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第42話 ロディ、ダントンを倒す

 ロディのファイヤーボールを見たダントンは驚いたように目を見開いた。


「ファイヤーボールか。てめえ魔法が使えるようになったってのか?」

「おかげさまでね。」


 魔法に驚いていたダントンだったが、すぐに笑って言った。


「だがさっきも見ただろう。俺にそんな魔法は通用しねえ。無駄なことはやめな。」

「じゃあ試してみようか。」


 ロディはダントンに向かって腕を振り、火の玉を打ち出す。

 とたん、瞬きする間もなく高速で飛来するファイヤーボール。先ほどのナコリナのそれとは比べ物にならないスピードでダントンに一瞬で迫る。


「!」


 あまりの速さに慌てて避けるダントンだったが、避けきれず左腕に直撃する。その瞬間左腕は炎に包まれる。


「ぐわっ」


 あまりの熱さに叫び声をあげてのたうち回るダントン。


「クソッ、熱い、消えねえ。普通のファイヤーボールじゃねえ。なんだこいつは。」


 しばらく後、やっとのことで火を消しダントンはロディを睨む。左腕は焼けて防具はすでになくなり、皮膚は黒焦げていたが、まだ腕は動くようだ。が、先ほどまであったダントンの余裕の表情は今やもうどこにもない。


「そういやてめえ陣士だったな。中級魔法か?」

「・・・かもな。俺の魔法は『必殺技』なんだよ。」


 中級魔法と勘違いしてくれるならそれでいいかとロディは考え、訂正はしなかった。


「チッ、俺様にこんな傷を負わせるなんで、許せねえ。」


 ダントンが怒りの目でロディを睨む。


「許せないのは俺も同じだ。」


 こいつは、鑑定の儀の時に自分を貶めようとした。何より、ナコリナを傷つけ、エマを辱めようとしている。


「次はこれを受けてみろ。」


 ロディはダントンに向かって腕を振り、エアカッターを高速で放つ。

 ダントンは、見えないが何かが来ると思い、とっさに体を硬化して両腕でガード体勢をとる。


ギィン!


 金属音がしてエアカッターがはじかれたのはさっきと同じだが、違う点があった。ブロックしていたダントンの腕に切り傷が入り、血が流れだしたのだ。


「な。・・・エアカッターで俺の体に傷がつくはずがねえ。これも中級か。」

「何回か味わったらわかるかもな。」


 言うが早いか、ロディが立て続けにエアカッターを放つ。ダントンの体にいくつもの切り傷が出現し、血がしたたり落ちる。彼の防具はエアカッターが当たったところは切り刻まれていた。

 しかし、さすがのロディのエアカッターでもダントンの体深くに傷をつけることは出来なかった。


「・・・お前の「大剛力」ってギフト、すごいな。」

「なんだそりゃ。皮肉か?」

「いや、本心だけど。」


 その言葉通り、ロディは「大剛力」のギフトに驚いていた。ロディが魔法のお試しを行った時に見た威力は計り知れないものだった。しかしダントンはその魔法に耐えている。

 ロディの魔法はダントンのギフトにやや優勢だが、決定的に上回っているわけではない。


(これは、並みのギフトじゃとてもかなわないな。レア中のレアギフトだというのもわかる。)


 ロディは魔法をやめ、そこにダントンが猛然と突っ込んできた。距離が空いていては魔法を一方的に食らうだけなので、接近戦を挑むのは正しい判断だった。

 が、ロディは落ち着いていた。ダントンがたどり着く前にロディの目の前には土壁が出来ていた。サンドウォールだ。

 土壁を見たダントンは、大剣で力まかせに壁を切りつける。


「うおーーー!」


ガツッ、ガツッ、ガツッ、


 ダントンが雄たけびを上げて壁に大剣を叩きつけること数回、壁はようやく崩れ落ちた。

 だが、壁の向こうにロディはいなかった。壁に手間取っている間に再度距離を取っていたのだ。


(壁も壊されたか。ほんとにとんでもないギフトだな。)


 戦況を押し戻すことは出来たが、ロディのどの魔法もダントンに致命的な打撃を与えることが出来ない。エアカッターは深く入らないし、ファイヤーボールは左手が動くところを見ると致命的な打撃を与えられていないようだ。大剛力ほどのレアギフトに対応するには”初級”魔法では荷が重いのだろう。


(どうすればいい、あとは・・・そうだ!)


 一策を思いついたロディは、再び剣を手に取る。


「お、魔法はもうやめたのか?」

「そうじゃないが、ちょっと考えがあってね。」

「いいじゃねえか。」


 魔法より剣の方がやり易いと考えたからだろう、ダントンはにやりと笑って剣を構えた。そして即座に剣を振るって襲い掛かってきた。同様に大剣をいなすロディ。

 ロディとダントンは数合斬り合い、二人の間合いがジリジリ近づいてきた時、フッとロディが間合いを離れ、それと同時に魔法を唱えた。


「ウォーターボール!」


 ロディが魔法を中断し剣で戦ったのは、ダントンがウォーターボールを絶対よけきれない位置まで接近するためだった。

 魔法で形成された水球は直径50cmほど。それが近距離にあったダントンの顔を覆った。


「!ガボッ」


 いきなり顔を水に覆われたダントンは少しもがいて口から空気が漏れていたが、しかしすぐに息を止め、ゆっくりと剣を構えなおした。

 ウォーターボールの持続時間は短い。それを知っていたダントンは、息を止めてウォーターボールが下に落ちるのを待ってから再び動き出すつもりだった。


「・・・・」

「・・・・」

「・・・・!?」


 ダントンの顔を水が覆ってすでに30秒、しかし水球が崩れる様子が無い。

怪訝そうな顔をしたダントンがロディを見る。


「驚いているようだが、俺の魔力量はかなり多いからしばらくは水は消えない。そうだな、大体1時間以上はそのままだぞ。」


 1時間以上息を止めていることなんてできるはずが無い。

 ダントンは慌てて顔の前の水を掻き出す仕草をしたが、もちろんそれで水が離れるわけがない。


「ガバッ、ゴバアアア、・・」

「何言ってるかわからないよ。」


 怒りと焦りに満ちたダントンの口が動いていたが、くぐもってよく聞こえない。


「まあ俺を倒せばその水は消えるんだけどな。でもそうはいかない。」


 ロディはそう言って、ダントンとの間にサンドウォールをつくった。


 このままでは窒息してしまうが、術者を倒せば水が消える。

 ダントンは速攻でロディを倒す決心をし、水に顔を覆われたまま剣を壁に激突させる。数合ののちようやく壁を壊したが、ロディはすでに後方に移動していた。

 ダントンがダッシュで追いすがるが、またもロディは壁を作る。

 壁を壊すのは時間がかかる。ダントンは壁を壊すことをあきらめ右から回り込もうとする。しかしロディはそれも読んでいたのかすでに距離を取り、三度壁を作っていた。

 壁があれば回り込む分時間がかかる。ロディの立てた戦略だ。


 ダントンが追い、ロディが逃げる。これがおよそ1分間続いたころ、ついにダントンに限界が来た。


「ガボゥアァ!」


 ダントンがゴボゴボと大量の空気を口から吹き出し、剣を取り落として喉をかきむしったかと思うと、手の動きが徐々に止まり、そのままうつぶせに倒れ込んだ。


 ロディはしばらく身構えていたが、ダントンは気絶して起きることはなかった。それが分かり、ロディは構えを解いて、フーッと大きく息をついた。


「・・・終わった。」


 ロディはついにダントンを倒したのだ。

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