第9話 ロディ、いざダンジョンへ
ミズマの初級ダンジョンは、街の西側の街道をおよそ2時間くらい歩いた距離にある。
「うわ、結構いろいろな物が売ってる。」
エマがダンジョンの入り口付近に出来ている市場のような場所を見て興味深そうに眺めている。
通常ダンジョンの入り口周辺には、冒険者目当ての露店が立ち並んで、さながら市場のようになっている所が多い。
購入忘れの物を買う、食事をする、ダンジョン産の物をその場で売りさばくなど、ダンジョンは人と物と金が動く魅力的な場所だ。
もっと大きなダンジョンや、街から離れているダンジョンなどでは、さながら一つの街が出来ている所もあるらしい。
このダンジョンは初級で比較的冒険者が多くなく、またミズマの街も帰れない距離では無いため、さほど大きくない市場が出来ている程度なのだ。
「もっと大きなダンジョンに行ってみたいね。」
「有名な所は国の東部にあるユーフィンという街ね。ダンジョンの周りに人が集まってできた街で、人口はメルクーよりも多いらしいわよ。」
ユーフィンの街は、今いるような市場が発端となって少しずつダンジョンの周りにたくさんの店などが集まってきて出来た街。なので街の中心部にダンジョンがある構造になっている。
「いずれは行ってみたいけど、そこは中級ダンジョンで、しかもその中でも魔物が強いと聞いているから、まだまだ先ね。」
他のダンジョンにも興味はあるが、今はまだ目の前のダンジョンに入ってもいない。
「ほかのダンジョンを気にするには早すぎるよ。まずはこのダンジョンに入ってからだ。」
ロディはそう言って先頭に立ってダンジョンの入り口に向けて歩いていく。
◇◇◇◇
ダンジョンの入り口は、石造りの四角い建物だった。この正面に扉があり、そこからダンジョンに入る。
この建物はどうやら『古代文明の遺跡』らしい。記録では「最初からそこに有った」もので、だれが作ったかは全く伝えられていない。
なので、ダンジョンに関しても「古代文明の遺産」との説が有力である。
初級ダンジョンは入場制限が無いため、このダンジョンにも門番など監視役はいない。冒険者はただ普通に入っていくだけだ。
3人が建物の中に入ると、4辺を囲われただけの何もない空間になっていて、正面の石壁には扉のない入口が開いており、そこから下に伸びる階段があった。どうやらこの階段を降りればダンジョン内になるらしい。
「よし、2人とも準備は良い?」
「もちろん。」
「早く入ってみよう。」
「遊びじゃないから油断するなよエマ。」
「分かってるって。」
階段を下りていくと、最下段に出口が開いていた。3人は出口をくぐり抜ける。
と、そこは上下左右を石のブロックに囲まれた通路になっていた。いわゆる『迷宮型』と呼ばれるダンジョンだ。
「これがダンジョン・・・。」
ロディは初めて入るダンジョンに少し緊張しながら周囲を見回した。
石に囲まれた通路は幅4m~5mくらい、高さも同じ。
彼らはギルドでダンジョンの情報を集めていたので、第1層の造りも知っていた。しかしやはり本で知るのと実際に見るのは全く違う。その場で感じてみないと分からないものなのだ。
「なんだかすごいって感じがする。うまく言えないけどすごい。」
「同感。なんて言うのかな、なんだかこうワクワクする。」
エマとナコリナがそれぞれ感想を口にする。
「でも聞いていたけどやっぱり不思議。地下のはずなのに、明るいなんて。」
ナコリナが不思議そうに周りを見る。
このダンジョンの1層は迷宮型で周囲を石のブロックで囲まれた通路状になっているのだが、なぜか明るい。外に比べて少々薄暗くはあるのだが、ライトなどの光源を必要とするほどでもない。
この光はどこから来るのか、今のところ分かっていない。『ダンジョンはそういうものだ』と思うしかないのだ。
「さて、じゃあそろそろ進もうか。エマ、索敵をよろしく。」
「わかった。」
3人はロディを先頭に、ナコリナ、エマの隊列で進んで行く。
この隊形、実は森を進む時とは逆だが、今回はダンジョンで、森とは違って魔物が現れる方向が限られている。そのため後方からの索敵でも十分対応可能と判断してロディを先頭にしていた。
ロディも「索敵」を覚えているが、しかしそれではロディの負担が大きくなるため、役割分担としてエマに後方から索敵をお願いしている。
「前方から魔物3体。」
しばらく進んだとき、エマが魔物を捕らえた。3人は歩みを止め一斉に警戒する。
前方からヒタヒタと何者かが近づく気配があり、やがて緑色の肌をした小人、ゴブリンが現れた。ゴブリンはそれぞれ棒のような武器を持っていた。
「ダンジョン初戦闘だ。気を引き締めて行こう。」
ロディは2人に力強く声をかけた。




