったのだ。
このあとファイヤーボールでもやってみたが、やはり見た目が明らかに違う、オレンジ色の”普通の”ファイヤーボールを出すことが出来た。
エアカッターは見えにくく、サンドウォールは土が無い(周りは石ばかり)ので後で試そう。
「じゃあ、ロディの魔法の練習をしながら戻りましょう。ロディは魔法メインで魔物を攻撃してね。」
「分かった。」
ダンジョンの出口に向かう途中、出てきた魔物をロディはファイヤーボールやエアカッターなど”普通の”魔法に見えるように微調整しつつ攻撃していった。
(楽しい。魔法を使うことが本当に楽しい。威力減少を十分練習すれば、何の気兼ねなく人前で魔法を使える。本当にうれしい。)
ロディは、本当に楽しそうに魔物に魔法を撃ち込んでいく。
途中、ゴブリンにファイヤーボールを連射して火だるまにしてしまい、『やりすぎ』と怒られたのは、仕方のないことだった。




