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第55話 ロディ、新たなる道へ

 ロディがAランク昇格を目標に旅に出ることになり、三人はそれに沿って準備をする。


 Aランクになるために、ロディの強力な修正魔法の使い方を訓練する必要がある。しかし修正魔法は秘密にしておかなければならない。必然、3人だけでパーティで依頼をこなしていかねばならない。困難ではあるがやっていくしかない。


 また依頼だけじゃなく、戦闘技術の向上のためにダンジョンや遺跡などの探索をやっていこうと決めた。

 ダンジョンはお金を得る手段としても有効だ。魔物の魔石やドロップ品、鉱物、それにまれに宝箱など落ちている場合もあり、危険は伴うがそれだけ実入りがいい。魔法陣作成には少なくないお金が必要だ。そのためにもダンジョン探索は欠かせない。


「そういえばナコリナは陣士試験は・・・」

「それは言わない約束でしょ!」


 ナコリナはふくれっ面をロディに向けて抗議する。ナコリナはまだ魔法陣製作士に合格していない。狭き門であることもさることながら、今回の一連の騒動の影響で勉強時間が足りずに前回の試験をパスせざるを得なかったのだ。


「ごめんごめん。」

「見てなさいよ。次回は必ず合格して見せる。・・・だからロディ、勉強を教えてね。」

「わかった。出来る限り協力するよ。」


 ロディはナコリナの陣士試験の協力を約束した。


 魔法についても3人で話し合った。

 その結果、今後の旅やダンジョンの事を考えてロディの使える魔法を増やすことが一番だということになった。


「悔しいけどロディの魔力量は私よりはるかに大きいわ。ロディに魔法を覚えさせてもらって、たくさん使ってもらえばランク上げにも有利ね。それに、いろいろな魔法が使えれば何かと便利だし。」

「なんだか便利屋みたいだな・・。」


 ロディは愚痴るが、魔法をたくさん覚えるのはむしろ望むところ。

 ただ魔紙もインクもお金がかかるし、作製のための時間も有限だ。そのため覚えるべき魔法は選ぶ必要がある。

 そこで、旅に出る前にロディが覚えるべき魔法を三人で選び出した。


 まず戦闘系の魔法で、「ファイヤーアロー」「ストーン」「ブラスト」「剛力」「俊足」「剣術」を選んだ。そのほかでは「索敵」「クリーン」「魔物よけ」「暗視」「植物採取」「鑑定」「トーチ」「ライト」「キュア」「魔力感知」「威力減少」を覚えることになった。


 「ファイヤーアロー」「ストーン」「ブラスト」はそれぞれ火、土、風魔法だ。ファイヤーアローは火矢を、ストーンは石礫を射出する。ブラストは突風を一直線に発生させる。

 「剛力」「俊足」「剣術」は名前の通りそれぞれの身体技術を向上させるものだ。

 「キュア」は弱い毒や状態異常に対する備えとして。

 「索敵」「魔物よけ」「暗視」「トーチ」「ライト」「魔力感知」は探索時や休息時などに必要。

 「植物採取」「鑑定」はギルドでの採取依頼のためにそれぞれ取得した。

 「クリーン」は、体を簡易に洗浄する水魔法だ。使用するとシャワーを浴びたような感じになるらしい。必要魔力は結構大きく中級魔法に相当するのだが、取得者は意外に多く、特に女性冒険者はほぼ100%といっていいほど取得しているらしい(もちろんエマもナコリナも取得済)。

 ロディは取得していなかったが、「「絶対に取得して!!」」と二人に左右からステレオみたいに言われては、断るなんて選択肢はなかった。


 覚えた魔法のうち、「威力減少」「魔力感知」は魔法陣全集に載っていない。この2つはグライムス氏から引き継いだ資料の中の不完全な魔法陣の中にあり、それをロディが修正して復活させたものだ。

 他にもいくつか修正可能な魔法もあったが、すべてを取得するにはお金も時間も無いため、ひとまず2つに絞ることになった。


 ちなみに威力減少魔法は『これ必要か?』とロディは思ったが、ナコリナから『ロディの魔法は初級でも威力がとんでもないので、疑われないためにも絶対必要だ。』と主張された。

