第51話 ロディ、ヒュージスライムと戦う
遅いですが、あけましておめでとうございます。
新年初投稿です。よろしくお願いします。
扉を開けると、そこは広い空間が広がっていた。
広さは50m四方、高さは15mちょっとというところだろう。側面や床、天井は白っぽい意志のような材質の壁で囲まれた、装飾もない無機質な空間だった。
そしてその部屋の中央に巨大な半球の物体が佇んでいた。
「ロディ、あれ・・・」
「ああ・・・」
5人(+1人)の視線の先いた物体。この部屋の主であり、ダンジョンのボスであるヒュージスライムだ。
情報からその体が大きいことは聞いていたのだが、実際に見るとそのたたずまいに威圧感を感じる。
だが、これからこいつを倒さなければならない。
5人は気合を入れ直し、全員が部屋の中に入っていった。
「みな不用意に近づかんようにな。近づくと攻撃してくるからのう。」
後ろからフェイが5人に注意を促す。
ヒュージスライムは攻撃するときには、近い者をターゲットにすることが多く、なので盾役のものはできるだけ近づき、後衛は遠距離攻撃や支援できる範囲内でできるだけ離れるのだ。
ちなみにヒュージスライムは、その巨体からか部屋の中央から動くことはないらしい。ただし、「正面」というものがないため死角はなく、全方位に腕を伸ばすことができるという。
5人は一定の間合いまで近づく。そしておよそ15mまで来たとことで、今まで沈黙していたスライムに動きがあった。
ビクリッ。
体の表面にうねりのようなものが走ったのが見えた。どうやら近づくロディたちに意識を向け、臨戦態勢に入ったようだ。
「いくぞ!」
一番前に出ていたテオが、さほど大きくないがはっきりとした声で『戦闘開始』の合図をし、それを聞いた全員がうなづく。
事前の打ち合わせ通り、前衛のテオとロディが数歩前に出る。
突然、
ヒュージスライムから体の一部が丸太のように突き出てきて、先頭にいたテオを襲ってきた。
「うおっ!!」
ガシィ!
とっさに盾を前に出して何とか腕をガードすることができた。だがその威力は強力で、テオは3mほど後ろに押し込まれていた。
威力はかなり強い。それにほとんど予備動作なしで突き出てくるその腕は、反応するのが難しそうだ。
間髪を入れず、2本目の腕がロディに向かって伸びる。
「はっ!」
速い腕の動きだったが、1本目の腕の動きを見ていたロディはそれに何とか反応でき、体を左にして避けることができた。
「テオ、大丈夫?」
エマが心配して声をかける。それを聞いてテオは後ろを向いてにやりと笑った。
「このくらい大丈夫。けどまともに受け続けるのは骨だろうな。何とかうまく受け流してみるぜ。」
テオの答えに、彼に1本の腕を任せてもいけそうだと感じたロディは、改めて前を向き、自分のやることに専念する。
ロディの役目は1本の腕をよけながら”魔法で”ヒュージスライムを倒す、その方法を探すこと。
「ロディ、テオ、頑張って。」
「ロディならやれるのだ。テオも頑張るのだ。」
「「おう!」」
ナコリナとレミアの声援を背に受け、ロディは魔法を準備する。
ロディに腕が伸びてくる。人間の胴体の3倍ほどもある太さだ。直撃すればただでは済まないだろう。
ロディはわずかな恐怖心を抑えながら腕を紙一重で躱す。
体の真横を通り過ぎていく腕。
そして、
「エアカッター!」
ロディはよけた腕の側面に、風魔法のエアカッターを放った。
ロディが最初に風魔法を選んだのは、剣の代わりとして使用できるかもと考えたからだ。風魔法で腕を丸ごと切れるようであれば、攻略法が同じように使えるのだ。
ザシュッ!
至近距離から放たれたエアカッターは、問題なく腕を切りつけた。
「やった!?」
エマたちがロディのエアカッターがスライムを傷つけたことに歓声を上げる。だが、
「!!・・・くそっ」
ロディはそれを見て失望の色を浮かべる。
エアカッターで切りつけた腕は、およそ太さ1/3位くらい切れている。しかし、腕を切り飛ばすことはできていない。
やはりヒュージスライムは物理より魔法耐性がかなり高いようだ。
「あ、傷が・・・」
そして傷は見る見るうちに再生していく。ボスの高い再生能力を目の当たりにし、ロディは苦し気に顔を歪ませた。
腕を切り飛ばさなければ再生されてしまう。エアカッターでも3回同じところに当てれば切り飛ばすことは可能だろう。しかしそれは現実的には不可能だ。
腕はかなりの高速で動いている。いかに魔法の精密性が高いロディであろうとも、まったく同じところに3回当てることはできない。またヒュージスライムは再生能力もある。さっきの傷口はすでに跡形もなく埋まってしまっている。
ほかの風魔法は、残念ながら広範囲にわたるダメージを与えるものがほとんどで、しかも必要な魔力量が多いため多用できない。ピンポイントで腕を切飛ばそうとするとエアカッターくらいしか選択肢がないのだ。
「く、・・・まだまだ。」
ロディは次にファイヤーアローを撃ち込んだ。
だがファイヤーアローはヒュージスライムの体にわずかに食い込んだものの、すぐに勢いが消えて消滅した。
「全然効かない・・・。ヤツの体は水分が大部分だ。火は使えなさそうだ。」
ロディは繰り出される腕の攻撃をかわしつつも次の魔法を唱えた。
「ウォータージェット!」
水魔法は攻撃性は低いが、水流を細く集中させ勢いをつけて打ち出すことで威力を持たせるものだ。
ドドドドドっ
水流がヒュージスライムに当たる。ダメージが入っているのか・・・?
「な、なに・・・。水が吸収されていく・・・。」
スライムの表面に当たった水流は、跳ね返りも、滴りもせず、そのまま体内に取り込まれるように消えていった。ヒュージスライムにもダメージがあるようには見えなかった。
「く、これもダメか。・・・だがこっちはどうだ!」
水魔法をあきらめたロディは、次に土魔法を使った。
「ストーンバレット!」
ロディは頭ほどもある大きな石礫を3つ出現させ、そして勢いをつけて撃ち出した。
ストーンバレットはヒュージスライムに当たり、そのまま体内にぐいと食い込んでいった。
と、石は1mばかり食い込んだところで止まってしまった。そして、
ビュン!
なんと、弾力のあるヒュージスライムの体から石礫が跳ね返ってきたのだった。
跳ね返った石はナコリナ、テオ、フェイに猛烈な勢いで向かって行く。
「きゃあ!」
「うおっ!」
「ふむ。」
ナコリナはうまく避け、テオは何とか盾でブロックして無事だった。フェイはと言うと、目の前に壁を厚く作って石を受け止め、何事もなかったよう笑みをたたえていた。
「ロディよ、不用意な魔法は仲間を危険にさらすぞぃ。」
「す、すみません。」
師匠から未熟さを指摘され、ロディは恥ずかしい思いだった。
なんとかヒュージスライムを倒すための突破口を開かねば・・・。
しかし火風水土と4つの属性の魔法が防がれ、他の魔法も効果があるとは思えない。
攻略への光明がまるで見えず、ロディの焦りは募るばかりだった。




