第8話 ロディ、・・・カッコヨカッタ
「双方とも、そこまでにしなさい。」
不意を突かれたように声の方を見ると、そこには眼鏡をかけたギルド職員が立っていた。
「フェルマーさん・・・。」
ロディは身構えを解いて、職員の名を口にする。
「ギルド内で武器を使うことは禁止されています。わかっていますか?」
フェルマーはそう言って視線をおろしてゴルザの手元に向け、それに気付いたゴルザは慌てたように手を柄から離した。
「口論もほかの冒険者に迷惑になります。お気づきですか。皆さんに見られていますよ。」
そういわれてロディ達6人が周りを見回すと、当然のごとく多数の目が彼らに向いているのが分かった。
言い争いの最中はそれに気づくことは無かったが、いったん気づいてしまうとどうしても衆目の視線が気になってくるものだ。
「チッ、気が抜けちまった。命拾いしたな。」
ゴルザはそう言って、バツの悪そうな顔とともに踵を返し、3人はギルドを出て行った。
彼らが見えなくなってから、ロディはようやく緊張を解いて体の力を抜いた。
「ふー、なんとか去ってくれたか。・・・フェルマーさん、ありがとうございます。」
「いえいえ、職員として当然のことを言ったまでです。」
ロディはフェルマーに礼を言い、フェルマーは少し微笑んで返した。
「二人とも、怖くなかっ・・・わっ」
ロディが振り返って2人を確認しようとした時、エマとナコリナがロディの両腕に抱きついてきた。
「お兄ちゃんすごい。とてもかっこ良かった。」
エマはとても嬉しそうにロディに腕を絡めてくる。
ナコリナも珍しくロディにくっついて来て、上目遣いで話してきた。
「私たちの為にありがとう。あんなに言い返して、びっくりしちゃった。ロディって、ちょっと変わったわね。」
「そう?」
「以前に比べてたくましくなって、毅然としていて、それに・・・・・・・・・・・カッコヨカッタ」
ロディはナコリナの最後の言葉が小さくて聞こえなかった。彼女を見ると、少しうつむいてて表情が見えず、心持ち頬が赤い。
(顔が赤いな。あの3人組に相当怒ってたんだな。)
ナコリナの様子を勘違いな方向に納得するロディ。
「お兄ちゃん、怖くなかったの?」
「ああ、ダントンと対決した時に比べれば、あんなのどうということはないよ。」
ロディはエマの心配を事も無げに返した。確かにダントンとの対決を経験したロディにとっては、3人いても全く恐怖心を抱かなかった。
『!』
その時、その場を去りかけていたフェルマーがロディの言葉を耳にしてぴたりと止まり、ロディを振り返った。
『・・・』
少しの間ロディを見ていたフェルマーだったが、結局何も言わず、すぐさま何事もなかったかのように歩き出し、カウンターの中へと消えていった。
残された3人だが、エマもナコリナもなかなかロディを放してくれないため、移動することもできない。
(あー、でもこの状態はちょっと困る。右腕と左腕が柔らかいものに包まれて、両腕とも喜んでる。でも動けない。困った。嬉しいけど困った。)
ずっとこの喜びのままでいたい気もするが、今日はダンジョンに行くのでいつまでもこうしているわけにもいかない。しかし、無理に動くと彼女たちに変な刺激を与えてしまいそうで、動けない。
どうしたものかと困るロディ。
(・・・ん?)
『・・・・・・コノヤロウイチャツキヤガッテ・・・・』
『・・・ミセツケンジャネエ・・・』
『・・・モゲロ・・・モゲロ・・・』
(いかん、幻聴まで聞こえてきた。最近こんな幻聴が多いな。疲れてもいないのに変だな。)
「さすがにそろそろ放してくれない?このままじゃダンジョンに行けないよ。」
「・・・そ、そうね。今日の目的はダンジョンだったわ。」
ロディの言葉にはっと自分の状況に気づき、ナコリナはロディの腕を放した。
「えー、もうちょっとこうしていたいのに。」
「わがまま言うんじゃない。」
エマはちょっと拗ねて言ったが、仕方なさそうに腕を放す。
ロディはようやく自由になった。
「さあ、気を取り直して、これからダンジョンに向かうとしよう。」
「「おー!」」
3人はようやくダンジョンに向かうために、並んでギルドを出発した。
その後ろ姿を冒険者たちの多くの嫉妬の視線が追っているのは、仕方のないことだ。
お知らせです。
連休中に思いついて短編を1本書きました。
『体調不良の英雄と呪いの魔剣』全3話です。(1日1話更新)
https://ncode.syosetu.com/n7838hz/
ギャグ寄りの短編で、「ロディ・・」とはちょっと毛色が違いますが、
読んで楽しんでくれたらうれしいです。
灯火楼




