第5話 ロディ、ミズマの店を廻る
ミズマに到着して2日目の朝。
朝食をとった3人は、宿を出て街にくりだした。
「最初はどこに行く?」
「まずは備品をそろえたいかな。だから武器屋や防具屋、薬屋、それに魔法陣を作る店にも行きたい。」
「魔法陣の店?ロディが作れるからあまり行かないんじゃない?」
「けど、魔法陣の材料も買う必要があるし、それにこの街の店を見ておくのも勉強になると思う。」
「それもそうね。じゃあ、まずはギルドでその辺の情報を聞いてきましょう。」
3人はギルドに行って、武器屋、魔法陣店、その他の情報を仕入れた。
◇◇◇
ギルドに教えてもらった武器屋は、ギルドにほど近い路地裏にあった。
「ここが武器屋か。」
「なんだかお店っぽくないわね。」
そこは、武器を描いた看板を掲げているため武器屋と分かるが、普通にみれば民家と変わらない作りだ。
「ギルドの紹介だし、変な店じゃないだろう。入ろうか。」
ロディが先頭に立ち、扉を開ける。
中はやはり武器屋だった。さまざまな武器が整然と並んでいる。きらびやかな所はないが、店と武器とが調和している感じの安心感があった。
ロディはこの店の雰囲気が気に入った。
「武器を見せてもらってもいいですか。」
「どうぞご自由にご覧ください。」
店には30代くらいの落ち着いた男性がいた。店主なのか従業員なのかはわからない。静かな雰囲気で、出しゃばって説明してくる様子はない。そういう点も好感が持てる。
3人はゆっくりと武器を見て回る。
ロディは、ふと弓に目を止めた。そういえばエマは「狩人」で弓の適性があるスキルだ。
「エマ、弓を新調しないか?だいぶ前に買ったきりだし。」
「うーん、どうしようかな。ショートソードも使えるからそっちメインでもいいんだけど。」
エマは弓とショートソードで迷っているようだ。
そこへナコリナが意見する。
「今後しばらくはダンジョンで魔物狩りをメインにする予定で、エマちゃんは前衛じゃ危険だからロディが前衛になるでしょ。エマちゃんに後衛か中衛をやってもらう予定だから、弓の方が遠距離攻撃で先制出来ていいと思うんだけど。」
「でも弓の場合、矢のお金が結構バカにならないのよね。」
「森に比べてダンジョン内は使った矢を回収しやすいから、それほどお金はかからないと思うわよ。」
エマはこれまであまり弓を使っていなかったが、それは弓が苦手というわけではなく、どうも矢のお金を考えての事だったらしい。確かに森では矢が無くなりやすいし、魔物に刺さった矢は抜くのに手間がかかる。
しかしダンジョンは狭い空間の為、矢を外してもあとで回収しやすい。それにダンジョン内では魔物を倒したらその死体は消えるらしいので、刺さった矢もあとで拾いやすい。なぜ消えるかはわからないが、それがダンジョンというものらしい。
まだ迷ってそうなエマを、ロディがさらに勧める。
「俺は弓を使ってほしいかな。せっかく弓の適性があるんだし、これから伸ばして行こう。それがエマの為だと思う。」
「・・・そうね、わかった。私はこれから弓を伸ばしていくことにする。お兄ちゃん、お義姉ちゃん、ありがとう。」
「だから字が違う!」
ロディとナコリナの後押しを受けてエマは決心し、喜々として弓矢を選び始めた。どうも本心では弓をやりたかったようだが、お金の面で躊躇していたようだ。
およそ1時間ほどかけてエマは弓と矢を選んで買った。
ロディとナコリナは結局武器を買わなかった。ロディはアーノルドに餞別でもらった剣があるので買う必要が無い。魔法に使う杖も今は不要と考えている。
杖は、魔法の威力を底上げし、魔力の制御もしやすくなる効果があるので魔法師には必須の武器だ。しかしロディは魔法の威力を上げる必要が無い(というより威力を抑えなければならない)し、制御力には自信がある。安い杖では効果のほども知れている。
ナコリナはというと、いろいろと杖を見ていたが気に入ったものが無かったため、結局これまでの杖を使っていくようだ。
◇◇◇
武器屋のあとは、防具屋へと向かった。
この店は大通りに面していて、店内は明るく品数も豊富だった。
さっきの武器屋とは違う雰囲気だったが、初心者でも気軽に入れて価格もリーズナブルなため、なかなか良店だと感じる。
ここでロディは、革製の脛当てとグローブを新調した。
ロディの剣の戦闘スタイルはスピードと技で戦うタイプだ。金属プレートや金属グローブでは重くて動きにくくなるため革製を選んでいる。
エマは弓をメインで使うために手袋を買い、ナコリナは「ちょっと古くなってたから。」といってブーツを新調した。
防具屋を出るとすでに昼前になったため、昼食をとることにした。
入ったところはギルド近くの店で、すでに冒険者たちでにぎわっていた。
3人がそれぞれ注文をし、食事をしていると冒険者のうわさが聞こえてくる。
いろいろな話が聞こえてきたが、昨日聞いた火事の話もやはりそこかしこから聞こえてくる。
3人は、おしゃべりをし、時には聞き耳を立てながら有意義な昼食の時間を過ごした。




