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第41話 ロディ、決心する

 ロディと向き合っていたダントンが、おもむろに大剣をブンブンと振り回し始めた。準備運動を行っているかのようだ。

 ロディも気合を入れ、剣を構えなおした。

そこへ、


「身体強化!」

「!」


 ナコリナがロディに魔法を掛ける。

 ロディは驚いてちらりとナコリナをみると、彼女はニコッと笑って「頑張って」とささやく。

 身体強化魔法は魔力での身体強化よりも効果は高いが使用する魔力も多い。これまでも魔法をかなり使い、さらにまたロディにバフ魔法をかけると、ナコリナの今の魔力量ではかなりの負担だ。

 しかしこのままでは勝てないと考えて強力な魔法を使用する選択をしたのだ。


「ありがとう。」


 ロディはナコリナに笑い返した。


(絶対勝たなきゃな)


 ロディは決意も新たにダントンを見つめる。


 振り回していた大剣を構えなおしたダントンは、フッと息を吹くと、


「行くぜ!」


の声と共に一瞬でロディに迫った。それを迎え撃つロディ。


ガキン、ガキン、ガキン


 ダントンは大剣を縦横無尽に振り回す。真正面で受けれるような剣圧ではない。まともには受けられないと考えたロディは、大剣をいなして勢いをそぐことを主眼に剣を振るう。


1合、2合、・・・5合、6合・・・10合、11合・・・


 アーノルドに教わってきたロディは、剣技ではダントンに勝る。ダントンは我流でとにかくパワー頼みの剣を振るう。


 傍から見れば互角の戦いを繰り広げているように見える。

 が、ロディは焦っていた。ダントンの剣は、受け損なえばそれだけで致命傷を与えるくらいに強力なものだ。それをミスなくさばかなければならない。ロディは神経をすり減らしながら剣を振るう。


(まずい、躱してはいるがまともに攻撃することが出来ない。このままではじり貧だ。)


 そこに、ロディの焦りを見透かしたかのようにダントンは剣のパターンを変え、剣を引いて突きを繰り出してきた。


「うっ」


 意表を突かれたロディは全力で何とか突きを躱す。が、その隙をついてロディの懐に入ったダントンは、右手を剣から離し顔面にパンぴを繰り出す。


「くそっ。」


 顔の前に来た拳を、剣を持ったまま両手でブロックするロディ。

 次の瞬間、ロディは右わき腹に強い衝撃を受けた。


「ガッ・・」


 パンチは受けきれたが、即座に繰り出された回し蹴りは避けきれなかった。

 わき腹に蹴りをまともに食らったロディは横に吹っ飛び、雪煙を巻き上げながら転がる。


「ロディ!」


ナコリナはロディに駆け寄ろうとするが、


「おっと、そうはさせねえ」


ダントンが一瞬の加速でナコリナに迫る。

目の前に現れたダントンに驚きながらも魔法を繰りだろうとするナコリナ。


「!!ファイヤー・・・」

「させねえよ。」


 ナコリナが魔法を放つより早く、ダントンの拳がナコリナの腹部を殴りつけた。


「・・・っ!」


 声を出すことも出来ず、ナコリナの瞳は光を失っていき、そして糸が切れた人形のようにだらりと力なく倒れる。


「ナコリナ!」


 その光景を目の当たりにしたロディは、倒れたままの姿勢で叫んだ。

 ナコリナを無事に返すと約束したのに出来なかった。ナコリナを傷つけてしまった。

 ロディは自分の無力さに歯を食いしばった。


「こいつは俺が後でおいしくいただくデザートなんでね、死んでもらっちゃあ困るから気絶しただけた。安心しろ。」


 顔だけロディに向けてそういったダントンは、雪面に伏しているナコリナを足でけって地面を転がし、近くの木の方に寄せて言った。


「き、貴様!!」


 ロディはダントンの振る舞いに怒りを覚えた。倒れている者を足で蹴る。しかもナコリナは女性なのにだ。

 女性に対する扱いがあまりにもひどい。本当に”物”としか思っていないような振る舞いにロディは怒りを抑えることが出来ない。


 わき腹を押さえ、ゆっくりと立ち上がったロディはダントンを指さし、怒りに燃えた目で睨んだ。


「ダントン!俺はお前を絶対に許さない。」


ダントンはそれを聞いて口角を上げてにやりと笑った。


「カカカ。何度か聞いたことのあるセリフだな。ま、そいつらは今はもういねえけどな。お前もそちら側に送ってやるぜ」


その言葉にロディはあることを思い出す。


「・・・それは、お前のパーティの行方不明者のことか。」

「パーティ?ああ、あいつらの事は俺はパーティだったなんて思っちゃいねえよ。奴らは”下僕”だ。」

「なんだと・・。」

「奴らは下僕らしく俺の言うことを聞いとけばいいものを、意見したり逆らったりしやがった。そんな奴は下僕の価値が無えから殺して魔物のエサにしてやったさ。」

「・・・それは本当の事か。」

「ああ、本当さ。なんならお前が俺から聞いたと証言すればいいさ。・・・証言できればな。」

「・・・下種め。」


 ダントンの語る腐臭がまとわりついたような言葉に対するロディの率直な感情だった。これ以上簡潔に表現できる言葉は見当たらない。


 ダントンは気にする様子もなく、さらに思いついたように言葉を続けた。


「そういや、お前に妹がいたな。」


 妹と聞いて、ロディはびくりとした。ダントンの口から妹の話が出るなど、良い話であるはずが無い。


「その妹な、いま俺の子分たちに捕まってるころだぜ。」

「!!!」


 ロディは驚愕で顔から表情が無くなる。

 ロディが誰よりも大切に思う妹エマ。彼女がダントン達に捕まってしまっていると聞き、ロディは心が平静でいられなくなっていた。


「ウ・・ウソをつくな。俺を動揺させるためのウソだろう。」

「そう思うのは勝手だが、俺の子分がここに居ねえってことは、そういうことだぜ。」


 そうだ、子分がいない。いつも金魚の糞のようにくっついていたあいつらが見当たらない。ということは、ダントンの言う通り奴らは妹を狙っている!


「お前の妹もいい女だったから、俺が兄に代わって遊んでやるぜ。手取り足取りな。」


 エマをも弄ぼうとするダントンに、ロディの怒りは最高潮に達した。


(こいつらは、俺はともかくナコリナやエマに手を出した。絶対許せるか!もう容赦しない。どんな手を使ってもこいつらは全員俺がぶっ倒してやる!)


ロディはついに決心した。


「おい下種。」

「・・ああ?」


 ダントンはこめかみをピクリとさせて反応する。2度目の言葉はさすがに聞き流せなかったようだ。


「お前は俺が全力でぶっ潰す。覚悟しろ。」


ロディの言葉を聞いてダントンは鼻で笑った。


「ハッ、今までが全力じゃなかったみてえな言い方だな。どんな力が残ってるんだ、あぁ?」

「お望みなら見せてやるよ。」


 そしてロディは自らのリミッターを外した。そのとたん体から溢れ出る大量の魔力。


「・・・む。」


 ダントンはロディの変化を感じ、顔から笑いを収める。


 ロディは心の中でそれをイメージし、そして唱える。


「ファイヤーボール!!」


 それはロディの目の前に現れた。

 ロディの修正魔法による、白く輝く”ファイヤーボール”が。

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