第2話 ロディ、ミズマのギルドに行く
メルクーの街を出発したロディ、エマ、ナコリナの3人は、2日間の馬車の旅ののち、最初の目的地のミズマの街に到着した。
馬車を降りた3人は、手足を伸ばして旅の終わりを実感する。
「やっと着いた!これがミズマの街!」
中でもエマは初めて訪れるせいか、やや興奮気味にきょりょきょろ辺りを見まわしている。
「いろんな店がいっぱい。品物も見たことないのもあるし、人も多い。こんな街、初めて!」
メルクーの街とはその質も量も違うミズマの賑わいに目を輝かせているエマ。
「興奮するのも分かるけど、先にやるべきことをやっちゃわないとね。」
「そうだな。まずはギルドに行って、到着と所属返答の手続きをしよう。」
「分かった。」
3人は連れ立って冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドは街の中心からやや西寄りにあった。これはダンジョンがこの街の西側にあるため、利便性を考えてのことだという。
冒険者ギルドはメルクーの2倍くらいの大きさの建物だった。
「うわー、大きい。さすがミズマの冒険者ギルドね。」
「そう。所属冒険者の数も大体2倍くらいだね。」
「ふーん。でも街の規模に比べたら冒険者の数はあんまり多くなくない?」
「よく気付いたわね、エマちゃん。その通り。街の規模から行くとギルドはそこまで大きくないのよ。」
「なんでなの?」
「そこは元ギルド職員のお兄さんが説明してくれるわ。」
「そこまで言って丸投げ!?」
ロディは仕事を押し付けられて嫌な顔をしつつも、エマに説明する。
ミズマの街の冒険者ギルドの所属員が比較的少ないのは、簡単に言うと『冒険者としてのうまみが少ない』ためだ。
冒険者の稼ぎとしては、「護衛」「採取」「害獣駆除」などの依頼のほかに、ダンジョンや森での魔物討伐とそれに付随する素材や魔石の売買が主なものだ。
ミズマの周辺には森は少なく、そのため採取や魔物の討伐も実入りが少ない。
ではダンジョンはどうかというと、この街の西にあるダンジョンは、ランクから言うと『初級』ダンジョンだ。
ダンジョンにはざっくりと4つの区分がある。『初級』『中級』『上級』『特級』がその4つだ。
『初級』冒険者ランクC以下が推奨、『中級』はEランク以下は不可でDからBランクまで推奨。『上級』はCランク以下は不可でBランク以上推奨となる。
『特級』ダンジョンだけは国が管理していて、Aランク以上でないと入れないことになっている。
ミズマのダンジョンは『初級』のため、魔石や素材もそれなりの物しか得られない。つまり冒険者ランクが上がると稼ぎを求めてミズマを出る者が多くなり、そのため冒険者の数が比較的少ないのだ。
「なるほどね。でも今の私たちだったらランク的に初級ダンジョンがいいわけね。」
「そう。それがミズマに来た一番の理由だよ。」
「どう、エマちゃん分かった?」
「うん、分かったよ。」
「いや、俺が説明したんだが・・・。」
ちゃっかりと手柄を横取りされたロディはナコリナに文句を言う。
「気にしない気にしない。さ、早くはいらないと夕方になって冒険者が戻ってきちゃうよ。」
「・・・そうだな。早く行こう。」
ナコリナにうまくごまかされながら、3人は冒険者ギルドへと入って行った。
冒険者ギルドに入ると、すでに依頼を終えてカウンターに並ぶ冒険者が多くいた。しかし夕刻にはまだ間があることもあって、ごった返すほどではない。
ロディたちは依頼達成、素材買取とは別のカウンターに向かう。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか。」
カウンターには眼鏡をかけた40代くらいの男性がいた。
「冒険者の所属移動登録に来ました。」
「ようこそミズマへ。私はフェルマーと言います。では冒険者カードを拝見します。」
フェルマーの物腰柔らかな挨拶に3人はともに非常に好印象を抱いた。
3人は冒険者カードを提出し、フェルマーはそれを確認すると何やら書類に書き込んでいた。
そしてカードを返却しながら言った。
「Dランク、ロディさん。Dランク、ナコリナさん。Eランク、エマさん。ミズマでの登録が完了しました。これから宜しくお願いします。」
フェルマーの所作から、ここミズマの冒険者ギルドの規律がきちんとしているのがわかる。まるでユースフがいたころのメルクーのギルドのようだ、とロディは感じた。
少し前までのデルモス時代のメルクーのギルドはひどい状況で、それが職員の規律にも現れていた。だがミズマはそれが見られない。それだけでもミズマを選んでよかったとロディは思った。
「何か質問はありますか?」
最後にフェルマーが尋ねてくる。
「そうですね。後で聞くことが出来たら質問に来ます。さしあたっては、宿を紹介してほしいんです。」
「条件はどのようなものでしょう。」
「1人1泊大銀貨1枚以内で朝昼の食事つき。それと浴場がある所がいいですね。」
「少々お待ちください。」
フェルマーが席をはずして後方の棚を開き、しばらくして紙をもって戻ってきた。
「その条件ならば2件紹介できます。こちらがその宿です。」
2枚の紙を渡されたロディの後ろから紙を眺めていたナコリナは、そのうち1枚の紙を指さして言った。
「この宿屋、知ってるわ。」
「ナコリナ、泊まったことあるの?」
「その宿は料理がおいしいって評判よ。料金もリーズナブルだし。何を隠そう、私がミズマに泊まるときの定宿よ。」
「え、料理がおいしいの?」
料理と聞いてエマが食いついてきた。エマは料理好きなのだ。
「エマちゃんの腕と遜色ないくらいおいしいわ。」
「ナコリナとギルドの推薦なら間違いないな。そこにしよう。」
3人は対応してくれた職員に礼を言ってギルドを出た。
「さ、急いで宿に行かないと部屋が埋まっちゃうよ。」
「大変。すぐ行かないと。」
「わ、ちょっと待ってくれってば。」
エマとナコリナは急いで宿に向かい、ロディは2人を見失わないように慌てて追いかけていった。




