第7話 ロディ、またまた絡まれる
翌朝は気持ちいい晴れで、絶好のダンジョン日和だ。
まあダンジョンに潜るのだから天気は関係ないのだが。
3人は早めの朝食をとってから宿を出て、冒険者ギルドへ向かう。
初級ダンジョンに入るのに申請がいるわけではないのでギルドに寄る必要はないのだが、ついでにちょうどいい依頼があれば同時に受けようかと考えていた。
ダンジョンの掲示板には依頼が張り出されていたが、すでにほかの冒険者が取って行ったためであろう、空いている部分も多い。
「うーん、あんまり良さそうな依頼がないわ。」
エマが少し残念そうな顔でつぶやく。
彼女の言う通り、良さそうな依頼はすでに取られた後のようだ。
「仕方ない。元々ついでだったし、無くても問題ないよ。」
「それもそっか。今日はダンジョンに行くことが目的だし。」
エマも気持ちを切り替えたようだ。
「じゃあ、ダンジョンに向かいましょうか。」
とそこへ、3人の後ろから声がかけられる。
「おやぁ、見ない顔だね。君たち最近ここに移動してきたのかい。」
3人が振り向くと、そこには同じく3人組の男が立っていた。
3人は全員20代後半くらいで、1人は剣士風の装備の男、1人は大きな盾と重厚な鎧を着たがっしりとした体形の男、もう1人は杖を持った魔法師風の痩せた男だ。
前にいた剣士風の男が、にやにやと粘着質の笑みを浮かべながらさらに話しかけてくる。
「俺はCランク冒険者のゴルザっていうんだ。後ろはパーティを組んでるヘンケルとジャイケル。ダンジョンに行くんだったら、せっかくだから2人とも俺たちが一緒について行ってやるよ。」
ゴルザと名乗った男は、金髪をトサカのように上にとがらせた、見た目はまるで典型的な「不良冒険者」だった。
彼らの人数勘定に入っていないロディは、『なんともわかりやすい定番の絡みが来た』と、ため息をつきたくなった。不良冒険者はどこのギルドにも居るだろうが、ここでも絡まれてしまった。ロディは『我ながら運が悪い』と愚痴りたい心境だ。
「案内は間に合ってます。あなたたちの力はいりません。」
そんな3人組に対して、ナコリナは不快そうにあっさりと断る。
が、ゴルザはそれでもなお言い寄ってきた。
「おいおい、そんなヒョロヒョロの男じゃダンジョンでもどこでも役に立たねえよ。悪いことは言わねえから俺たちと一緒に行こうぜ。そんな男よりもダンジョンでも夜でも楽しませてやるからよ。」
3人はさらに下卑た言葉と笑いを顔に浮かべてしつこく絡む。エマもナコリナも明らかな嫌悪感を顔に浮かべていた。
そこに、ロディが3人組に立ちふさがるように前に出てきた。
「俺たち3人はパーティーだ。もう断られたんだから俺たちにかまわないでくれ。」
「なんだぁてめえ。お前には言ってねえんだよ。すっこんでろよ。」
話をさえぎられたゴルザは、不快そうにロディを睨む。ロディはしかし臆することなく話し続けた。
「彼女たちは嫌がってるのが分からないか?完全に嫌われてしまう前に去った方がましだと思うぞ。」
「あぁ!?てめぇ、なにハーレム王子様気取ってんのかよ。俺はお前のような奴が大嫌いなんだよ!」
不良冒険者はロディに顔を寄せて凄んできた。が、ロディには全く怯まない。
ロディは低い声ではっきりと言い放った。
「奇遇だな。俺もお前らのような奴が大嫌いだ。」
この言葉に、3人組は一瞬あっけにとられ、エマとナコリナは目を丸くして驚いていた。
こんな言葉は以前のロディなら口にすることは無かっただろう。だが、ここにいるロディは、以前のロディではなかった。
ロディは幼いころから様々な困難に直面しきた。魔法が使えない。未知のギフト。ダントンの悪意。ギルド長からの暗殺指令etc。
しかし彼はそれらの困難をすべてを乗り越えてきた。魔法が使えるようになり、Bクラス冒険者のダントンを打ち倒し、さらに自分のギフトの有用性を自力で見出した。
その中で、ロディはその肌で学んだことがある。
『向かってくる困難や悪意から逃げたりはできない。毅然として立ち向かわなければ、誰も守ることはできない。』ロディはそう考えるようになった。
そしてメルクーを発つ前、『Aランク冒険者になり、エマとナコリナを守る』と決心した。それが、ロディを精神的に大きく成長させるきっかけとなっていた。
「・・・こいつ、なめやがって。」
ゴルザは顔色を変えてロディを睨み、剣の柄に右手をかけた。
(!剣を抜くつもりか。)
ロディに緊張が走り、すぐ動けるように身構える。
その時、この場の緊迫感を打ち破る鋭い声が響いた。
「双方とも、そこまでにしなさい。」




