第12話 ロディ、威力減少の練習をする
3人は今後の方針を話し合うため、手ごろな小部屋で休憩がてら話し合いをした。
「とにかく、ロディが人前で魔法を使うには、威力減少を使えるようにならないと絶対にダメね。」
「そう、お兄ちゃんの魔法は危険すぎる。」
「はあ・・・。」
2人に『危険人物』扱いされたロディは、小さくなって話を聞いていた。
(なんで俺、責められてるんだろう。悪いことしてないのに。)
魔法の事は仕方ないにせよ、なんだか理不尽さを感じずにはいられない。
「なので今日は魔物狩りはここで終わりにして、ロディには威力減少魔法を集中的に練習してもらいましょ。」
とナコリナは提案した。
威力減少魔法は名前の通りだと魔法の威力を減少させることが出来るのだろう。しかし誰も使ったことが無いため、その操作方法はロディが見つけるしかない。
「まずウォーターボールで試してみたほうがいいと思う。」
ウォーターボールなら操作を間違っても大きな被害が出る事はない。賢明な選択だ。
ロディはウォーターボールを目の前に出した。およそ50cmの水球が、ふよふよと空中に浮かんでいる。
「これを『威力減少』を使って小さくできればいいんだね。」
「そう。でもウォーターボールと威力減少の魔法の2重起動になるから、かなり練習が必要だと思うわ。」
魔法の2重起動は、例えばファイヤーボールを2つ同時に撃つとか、ファイヤーアローとエアカッターを同時に出すという技術で、練習しないと正しく扱えず魔法が暴走してしまう、難しい技術だ。
「やってみるよ。」
ロディはウォーターボールを出したまま、同時に『威力減少』と念じる。そしてウォーターボールを小さくするイメージをした。
しかし水球はなかなか変化が見られない。
ロディはまず、威力減少魔法で水球の周りを覆い、そこから魔力を奪い取って水球を小さくしようとイメージした。
しかし、水球の魔力は周辺に散っていかず、水球は小さくならない。
しばらくやってみたが、まったく変化の兆しも現れない。
(うーん、イメージが違うのかな。)
ロディはそのやり方をあきらめ、別の方法をとることにした。
次は、周りを覆った威力減少魔法の魔力を水球に向けて押し込み、力づくで小さくさせようとした。
最初は均等に押し込むことが出来ず、水球の表面にぼこぼこと凹凸ができていたのだが、およそ10分後には均等に圧をかけることが出来るようになった。
さらに魔力を込めていくと、水球は少しずつ小さくなっていった。
「あ、小さくなってる。」
「本当だ。しかも均一に。・・・2重起動だけでも難しいのに、ロディにとっては簡単な事なのね。」
ナコリナは嫉妬にも似たため息をついた。
ロディはこれまで欠かすことなく鍛錬を続けてきたおかげで魔力制御力が高い。しかも体内魔力量も多く、その状態で訓練していたために「多量の魔力を細かく制御する」という、並みの魔法師では到底出来ない技量を持っていた。
ロディは懸命に水球を小さくしていった。しかし、だいたい30cmくらいになったところで、これ以上小さくならなくなった。
「ふー、これが今のところ限界だ。」
ロディは水球をそのままの状態でキープしたまま2人に振り向いた。
「ねね、さわってもいい?」
「いいよ。」
エマがそっと指を水球に近づけ、そして水に指を入れた。
「・・・あれ?」
エマが不思議そうな声をあげる。
「どうした?」
「この水、なんだか指を入れにくいよ。押し戻してくる感じ。」
「どんな感じか、私もやってみる。」
ナコリナも指を入れるが、すぐに指をひっこめた。
「エマちゃんの言う通りだわ。普通の水より硬い感じで入りにくい。」
ロディも指を入れてみるが、確かに2人の言う通りだ。
「これは普通の水の状態じゃないね。硬くて重い水、かな。」
ロディの水球は周りからの圧力で強制的に小さくしたため、とても密度が高くなっていた。そのため指を入れたときに圧迫感や押し戻す力が働いたのだろう。
「まだサイズも大きいし、これを小さくしても密度が上がるだけだからさらに違和感が出てくるだろう。”普通の”ウォーターボールじゃないな。」
「この方法はダメそうね。」
新しいことをやろうとすると最初はなかなかうまくいかないものだ。
ロディ達は魔法を一旦解いて、やり方を相談することにした。




