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第42話 ロディ、OKを出す

 それ以降、2人は魔力制御訓練に明け暮れた。

 最初は体内魔力を感じ取る所から始まり、それが出来たらたら魔力を自分の意思で動かせるよう訓練した。


 最初は全くやったことが無い魔力訓練に戸惑っていた2人だったが、やがてコツをつかむと、見る見るうちに上達していった。

 それでも魔道具に魔力を流さないようにできるのには、レミアは5日、テオは8日かかった。レミアは僧侶で魔力使いになれていたこともあり比較的早かったが、テオは魔力を使うことになれておらずその分時間がかかった。


 ただし、魔道具に魔力を流さないようにできたと言ってもそれは座ったままの状態での事。旅をするためには動いている状態でも制御できるようにならなければならない。

 まず最初にできたレミアを、ダンジョンの戦闘に連れて行った。と言っても一緒に移動するだけで、戦わせるわけではない。それでも歩きながらの魔力制御は難易度が上がるせいか、すぐに精神的に疲れ切って座り込むことが多かった。

 それでもダンジョンから出たい一心でレミアは必死に頑張って、3日ほどで歩いていても問題なく制御できる状態になった。

 その後、ようやく魔力制御が形になってきたテオが歩行訓練に一緒に同行するようになった。彼は体を動かすことになれているためか、わずか1日で問題ないレベルまで上達した。


◇◇


 この訓練の期間中に、ロディのギフトと魔法の秘密をテオとレミアにも打ち明けた。彼らが秘密を明かしてくれたので、こちらも秘密を話しておかなければ不公平だと考えたからだ。もちろん彼らの事を信用しているからでもある。


 ロディの秘密を聞いたレミアとテオは驚きとともにギフトを称賛した。


「さすが私のロディなのだ。ギフトも破格なのだ。」

「すげえ、古代文明の本物の魔法をよみがえらせるなんて、夢のようじゃねえか。」


 レミアもテオも興奮してロディに魔法のことを聞き、ロディも出来るだけ答えてあげた。

 もちろん、このことは誰にも話さないように、と口止めは忘れなかった。


◇◇


 これで最低限ダンジョン内でやるべき訓練は完了した。やはりテオとレミアの気合の入り方は並ではなく、わずか9日でダンジョン外に出る事ができる状態に達したのだ。


 ちなみにこの魔力制御の訓練にナコリナも参加していた。ナコリナはある程度の魔力制御は出来るのだが、現状に満足していないらしい。


「2人が一生懸命やってるんだから私もやるわ。このままじゃ追い抜かれちゃう。それに魔力制御力が高まればより魔法の効率も良くなるし、魔力も少しずつ増える。やって損はないでしょ。」


 といってレミアたちとともに最初から最後までみっちり魔力操作訓練をした。最終日に本人は「制御力が上がって、魔法の扱いが楽になった気がする」と満足げだった。

 そしてそれを見ていたエマも、魔力制御の自主訓練を始めたようだ。


「みんなやってるのに私だけやってないなんて仲間外れみたいじゃない。」


  レミア、テオ、ナコリナが訓練している。エマだけ何もしていないでは疎外感がある。ということで、エマも歩いている時などで魔力制御訓練をすることにしたのだった。

 ところでロディは何もしていないわけではない。実は魔力制御訓練を常にやっている。歩いている時も、戦闘中も、食事中も、それこそ起きている時はずっと何かしら体の中で訓練している。もちろんダンジョンに入っている時もずっとだ。彼が精密な魔力制御ができるのは目に見えない努力の賜物なのだ。


◇◇


 2人の魔力制御訓練の結果、これなら外に出られそうだとロディは判断した。なのでダンジョンでの訓練は今日で終わりだ。


「明日はいよいよ外に出て街に行こう。」

「やった、待ってたぜ。」

「いよいよ外を大手を振って歩ける日が来たのだ。」


 レミアとテオは明日を待ちきれない様子だ。

 外に出てからの予定は、街で1週間ほど一緒に生活してみて、大丈夫そうだったら街を出発して他の街に行く予定だ。念のためにダンジョン内の拠点は残しておく。体調が悪くなれば戻ってくることもあるだろう。


