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第55話 ロディ、新しい仲間が増える

 ロディは、浮かび上がったテイムの魔法陣とその奥にいるヒュージスライムを見つめる。

 魔法陣はロディの修正がなされているものだ。検証はしていないが、テイムの成功率が低かったのは、従来の一部間違った魔法陣を使用していたためではないかとロディは思う。

 だから、ボスキャラのテイムなど前代未聞だが可能性はあるのではないか、とロディは期待していた。


 ロディとスライムが全く動かずに、魔法陣を間にすることおよそ1分。

 フッ、と魔法陣が消えた。

 そして、スライムが柔らかな光に包まれた。


「うわ、なんだ!?」


 テオが驚いて声を上げる。

 その光はほんの数秒で消えた。そしてそこには先ほどと変わらない状態のロディとスライムが居た。


「・・・どうなったのだ?」

「ロディ、テイムできたの?」


 レミアとナコリナが心配そうにロディに問いかけると、ロディはふぅっっと、大きな息をついてみんなに顔を向けた。


「うん、多分大丈夫。そんな感じがする。」


 ロディにはわかった。ヒュージスライムが光った後、ロディのギフトにより見えていた赤い光が消えた。これはスライムに『間違ったところががなくなった』ことを意味する。

 そして何となくではあるが、ロディにはスライムとつながっているような感覚があった。


「おいで。」


 ロディがヒュージスライムを呼ぶと、彼は嬉しそうに体をゆすったかと思うと、スススッとロディのそばに寄ってきた。


「腕を上に出して見せて。」


 そうロディが言うと、スライムは体の一部を腕のようにして上に伸ばして見せた。スライムはロディの言うことに応えている。


「うん、テイム成功だ。」


 それを聞くと、仲間たちの歓声がボス部屋中に響き渡った。


「成功!?本当に?・・・お兄ちゃんすごい!」

「すげえな、ボスをテイムしちまったよ。」

「うむ、さすがワシの弟子じゃ。」


 皆が口々にテイム成功をたたえると、ロディは


「運がよかったんだよ。スライムに俺の魔力がかなり入り込んでいたからじゃないかな。」


と言い、照れ臭そうに顔をほころばせた。

 なかなか成功しないと言われるテイムを成功させたのだ。ロディは笑顔をヒュージスライムに向けた。心なしかヒュージスライムも喜んでいるようにロディには思えたのだった。


「これからよろしくな。」


 ロディが新たに仲間になったスライムに語りかけると、彼は2度3度と体を伸び縮みさせて、言葉ではない表現で返事をしたのだった。


◇◇


「ところでさ。このスライムに名前を付けない?」


 少し時がたち、一時の興奮状態から場の雰囲気が和らいできたところで、エマがみんなに提案した。


「名前か、・・・そうだな。このままヒュージスライムって呼ぶには不便だな。」

「でしょ。」

「うーん、”スライム”でいいんじゃねえの?」

「だめよ。仲間なんだからちゃんと名前を付けないと。」


 テオはめんどくさそうに言ったのだが、エマがすぐさま反論した。

 折角これから仲間として旅をするのだ。名前を付けた方が親近感が持てて良いに決まっている。


「はいはいー。ワシにいい案があるのじゃ。」


 いきなりフェイが勢い良く手を上げた。


「フェイさんが?どんな名前なの?」

「アルフェイト2世」

「却下。」

「なにーーー、考えもせずに却下とは。」

「当り前でしょ。ロディの従魔なのになんでフェイさんの名前が入ってるのよ。」


 フェイが抗議の声を上げるが、当然認められるはずもない。


「まあ、冗談だったんじゃがな。」

「笑えない冗談よ。」


 フェイの言葉をナコリナが軽くいなす。

 そこへ、少し考えていたレミアが続けて言った。


「ヒュージスライムなのだ。だから”ヒュー”がいいのだ。」

「ヒュー!?」


 このレミアの案を、みんなが思案顔で考える。


「安直かもしれないけど、結構いい名前だな。」


 ロディが賛同すると、他のみんなも口々に賛意を告げてくる。


「言いやすいし、元のスライムの名前も入ってていいかも。」

「ヒューか。なかなかカッコいいじゃん。」


 みんなの反応もいいので、ロディはスライムを見て言った。


「お前の名前、ヒューでどうだい?」


 すると、ヒュージスライムは上下左右に体を揺らしだした。雰囲気的には嫌がっているわけではなく喜んでいるように見える。ロディの感覚からも、喜んでいる感情が伝わってくる。この名前を気に入ってくれたのだろう。


「よし、じゃあこれからは、お前の名前はヒューだ。よろしくな、ヒュー。」


 するとヒュージスライムの「ヒュー」は、さらに大きく、さらにゆっくりと体を揺らしたのだった。




「ところでさ、この大きいまま連れて帰るのは少し困るんじゃない?」


 ナコリナにそう言われて、ロディはヒューを見る。ヒューは、いまは小さくなったとはいえ2mほどある。こんな大きなスライムはそうそういない。みんなから恐れの目で見られそうだ。

 そして、もし体が元に戻ったら直径10mの半球体だ。とても街中を連れまわすことなどできない。


「うーん確かに」


 ロディは少し困ってしまった。

 そこで救いの手を差し延べたのは、フェイだった。


「このヒューじゃが、もしかしたら体のサイズを変えることができるかもしれんぞ。」

「え!?そうなんですか。」

「古い文献で呼んだことがあるんじゃが、強くて体の大きな従魔をテイムした後、その従魔は体が小さくなった、と書いてあった。」

「師匠、それは本当ですか?!」

「文献が正しければ、じゃが。確かめてはおらん。」

「まあ、ためしてみるのもいいんじゃない?」


 フェイの言う通りならば、従魔が小さくなるかもしれない。


「ヒュー、お前、小さくなれるかい?」


 ロディは半信半疑でヒューに語りかけた。

 すると、ヒューは体を揺らしはじめた。どうやらやってみると言っているようだった。


 ヒューはピタリと動きを止めた。

 皆がかたずをのんで見守る中、やがてユーは少しだけ光を放ち、そして、・・・


「あ、小さくなってる。」

「本当だ。すげえ・・・」


 皆の目の前で見る見るうちに小さくなっていった。

 そして最終的には、人の頭より少し小さいくらいに縮んだのだった。


「わあ、この姿、小さくってかわいいわ。」

「本当。スライムって意外とかわいいんだね。」


 エマとナコリナは小さくなったヒューの周りできゃあきゃあ騒ぎ出す。女の子から見て、今のヒューはかわいいのだろう。


「おお、まさか本当に従魔が小さくなるとは・・・。本に書いてあったことは本当じゃったか。長生きはするもんじゃのぅ。」


 初めて見る従魔の小型化に、研究者であるフェイは、驚きと喜びと納得と感心とが入り混じったような言葉をつぶやくのだった。

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