第43話 ロディ、準備万端
5人がギルドを訪れた時は朝の混雑がひと段落したところで、比較的冒険者の数がまばらだった。
そんな中ロディ達がギルド内を進んで行くと、あちこちで声をかけられる。
「よぉ、ロディ。今日はダンジョンじゃなく依頼かい?」
「後で話を聞かせてくれよ。」
オークキングを倒したことですっかり冒険者中に名前が知れ渡り、以降ひっきりなしに声をかけられるのだ。中にはやっかみとかもあるのだが、おおむね好意的な雰囲気だ。
今回はそれだけではなく、テオとレミアも目立っていた。彼らがダンジョン内に住んでいることは結構知られていたので、外で見かけるのが珍しいのだろう、多方面から注目を浴びていた。
それらの声や視線を通り抜けて、5人はカウンターにたどり着いた。
カウンターでは女性職員が立ち上がってお辞儀をしていた。見ればオークキングを倒した夜に最初に対応してくれた人だった。
「ロディさんたち、おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか。」
「はい。この2人、テオとレミアの冒険者登録と、それからオークキングの魔石の代金を受け取りに来ました。」
「了解しました。ではまず登録を先に行いましょう。こちらの紙に記入下さい。」
レミアもテオも字を書けるようで、自分たちで書き込んでいく。その間女性職員はオークキングの魔石の換金代金を準備していた。
レミアとテオが書き終わり、女性職員に提出する。職員は内容を確認すると、ちらりとロディを見た。
「推薦者のロディさん、この内容で間違いが無いかご確認願います。」
「あ、はい。見てみます。」
ギルドでは普段こんな確認などやらないので不思議な気がしたのだが、紙を見ながらハタと気づいた。
(ああ、これはレミアの年齢に間違いが無いか、遠回しに聞いてるんだな。)
レミアの年齢はしっかり「22歳」と書いてある。しかし見た目は12歳くらいにしか見えない。その歳が事実と知っているロディでもまだ違和感があるのだから仕方が無い。
「間違いはありません。」
「そうですか・・・承知しました。これで登録します。」
職員は納得していない表情を抑え、笑顔で答えた。
一連のやり取りにエマもナコリナも気づいていて、クスクスと声を殺して笑っていた。その様子を不思議そうな顔をしたレミアが見ていた。
ギルドカードを作製する間に魔石代金の準備ができたようで、職員がトレーで持ってきた。
「こちらはオークキングの魔石代金になります。特別査定として上乗せ分があります。ご確認ください。」
トレーには大金貨が7枚乗っていた。オークキングの魔石の適正価格は大金貨5枚と聞いていたので、2枚分上乗せされている。この2枚がフェルマーが言っていたテオとレミアの貢献に対する対価なのだろう。
「わ、一気にお金持ちになった気分。」
エマが金貨を見て目をキラキラさせている。孤児だった我らにとって、こんな大金は見たことが無い。だから妹が興味津々なのは仕方が無い。
トレーには他にも金貨と大銀貨が数枚乗っていた。オークキングと同時に倒した30体ほどのオーク及びオークソルジャーの魔石分だ。
「間違いありません。」
数え終わったロディはそう言ってトレー上の金貨を受け取った。
お金を受け取ってすぐに、レミアとテオのギルドカードが出来たらしく別の職員が持ってきた。
ギルドカードを受け取ったテオとレミアは新しいおもちゃをもらった子供のように目を輝かせていた。
「これからお2人には冒険者としての心得と注意事項などを説明します。よろしいですか。」
職員はレミアとテオに、冒険者ギルドの仕組み、冒険者ランクなどの一般的な知識と、魔物の簡単な知識、注意事項などを説明していった。
それを聞きながら、ロディは自分が最初に冒険者登録をした時のことを思い出していた。
ロディが冒険者として登録したときに対応してくれたのはリーセだった。リーセにはとてもお世話になった。それに最初にロディのギフトに気づいてくれたのもリーセだった。
(リーセさん、アーノルドさん、ギルドのみんな、元気にしているかな。)
ロディはメルクーのギルドメンバーに思いを馳せた。メルクーを離れて2ヶ月くらいしかたっていないので懐かしむほどの時間ではないはずなのだが、ミズマでの出来事が濃密だったためか不思議と昔の事のように感じられる。
「・・・以上です。それでは冒険者生活頑張ってくださいね。」
「はい(なのだ)!」
一連の用事も終わり、5人はギルドを出た。今日もゆっくり街を散策する予定だ。
「今日は武器屋に行ってみようか。」
「いいわね。テオにもいい武器を見つけたいわ。」
5人は街のあちこちに足を運び、気ままに過ごした。
◇◇
テオ達がミズマに来て最初の2日は無理をさせずゆっきり過ごした。そして次の2日は採取の依頼を受けて近くの森へ足を運び1日休んで次の2日は魔物討伐依頼をこなした。この時の魔物討伐にはテオとレミアも戦闘に参加した。
旅の途中にいざという時には戦うことも必要だ。その時魔力制御しながら戦う必要はないが、外での戦いに馴れておくことも必要だし、しばらく戦っていなかったので体も慣らしておきたい。
テオもレミアも外での戦闘に最初は戸惑いながらもすぐに無難にこなすようになった。魔力制御のON/OFFの切り替えもスムーズになり、突然の遭遇にも慌てることも無くなった。
これでテオとレミアの準備は整った。そうなれば、いよいよミズマの街を出て別の街に出発するだけだ。




