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第3話 ロディ、強くなるには

 Eランクになったロディだったが、なるべく早くDランクになりたいと思っていた。Dランクになれば職員として行える業務の幅も広がり、給料もあがる。

 それに将来冒険者になった時のために強くなってランクを上げておきたい。


 けれどロディのギフトは「修正」であり、まだ使い方もわからないし、使えたとしても明らかに戦闘に向いているものではないと思われる。また魔法も使えない為後衛のような役割も出来ない。ならばどうするか。選択肢は一つしかなかった。


「ようロディ。お前さん剣術を習いたいんだってな。」

「はい、アーノルドさん。今日から宜しくお願いします。」


 魔法が使えないロディにとって、強くなって冒険者ランクを上げるために剣術を習うことは必然だった。

 ギフトとは違い、剣術はギフトが無くても修練すればだれでも上達する。ギフトは『才能』であり、剣術は『技術』である。例えば「剣聖」のようなものすごいギフトを持っていたとしても、剣術を練習せず怠けていたらその才能は伸びずいつまでも弱いままだ。逆に剣や戦闘に関するギフトを持っていない人でも、練習すればある程度は戦えるようになる。ギフトはもらっただけではだめで、当然それを延ばす、俗に言う『レベルを上げる』ためには相応の努力を必要とするのだ。


 冒険者ギルドでは週に3日間、無料の剣術講習があり、ロディはそれに参加することにした。この講師がアーノルドだった。ロディの目の前でロディの身長ほどもある大剣を右肩に背負っている。

 彼は元冒険者で、現役の時にはBランク目前の一流冒険者だったらしい。左足のけがにより引退を余儀なくされ、今はギルド職員となって主に初心者中心に剣術指南をしている。

 歳は35歳くらい。金髪角刈りの筋肉質、いわゆるマッチョ体形だ。13歳にしては背が高いロディのさらに頭1つ分以上背が高い。その身長と筋肉も相まって、近くにいるとその圧がすごい。持っているギフトは「剣士」だそうだ。


「しかしロディはいつ見てもヒョロヒョロだな。ちゃんと食ってるのか?」

「あはは、アーノルドさんほどじゃないけど食べてますよ。」


 食事に話にロディは少し引き気味に答えた。アーノルドが大食漢だということを知っているからだ。噂によると彼は新規開店の無料サービスで10人前を食べたとか、『おかわり自由』を謳っている店では、但し書きに「アーノルド以外」と入っているとかいないとか。とにかくよく食べるらしい。

 しかし、ロディはまだ彼の本気の大食いを見たことがない。アーノルドと昼食を一緒にしたことがあるが、彼は大盛の定食を軽々と食べてまだ足りなそうな顔をしていたが、追加を頼むことはなかった。ロディが「おかわりをしないんですか」と聞いたら、「嫁から『2人前以上頼んだら、家から追い出す。』ってい言われてるんだよ。」と、しょんぼりして言っていた。

 どうやら奥さんには頭が上がらないらしい。


「剣を習うのなら、体が資本だ。たくさん食って俺のような体を目指すんだな」


 彼はニッと笑いながら左手の親指を立てて自分の胸に向ける。笑った口元から白い歯がキラリと光ったように見えた。気のせいかもしれない。

 ロディは若干ひきつった笑いを返して、心の中で「遠慮します」とつぶやくのだった。




 アーノルドは肉体派のように見えて意外に論理的で、ロディの訓練に的確にアドバイスをしてくれた。


「相手の一点を見るな。全体を見るようにしろ。1対1ならいいが、魔物は多数の時がある。周囲に気を配るためにも視線は集中させるな。」

「はい。」


「上半身だけで剣を振るな。よけられたときにバランスを崩しやすい。下半身も一緒にすることを心掛けろ。下半身の強化トレーニングもやっておけよ。」

「はい。」


 アーノルドの教えを着実にものにしようと奮闘する毎日。

 講習会に参加して以降、ロディの剣術は着実に上達していった。講習以外にも暇なときに修練場に通って、自主練習やたまに先輩冒険者と模擬戦を行うなど、鍛錬に汗を流す日々を送る。


 そんなある日、ロディはいつものように自主訓練を行っていた。

 最近は、だいぶ安定して剣を振れるようになったかな、と自分でも感じるようになっている。

 そこに、ロディの練習を見ていたアーノルドから声がかかった。


「ロディの剣も様になってきたな。体つきも少しはマシになったか。それじゃあそろそろ継ぎを教えてもいいか。」


 ロディは木剣を降ろし、アーノルドに向き直って聞いた。


「アーノルドさん、何か教えてくれるんですか?」

「ああ、使える技術だぞ。剣士に限らず冒険者なら必ず習得するものだ。」

「それはなんですか?」


 ワクワクして聞くロディに、アーノルドはニッと笑って答えた。


「それは『魔力身体強化』って言われるやつだ。」

「え、身体強化ですか?でも俺は魔法を使えませんよ。」


 身体強化の魔法とは、体の筋肉、視力、瞬発力などを身体の様々な部分を強化する魔法である。そのため、特に剣や槍など前線で戦う冒険者には必須の魔法だった。


「魔法が使えねぇのは知ってる。けど体の中に魔力は有るんだろ。」

「はい、あります。」

「その魔力を使うんだ。魔力があれば、自分の体を直接強化できるんだ」

「え、魔力を使って身体強化ですか。そんなことできるんですか?」

「出来るとも。これは『魔力身体強化』って言われてるんだ」


 アーノルドの説明はこうだった。

 魔法の「身体強化」は魔法を行使して使うものだが、魔力身体強化は体内の魔力を直接自分の身体に働きかけるものだ。体内の魔力を使うため魔力があればだれでも使うことが出来る。つまり魔法を使えないロディでも体内魔力があるので魔力身体強化が出来るということだ。

 ただ、魔法の「身体強化」は『魔法』を媒介する分強化率が高く、逆に魔力身体強化はそれより弱い強化しかできないらしい。また魔法の場合は自分以外の他人にも使用することが出来るが、魔力直接の場合は他人には行使できない、などの欠点もある。


 しかし、いくら弱い強化しかできないとはいえ、魔法が使えないロディにとって身体強化が出来るという話は願ってもない事だった。


「アーノルドさん、ぜひ教えてください!お願いします。」


ロディは勢いよく頭を下げる。


「おいおい、頭を下げるなよ。そんなに大したことじゃねえ。授業料も高くねえからな。飯をおごってくれりゃいいぜ。」


 おごりと聞いてちょっと心配になったロディは、頭を下げたまま上目遣いにアーノルドを見た。


「・・・1人前ですよね?」

「ちぇっ、仕方ねえな。それで手を打ってやるか。」


 アーノルドはあからさまに残念な顔をしたが、ロディの願いを笑って受けた。

 こうしてロディは魔力身体強化を教えてもらうことになった。

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