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第4話 ロディ、襲撃される

 ロディたちが護衛する馬車は、急ぎに急いで何とか次の村までたどり着いた。かなり日が暮れて暗くなった中で門をくぐる、ぎりぎり滑り込んだ感じではあったが。

 そして宿もなんとか開いていたため、野宿はせずに済んだ。

 しかし、馬がかなり疲労していたため、アレクが遅くまで馬の世話をせざるを得なかった。


「まったく、帰ったらキシリヤちゃんに埋め合わせをしてもらわねえとな。今度デートくらいしてもらうぜ。」


 アレクがぶつぶつと文句とも願望ともつかない発言をしていた。


 とにもかくにも初日の行程があわただしく終わり、翌朝、一行は今度は余裕をもって出発した。


「この馬車、昨日はかなり急いでいたけど、思ったより揺れなかったわね。」

「確かに。薬やらなにやらを運ぶんだから、壊れないように揺れにくく作っているんじゃないかな。」


 エマのふと気づいたように言い、ロディがなるほどそう言えばと同意する。

 この馬車、見た目は普通でどこにでもある馬車のようだが、昨日は急いだ割には揺れなかった。見えない所になにか仕組みがあるのだろう。考えれば、ロスゼマさんの薬瓶などが割れたりすれば大損害だ。

 意外と高性能の馬車のようで、見た目のみすぼらしさ(失礼)とは裏腹に、実務重視で結構お金をかけているのではではないかと感じる。


「ま、揺れねえほうが疲れねえし、体も楽だ。」

「そうね、普通の馬車は座りっぱなしだとお尻もいたくなるんだけど、この馬車はそれが無くていいわね。」


 テオとナコリナも頷きながら言った。彼らも馬車には満足そうである。

 ところでレミアはというと、今は前方の御者席にいる。御者のアレクの横だ。

 どうやらレミアは前方から景色を見るのが楽しいらしく、何やらはしゃぎながらアレクの横であちこちを眺めたり会話したりしていた。

 アレクはレミアの話に相槌を打ったりしているのだが、たまにちらちらと意味ありげに馬車内に視線をやっている。


(・・・たぶん、レミアじゃなくナコリナかエマと替わってくれ、ってことだろうな)


 とロディは推測した。

 旅は大体退屈であり、会話をすることは暇つぶしにいいのは間違いない。そして美人との会話はなお楽しい事だろう。

 ロディの推測はまさしく正鵠を射ていたのだが、だからと言ってロディはその通りに行動はしなかった。ナコリナとエマが行こうとしないのだから、強いてそれを促す必要はないだろう。

 アレクの視線を無視し、何も気づいていないかのように平然と馬車内の中の4人と会話を続けるのであった。

 それよりもロディには気になることがあった。


「・・・」

「どうしたのロディ?真剣な顔して。」


 気になることに集中し、少し無口になったロディにナコリナが顔を覗き込みながら問いかける。


「ん、あ、いや、なんでもない。少し考え事をしてたんで。」

「そう?悩み事?」

「いや、ちょっとね。大したことないよ。」


 そう笑って答えて会話に再び加わるロディだったが、やはり気になることにには一定の意識を向け続けていた。


「・・・あ、あれは何なのだ?」


 その時、御者台にいるレミアが声を上げた。彼女は上を見上げながら指さしていた。


「あの黒いものが空にあるのだ。何なのだ?鳥なのだ?」

「ん、どれどれ?」


 そう言われてアレクがレミアの指さす方をじっと見つめると、やがて馬車内を振り向いて言った。


「おいみんな、ちょっと警戒態勢を取ってくれ。」


 アレクの声は少し緊張をはらんでいた。なにか危険が迫っているのかもしれない。


「どうした?」


 ロディが問うと、アレクがそれに答えた。


「グレートイーグルだ。奴が飛んでいる。」

「グレートイーグル!?」


 エマが驚きに声を上げると、アレクは続けて説明した。


 グレートイーグルは鳥の魔獣。かなり強い魔物で、かつ空中をかなりのスピードで動くので、討伐が難しい。

 通常は近隣の山や森に棲んでいて、この辺りに出てくるのはまれなことらしい。


「ま、グレートイーグルはああ見えて結構温厚で、攻撃を仕掛けてくることは少ないんだ。だからこのままやり過ごせるとは思う。警戒は必要だがな。」

「そうなの、慌てて損しちゃった。」

「だが、グレートイーグルがここまで出てくるなんてな。エサが少なくて出張ってきている可能性もある。もしそうなら危険度は上がるな。」


 ロディたちは前方の御者台の方から上空を見上げた。茶色がかった黒色の羽毛を持つグレートイーグルは、だいぶ上空だが近づいてきているらしく、肉眼でも鳥の姿が見て取れた。

 あんな鳥が近づいてきているなんて、ロディは気付けなかった。実はロディは常に索敵はしていたのだが、別に気になることがあったためそちらに注力していたのだ。ましてや空はあまり注意を払っていないので気付くのが遅れてしまった。


「グレートイーグルって、どんな獲物を襲うんだ?」

「奴は1m前後の小動物なんかを狙うんだ。空から襲い掛かってあの足で掴んで巣までもっていくらしい。まれに村まで飛んできて小家畜や、子どもなんかも攫われてたりするらしい。」

「ええ!?子供まで犠牲になることがあるの?」

「たまにな。けど代わりに大きな獲物は狙わない。だからこの馬車なんかは結構大きくて持っていけないから狙われないだろう。」


 アレクは安心させるように言ったのだが・・・


「え、でも、こっちに向かって来てるように見えるんだけど。」


 ナコリナの言葉に上を見ると、彼女の言う通りグレートイーグルが急に動きを変えて、こちらに向かって降下して来るのが見えた。

 まるでアレクの言葉がフラグになってしまったかのように。


「なに!馬鹿な。馬車を襲うなんて考えられねえ。奴は馬は襲わねえ。小動物か子供だ。ここには居ないはず・・・はず・・・」

「・・・え、子供・・・?」


 その言葉に何か気付いたかのように、ロディたちは全員(一人を除いて)ある人物に視線を向けた。


「・・・な、なんなのだ?」


 その視線の先にはレミアがいた。

 れっきとした成人なのだが、どう見ても子供の身長しかない。

 つまり、御者台にいたレミアを見たグレートイーグルが、彼女を獲物と認識して襲ってきたのだった。


「ちぃっ!迎撃するしかねえ。」


 気を取り直したアレクがそう言うと、御者台の下に隠していた剣を取り出した。


「待て!護衛は俺たちだ。アレクは馬車と荷物を守らなきゃならないだろう。」


 立ち上がろうチスルアレクをロディは押しとどめた。


「だがよ」

「俺たちは外に出て馬車を離れて戦う。奴の狙いはレミアだ。外に出れば馬車は狙われないが、万が一のこともある。ここで援護してくれ。」

「・・・大丈夫か?」

「こう見えて戦いは結構経験してるんだ。任せといてくれ。」

「・・そうか、判った。」


 アレクが何か言いたそうだったが、納得したように座り直す。ただし剣は手放さない。

 ロディは後ろを振り向いてみんなを見た。


「よし、みんな外に出るんだ。グレートイーグルを倒すぞ。」

「「「「応!」」」」


 全員の掛け声とともに、襲い掛かるグレートイーグルを迎え撃つべく、ロディたち5人は一斉に馬車の外に飛び出して行った。

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