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第1話 ロディ、ミズマの街に到着する

 初秋の明るい日差しの中、森の中の街道をトコトコと進む乗合馬車があった。

 この馬車には御者以外では8名が乗っていた。うち二人はこの馬車の護衛で冒険者のいでたちをしている。

 残る6人のうち3人は家族のようで、男女の大人2人と男の子1人が寄り添って座っている。

 そして残る3人は男1人女2人で、いずれも年若く10代だろう。こちらもグループらしく、3人で近寄って座っている。


「そろそろ森を抜けるころだ。抜けたらすぐにミズマの街が見えるよ。」


 10代の男性がそう言うと、女性のうちの1人がそれに応える。


「へー、やっと着くのね。楽しみだなー。」


 するともう一人の女性も会話に入ってくる。


「街道に少し小高いところがあって、そこからミズマが一望できる場所があるわよ。」

「え、本当!?見てみたい。」


と言って、幌から身を乗り出して前方を見る女性。

 男性は笑いながら


「まだ早いよ。そそっかしいなあ、エマは。」


と、たしなめた。


 3人の名前は、男性がロディ、女性がエマとナコリナという。

ロディとエマは兄妹で、ナコリナはエマにとってのお姉さん的な存在といえる。なお、本人がどう思っているかは分からない。

 彼らは冒険者として旅をするためメルクーの街を出て、ミズマの街に向かっている途中だった。


「ミズマの街は、メルクーの3倍は大きいから、見たら驚くわよ。」

「へー、3倍か。ますます楽しみ。」


 3人のうち、ロディとナコリナは魔法陣製作士の試験の時などでミズマに来たことがある。しかしエマは、依頼で近隣の村に行ったことはあるが、本格的な街に行ったことはなかった。なのでミズマに行くのを一番楽しみにしている。



 馬車が森を抜け、しばらく進んだころ、


「そら、ミズマが見えてきたぞい。」


と、御者がのんびりした口調で教えてくれた。どうやら先ほどの会話を聞いていたらしい。


「本当!」


 言うが早いか、エマが馬車の前の方に向かう。それと一緒に、家族連れの男の子もエマと同じように前に向かった。この子も楽しみにしていたのだろう。台車から御者席へ身を乗り出している。


「わー、あれがミズマの街。すごい・・。」


 エマはそれだけ言うと、あとはただ街の全景に心を奪われたように眺めていた。


 ミズマの街はメルクーの街より3倍は大きい。さらに大きいだけでなく、メルクーの街には無い城壁が街をグルリと囲んでいる。規模だけでなくその存在感もミズマは圧倒的だった。

 ミズマの南側、つまり馬車のいる側には大きな川が大地に横たわるように東西に流れていて、そこから一部支流を作るように街の東側から北側を通り西側へ水をめぐらせ、天然の川堀で取り囲むようにしている。

 そして街の周辺は見渡す限りの麦畑が広がっている。ちょうど今は麦穂が黄色く色づいていく季節だ。

 黄金色の麦穂の中にたたずむ、水に囲まれた街。それがミズマだった。


「この時期に来たことが無かったけど、これは壮観だね。」


 エマの横からロディもその景色を見て素直に称賛する。季節によって見せる顔が違うため、何度来ても新たな発見がある。ミズマは魅力的な街だ。


「あと小一時間ほどで着くから、それまで景色を楽しんでおくんだぞい。」


 御者が振り向いて笑顔で言う。ひげ面の男だが妙に愛嬌があって、怖い顔とは思えない。男の子も怖がっている様子はなく、素直に「うん!」と返事をしていた。


 彼らを乗せた馬車は、色づく麦穂を左右に見ながら、のんびりといった風情でミズマの街へ進んで行った。

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