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第4話 ロディ、ザゼンをする

 アーノルドはロディと共に訓練場の片隅に移動して、魔力身体強化の説明を始めた。


「身体強化のためには、まず体内の魔力を自在に操作できなければならねえ。自分の魔力を感じることはできるか?」

「はい、なんとなくですが。」


 魔法が使えないロディは、そのためあまり魔力を感じ取ろうとしたことはない。ただ体にある魔力をなんとなく感じ取ることはできる。


「魔力操作の為には心を静めておかなければならねえ。そして心を静めるには「ザゼン」が一番だ。」

「ザゼン、ですか?」

「そう、ザゼンだ。俺も一緒にやるからまずは真似てみろ。」


 アーノルドは地面に直接座って足を前で交差させるように組む。これが「ザゼン」というものらしい。ロディも同じようにして座る。


「背筋を曲げないように、顔を真っすぐにして目をつぶり、力を抜いて、何も考えないようにするんだ。」


 ロディは言われた通り、目をつぶり力を抜く。スーッと気持ちが落ち着いていくような感じがする。


「そのまま、自分の体内の魔力を感じとるようにしてみろ。」


 ロディがザゼンをしてしばらくすると、体の魔力がいつもよりはっきりと分かるようになってきた。それは体中の至る所にとどまっていたり、ただよっていたりしている。


「魔力を感じたか?」

「はい」

「じゃあその魔力を自分で動かすようイメージしろ。まずはどこかに集めるように動かしてみるんだ。体の真ん中、へそのあたりがいいだろう。そしてそれが出来たら次は魔力を体の中心あたりで円を描くように回転させてみろ。ただし、ゆっくりとだ。最初は出来ないだろうから、焦らずに気長にやるように」

「やってみます。」


 ロディは魔力に集中した。魔力を動かそうと意識すると、最初はばらばらの方向に動き始めた。しかし思い通りには動かず魔力を集められない。

 頭で「動け」とイメージしても魔力は漂うだけで一向に思った通りに動くそぶりを見せない。10分たっても20分たっても思ったように動かない。ロディは力を込めて必死に「動け」と念じていた。

 そこにアーノルドの声がする。


「ロディ、力が入りすぎている。額に汗をかいているぞ。焦るな。心を落ち着かせて、静かにゆっくり念じるんだ。」


 アーノルドの注意にハッとして、力を抜く。そうだ、落ち着いて、ゆっくりやるんだ。ゆっくり・・。


 それからさらに集中してザゼンすること30分。


『あ、なんだか・・・』


 ロディの魔力が、少しだが思った方向に動いていくような感じがした。ほんの少しの魔力が、少しずつ、しかし確実に。


『やった、動いてる・・。おっと、あわてるな、落ち着け。』


 喜びそうになる自分を思いとどめ、そのまま静かに念じ続ける。

 すると、思い通りに動く魔力は少しずつ増えていった。そして、少しずつ魔力が集まり始めた。


『コツがわかったような気がする。』


 もっと動かせるようにしたい、そう思ったが、急に集中力が切れて魔力を感じ取れなくなった。どうやら気力が限界を迎えたらしい。


 ロディは目を開いて大きく深呼吸した。まったく動いていないのに体は疲労困憊。精神集中しながらの魔力操作は気力も体力も消費するようだ。


「アーノルドさん、やりました!魔力を少し集められるようになりました!」


ロディは隣に座るアーノルドに報告する。が、アーノルドはそれを聞いても「ザゼン」のまま目を開かなたった。


「・・・アーノルドさん・・・どうしたんです?」


ロディが問いかけたが反応は無い。


「アーノルドさん!アーノルドさん!」


 ロディが声を出してアーノルドの体をゆすったが、目を開くことも反応することもなく、そしてアーノルドの体は人形のようにゆっくりと崩れるように地面に倒れ込むのだった。

 その時、ロディははっきりと分かった。アーノルドはザゼンしたまま、


「・・・・寝てる。」


-----------------------------------------------


「すまんすまん。久しぶりにやったらいつの間にやら寝てしまった。しかしもう覚えたのか。早いな。」


 アーノルドは笑いながら詫びた。

 聞けば、アーノルドは「ザゼン」が苦手らしい。ゆっくり目をつぶっていると、いつのまにか寝てしまうのだそうだ。


「おかげで最初は魔力操作の感覚をつかむのに2週間かかったぜ。」

「えーー・・・」


 ロディは1時間くらいで出来ていた。ロディが早いのか、アーノルドが遅いのか、どっちだろう?

 ロディは苦笑いしながら、ふと疑問に思ったことをアーノルドに聞いてみた。


「そういえば、剣士のギフトには「身体強化」があるのに、どうしてそこまでして魔力身体強化を覚えようとしたんですか?」

「そりゃ決まってる。魔法の身体強化と魔力身体強化は重ね掛けが出来るんだ。少しでも強くなれるのなら使わない手はない。それに魔力身体強化は他にもメリットがある。」

「メリットですか。」


アーノルドはメリットについて説明する。


「魔力身体強化のメリットは3つだ。

 一つは消費魔力が少ないことだ。魔法の身体強化は強力だが、その分魔力を使う。魔力を枯渇させないためにもそう頻繁には使えない。その点魔力身体強化は魔力を直接使うため少ない魔力ですむ。少しだけ強化したいときにはわざわざ魔法を使わなくていいので重宝するぞ。

 二つ目は持続時間が長いことだ。魔法の身体強化はおよそ5分しか効果が無い。しかし魔力身体強化は、魔力が続く限り継続して使用可能だ。使う者の魔力量が多ければ、かなり長時間使い続けることが出来る。長期戦に有効だ。

 三つ目は、体の一部分に掛けることが可能な所だ。部分的に掛けるとその分魔力の消費も抑えられて効率的だ。足を強化すれば長時間移動でも疲れにくくなる。」

「なるどほ。強化量は少ないけれど、かなり使えそうですね。」

「だろ。」


 体内の魔力量は限りがあるので出来るだけ節約して使いたい。通常の戦闘で使用するなら魔力身体強化は結構使えるだろう。


「俺のような剣士ギフトのやつらは、魔法師とかに比べれば魔力量が少ない者が多い。だからみんな魔力身体強化を必死になって覚えるんだ。

 俺もどんなに時間がかかろうとも、魔力操作を覚えるまで必死でやり続けるしかなかったんだ。それこそ寝る間を惜しんでザゼンしたんだ。」


(・・あれ?寝る間を惜しんでザゼンしてたら寝ちゃうんじゃ・・?)

このツッコミはロディの心の中だけに留めた。


「ま、それでも苦労の甲斐あって魔力『身体強化』を覚えることが出来たし、冒険者ランクを上げていくこともできた。貯金が出来て、結婚も出来るぐらいにはな。だからお前も早く魔力操作の精度を上げて、魔力身体強化を使えるようになれよ。」

「そうすれば、アーノルドさんの奥さんみたいな人が寄ってきますかね。」

「ハッ、あんな女はやめとけよ。尻に敷かれて身動きできなくなるぜ。」


その時、教会の鐘が正午を告げた。アーノルドは背伸びをして立ち上がる。


「さて、ちょうどいい時間だから昼飯をおごってもらうか。」

「はい。もちろん」


二人はそろって食堂へと向かった。

ロディがおごった食事が1人前で済んだかどうかは、二人しか知らない。

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