第44話 ロディ、仲間と共に
ギルドを訪れたロディ達は、カウンターに向かった。カウンターにフェルマーが座っているのが見えたからだ。
「こんにちは、フェルマーさん。」
「皆さんこんにちは。本日はどういった御用で?」
フェルマーが受付担当のような対応をしている。彼がギルド長と知っているロディ達だが、こうして対応されると普通の職員にしか思えない。ロディは苦笑しながらフェルマーに伝えた。
「ええ、今日はギルド長に挨拶をしておこうと思って。」
挨拶と聞いて、要件が何かを即座に理解したフェルマーは、すっと立ち上がった。
「ではこちらへどうぞ。」
フェルマーが前を進み、そのあとを5人が続く。そして5人は応接室に通された。
「カウンターで話をすると冒険者連中が寄ってきて収拾がつかなくなると思ったのでね、ここに通させてもらったよ。」
応接室に入ると、フェルマーは職員としてではなくギルド長としての言葉遣いに変えて、5人に席を勧める。
この部屋に通されたのは彼の気配りだった。ギルド長を含め6人が座り、ギルド長がテオとレミアを見て話し始めた。
「この2人はダンジョンに住んでいたという噂の子たちなのだね。初めまして、私はギルド長のフェルマーだ。」
「テ、テオです。」
「レミアなのだ。」
フェルマーのあいさつに、テオは少し緊張気味に、レミアはマイペースで返す。
「オークキング討伐に多大な貢献をしたと聞いているよ。ギルドを代表して感謝する。ありがとう。」
「い、いえ。」
「当然のことをしたまでなのだ。」
あくまで対照的な2人に軽く笑顔を作ったフェルマーは、ロディに向き直った。
「それで、私に挨拶ということは、もうこの街を出発するつもりなのだね。」
「はい。出発できる準備が整ったので、明日ミズマを出ます。今日はお世話になったフェルマーさんに挨拶に来ました。」
「そうか。残念だが仕方あるまい。」
フェルマーはいかにも残念そうにため息をついた。そして、テオとレミアに目を向けた。
「この2人も一緒に行くのかね。」
「はい。仲間ですから。」
「そうか。ダンジョンに住むなどよほど特別な事情があるのだと思っていたが、一緒に街を出ることが出来るのなら、それも解決したんだろう。お互い、いい仲間に巡り合ったのだね。」
フェルマーは2人に笑顔を向け、2人はそれに頷いた。
「差し支えなければ、これからどの町に向かうつもりか、教えてもらってもいいかね。」
「はい。詳細を決めてはいませんが、王都に向かいます。その途中にダンジョンで有名なザイフの街があるのでそこにしばらく滞在するかもしれません。」
ロディ達は今日までにこれからどうするかを話し合って予定を決めていた。冒険者としてランクを上げる必要があるため、行く先々でダンジョンや魔物退治など積極的に取り組むつもりだ。
「なるほど。ザイフであればダンジョンのほかにも近くに高難度の森もある。上昇志向がある冒険者が向かうにはいいかもしれないね。」
フェルマーは、ロディ達の方針に納得したようにつぶやいた。
その後、しばらく雑談などで時間が過ぎて行った。
「君たちのこれからの活躍を願っているよ。噂で君たちの名前が聞こえてくるのを楽しみにしている。」
「ありがとうございます。」
フェルマーの激励の言葉を受け取り、ロディ達はギルドを後にした。
5人はミズマの街中を歩く。
「これからどうしようか。」
エマがみんなに尋ねる。
「出発は明日だけど、ギルド長へのあいさつも終わったし、もう準備も済んでるので特にやることがないわね。」
「じゃあこのまま街をぶらぶらと散策しようか。まだ行ってない通りもあるし。」
「賛成。でもその前に、お昼を食べに行きましょう。」
「お昼ご飯を食べるのだ。もうお腹がペコペコなのだ。」
「俺も腹減ったぜ。」
「じゃ、そうと決まれば食事できるお店を探しましょ。」
「おいしそうな店がいいのだ。」
「もちろんよ。」
5人がミズマの街中を歩く。
「いい街ね。」
ナコリナがロディに向かってつぶやくように言う。
「そうだね。いい街だ。」
ゴルザのようなアクシデントはあったものの、街の冒険者は気さくだし、ギルド長も人格者らしく他所から来てすぐの我々にも公平に対応してくれた。そして何より新しい仲間が2人出来た。
いい思い出は悪い思い出よりはるかに多い。
「また来れるといいわね。」
「来れるさ。」
未来のことは分からないが、きっとまた来ることがあるだろう。ロディにはそんな予感がしていた。
「さ、今日は最後まで街を堪能しましょう。」
ナコリナが笑って、そしてつられてロディも笑う。
5人は歩いていく。
まだ見ぬ明日へ向かって、仲間と共に。
ここで第3章は終わりです。
ここまで読んでくださってありがとうございました
次話は第3章のエピローグになります。




