第4話 ロディ、噂話を聞く
『!』
ロディは驚いて、ちぎったパンを口に持っていく手を急停止した。
(なんだって!?魔法陣の研究者。それに人体実験って・・・・。)
ロディはその冒険者たちの会話に集中して耳をそばだてる。
エマとナコリナもどうやら聞いていたようで、会話をやめて冒険者たちを気にしている。
「何だいその魔法陣で人体実験って。」
「詳しくは分からねえが、魔法陣をいじくって、それを誘拐してきたやつらに試していたらしい。」
(!魔法陣をいじる・・・つまり改変か!)
ロディは自分自身が「魔法陣の改変」をしている手前、ドキリとする。
「魔法陣をいじくるのって、禁止なんだろ。」
「おめえ馬鹿か。魔法陣より人体実験の方がマズいに決まってるだろ。」
「なんだぁ、馬鹿とは何だ馬鹿とは。」
「本当の事じゃねえかよ。うっせえな。」
「んだとぉ。」
どうやら酒が入っているらしく、会話が一気にきな臭くなってきた。
ロディはエマたちに目配せし、二人は無言で頷いた。
それからの食事は、会話はあったものの3人ともどこか上の空で、食事を終えた後は食堂の喧騒から逃れそそくさと自室に戻った。
◇◇
部屋に戻った3人は、無言でそれぞれのベッドに腰掛けた。
「なんだかすごい事件があったみたいだね。」
ロディが沈黙を破って、さっき聞いた噂話をする。
「街の近くの山の中で火事があったとか。」
「どうも誘拐犯が人体実験して、捕まりそうになって自殺したって。」
「魔法陣改変もね。」
「「!」」
ロディの言葉に、エマとナコリナが驚く。さっきの会話の中で二人はわざと魔法陣の話は省いていた。
二人の気まずそうな顔を見て、ロディは笑って言った。
「気にしないで。自分が魔法陣を改変しているのは覚悟の上だから。その話から逃げるわけにはいかないよ。」
ロディとしては、変に遠慮して魔法陣の話を避けてほしくはなかった。自分は「正しい魔法陣」に導いてくれるギフトを信頼している。こそこそ話されると、やましいことをしているように感じるため、普通に話してほしかったのだ。
「・・・そうね。変に気遣ったら、逆に気になるわよね。ごめんなさい。」
「謝らなくてもいいよ。俺を気づかってのことだから。」
3人は魔法陣の話で遠慮しないことを約束して、落ち着いて事件のうわさを話し合った。
「でも、いるんだね、魔法陣をあれこれ研究してみたい人が。」
「一般の人でも魔法陣を研究してる人もいるらしいよ。さすがにやりすぎで犯罪になる人はほぼいないけど。」
魔法陣はやはり古代文明の神秘なので、魔法陣のことをもっと知りたいと欲する人は一定数いるだろう。
しかし、そういう人がいるにもかかわらず、魔法陣の研究はほとんど進んでいないという。100年も新たな魔法陣が発見されていないのも、よくよく考えれば奇妙な話だ。
規則で縛りすぎているのか、それともほかに原因があるのか。
「今回の事件でお兄ちゃんが気を付けることってあるかな?」
エマが心配そうに聞いてくる。
「この話は大きな事件だけど、私たちが関係しているわけじゃないし、さほど気にする必要はないんじゃない?」
ナコリナはそんな心配ないとエマを安心させるように言う。確かにこの街に来たばかりの自分たちは事件には全く関連が無い。
「そうだね。でも魔法陣の事は気になるし情報は集めておきたいかな。」
「じゃあ、明日は生活とかダンジョンとかの準備を整えながら、街を散策して情報を集めたらどう。」
「そうね。まずは街を知りたいし、ここで買えるものを知っておく必要もあるから、散策するのも悪くないわね。」
「おいしいお店とかも見つけたいな。」
「「賛成!」」
ということで、明日は街を巡ってみることに決定し、3人は風呂に入った後早々にベッドにもぐりこんだ。