 魔法を手加減できるようになれば、例えばファイヤーボールでも普通のファイヤーボールくらいに抑えることが出来て、それならば人前でロディが魔法を使える。

 街を出ればロディが魔法を使えなかったことを知る人はほぼいないから、「普通の」魔法なら使ってもおかしくはないだろう。確かに取っておいて損はない。

 ロディは威力減少を使って「普通の魔法」で魔法を練習することにした。


 あとはできるだけ薬やその他の道具を収納に入れておくことでカバーする。

 収納は本当に優秀だった。生物以外なら何でも入り、自由に出し入れ可能、魔力も出し入れ時に使用するだけで、入れてる間はほぼ魔力不使用という、いわば壊れ仕様。

 これがあればダンジョンであっても山や森であっても探索が大幅に効率化されるのは確実で、冒険者だけでなく商人なども絶対欲しいものだろう。

 3人はグライムス氏に再度感謝するのだった。


◇◇


 準備が整い、季節は秋が近づいてきたころ、いよいよロディたちが旅立つ日が来た。

 ロディたちの家はすでに空になっていて、あとに残す物はない。


「じゃ、ギルドにあいさつに行ってくる。」

「「行ってらっしゃい。」」


 朝早く、風通しのよくなった家を出て、ロディはエマとナコリナに見送られて冒険者ギルドにやってきていた。


「皆さん、長い間本当にありがとうございました。」


ロディは周りに集まった職員に別れの挨拶をした。


「ロディ、元気でね。寂しくなるわね。今更だけど、本当はずっとこのギルドに残ってほしかったわ。」


 リーセが少し寂しそうにしながらロディに言葉をかける。

 彼女は、ロディがギルドをやめて旅に出ると聞いた時一番悲しんでいた。リーセとしては、弟のように思っていたロディが冒険者になるのが心配なのだ。


「おいおいリーセ。そんな言葉じゃ別れづらくなっちまうだろうが。昨日のお別れ会でもさんざん言っただろ。」

「でも・・。」

「そのくらいにしとけよ。」


 アーノルドがリーセをたしなめながら前に進み出た。


「これは俺からの餞別だ。」


 そう言ってアーノルドは一振りの剣を取り出してロディの目の前に差し出す。


「これは・・?」

「俺が昔冒険者だったころにダンジョンの宝箱から出てきた剣だ。冒険者として生きていくんなら、剣はいくつあってもいいだろ?」


 アーノルドから剣を受け取ったロディは、鞘から少しだけ剣身を出した。剣は輝くように光を反射しており、見るからに高価なものとわかる。

 ロディはその件の材質に気付いて、驚いてアーノルドを見る。


「この剣、もしかしてミスリルですか?」


 ミスリルは鋼鉄より頑丈で高価だ。なにより魔力が浸透しやすく付与魔法と相性がいいため、冒険者に限らず人気の材料だ。ロディも何度かミスリル素材の剣や防具を見たことがある。


「そう、ミスリルだ。付与はねえけど素材だけでも一級品だ。一度も使ってねえから新品同様だぞ。」

「こんな高価なもの、頂いてもいいんですか。」

「俺にはちと軽くて使いづらいんだ。冒険者も引退しちまってるし、剣も家に置いておくよりは使ってもらった方がいいだろう。遠慮なく受け取りな。」

「・・・わかりました。ありがとうございます。大切にします。」


 ロディは頭を下げてアーノルドの厚意に感謝した。


「じゃあ馬車の時間もありますので、これで失礼します。皆さんお元気で。」

「頑張れよ」

「ケガしないようにね。いつでもこの街に帰ってきてもいいんだからね。」


 暖かい職員たちの声を背に受けながら、ロディは6年に渡り仕事場としてきた冒険者ギルドを後にした。




 馬車の乗車場に向かうと、そこにはすでにエマとナコリナが待っていた。


「あ、お兄ちゃん。」


ロディに気づいたエマが手を振る。


「ごめん、遅くなったかな。」

「遅いわよ。待ってる間に2回もナンパされたんだから。」

「え、ナンパ?」

「そ。しつこい人もいて追い払うのに苦労したわ。」


 確かにエマとナコリナはロディから見てもかなりの美少女だし、二人で居ればいやでも目をひくだろう。

 ロディがあたりを見回すと、あからさまに不機嫌な顔で視線を逸らす男がちらほらいた。


『なんだあいつ、うらやましい・・。』

『リア充か?リア充なのか!?』

『モゲロ』


 なんだか幻聴が聞こえてきたが、気のせいだと思うことにした。


 3人はひとまず南部の中心都市ミズマへと向かう予定だ。ミズマはメルクーよりも大きな都市であるため、ギルドも大きくその分依頼もたくさんある。近くにダンジョンもあるためひとまずの拠点としてお金を稼いだりランクを上げるのに都合がいいだろうと考えた。


「ミズマ行きの馬車は・・・。」

「あそこね。もう来ているわ。」


 ナコリナが指さす方向を見ると、2頭立ての馬車が止まっていた。以前ミズマに行くために乗ったものと同じような大きさの馬車で最大12人乗れる。すでに5人乗っていて、うち2人は護衛のようだ。


 3人は代金を払って馬車に乗り込んだ。


「よーし、時間だから出発するぞ。」


 御者の人が馬車の中に向かって声をかける。そして馬の手綱を動かすと、馬車はゆっくりと動き出した。



 馬車は街中を抜けて、やがて城門に至り、さらに城門を抜けて街の外に出て街道を進む。


 街がら少し離れてからロディは馬車の幌の後ろからメルクーの街をふり返った。ここから街全体が一望できる。

 朝日は少し高く上り、メルクーの街を余すところなく照らしている。


(さようならメルクー。さようならみんな。また帰ってくる日まで。)


 ロディは18年住んでいた街を眺めて感慨にふける。

 ふと左右を見ると、エマとナコリナも黙ったまま街に目を向けていた。


 ロディは席に座り直し、そして目を閉じた。


 馬車はガタガタと揺れながら、急がずゆっくりと街道を進んで行く。旅立つ3人の希望と不安とともに。


―――---第2章 了------

◇◇◇◇

 ここまでで第2章 完了です。ロディの話はここで一区切りです。

お読みいただき、ありがとうございました。

楽しんでもらえたでしょうか。


ブックマークやご評価いただけましたら嬉しいです。

また、知人に作品を紹介いただけたら、さらに嬉しい限りです。


 ここまでの話は、書き溜めてから投稿を開始しましたので、ラストまで一気に投稿できました。

 ラストでロディはメルクーの街を飛び出しました。これからのストーリーは、旅先で大活躍(?)する予定です。今後のプロットは頭の中に(大まかですが)ありますし、続きも書き始めています。

 しかしこれまでのように連続投稿は難しくなります。

 2日で1更新を、出来れば1日1更新を目標に、投稿を継続したいと思っていますので、良ければ見に来ていただきたいと思います。

 今後ともよろしくお願いします。


 灯火楼

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