 翌日の朝早く。

 5人は気持ちも新たに安全地帯を出発し、ダンジョン入口へと進んで行った。


 ダンジョンを出た時はまだ日も出てなくて、あたりは薄暗かった。周りにある露店もまだ営業前で人影も見えない。


「うわ、明るい。」

「太陽が出ていないのにこんなに明るいのだ。」


 しかしテオとレミアはひと月以上ダンジョンの中にいたのだ。目がダンジョンに暗さに馴れているためこの光でも明るく感じるようだ。

 ロディ達も2日くらい潜った後にダンジョンを出た時には非常に眩しく感じたので、テオとレミアはもっと眩しさを感じるだろうと思い、わざわざ早朝にダンジョンを出るようにしたのだ。


「日が昇ればもっと眩しくなるわ。少しずつ慣れていくようにしないとね。」


 ナコリナが二人に教えて、フードを目深にかぶせた。

 おそらく慣れるのに2~3日くらいかかるだろうか。けど、もともと外で生活していたのだから慣れれば問題はないはずだ。


「じゃあミズマの街に出発だ。2人は魔力制御を忘れずに。つらくなったら教えてくれ。」

「「わかった。」」


 2人の気持ちいい返事を合図に、5人は朝の涼しい空気の中を街に向かって歩き出した。


◇◇


 道中2人が不調にならないか心配したが、どうやら杞憂だったらしく、ミズマの街に何事も無く着いた。


「体の調子はどう?」

「全然問題ないのだ。魔力が減っている感じも無いのだ。このまま街を歩いても問題ないのだ。」

「俺も全く問題ないぜ。・・・ミズマの街ってすげえ大きいんだな。」


 レミアもテオも元気いっぱいで、それよりも街の方に興味津々という感じだ。


「じゃあ今日は、休憩しながら少し街を散策しましょ。」


 その日5人はゆっくり街を散策し、テオもレミアも初めての街を大いに楽しんだのだった。


◇◇


 夜になり、寝る前に2人の魔力の今の残量を聞いてみた。レミアもテオも大体8割くらい残っている感じらしい。

2人とも1日中ずっと魔力制御をし続けるのはまだ無理で、やったり休んだりの繰り返しにより少しずつ魔力が減っていたようだ。しかし全く魔力制御しないよりははるかに減りは少なく、効果は確実に出ている。


 寝る前に2人に魔力譲渡で補充しておこうかとロディは提案したが、2人から


「「このままでいい(のだ)」」


と拒まれた。自力でどこまで出来るか試してみたいらしい。このやる気を無碍にするのもどうかと思ったので、そのままで寝ることにした。


◇◇


 翌朝、起きてすぐに2人に体の状態を聞いた。

 レミアはほとんど体調に変化はなく問題ないようだったが、テオは体調が悪そうだった。

 体感的にはレミアの魔力残量は5割、テオは1/4くらいらしい。2人の差はおそらく元々の魔力量の差だろう。魔道具が使う魔力量は同じだがレミアの方が魔力量が大きいので、その分が差となって現れたようだ。


 今日一日の活動の為に、ロディは2人に魔力譲渡で2人の魔力をほぼ満タンにしてあげた。テオの体調の悪さはすぐに解消したようだ。


「お兄ちゃん、どんな感じ?」


 エマが心配して聞いてきた。ナコリナも同様に心配そうな目を向けている。


「初日としては上々なんじゃないかな。」


 ロディは2人の状態からそう判断した。

 昨日はゆっくりとはいえ1日中動き回り、そして夜も魔力譲渡していない。その状況である程度の魔力が残っているだ。

 今後、魔力制御に馴れてきて制御している時間が増えれば、相対的に魔力は減らなくなる。さらに熟練すれば回復量が消費量を上回るようになって魔力が回復していく。そうなればもう心配はないだろう。


「もう少し様子を見るけど、これなら一緒に旅することも出来ると思う。」

「「「「本当!?」」」」


 4人が一斉に喜びをはじけさせる。


「よかった。2人と一緒に旅ができるのね。」

「うれしいのだ、うれしいのだ。」

「2人の頑張りの結果だよ。」

「俺、楽しみだ。早くいろいろな街を見てみたいぜ。」


 この瞬間、5人は本当のパーティーになった。


◇◇


「今日はまずギルドに寄りましょう。」


朝食中、ナコリナがみんなに伝えた。


「ギルド?何があるのだ?」

「まずレミアとテオの冒険者登録よ。それにオークキングの魔石のお金も受け取りもあるわ。」

「「冒険者!」」


 テオとレミアは、冒険者になれると聞いて目を輝かせた。


「そう言うことなら、早く飯食って行こうぜ。」


 テオが急いで朝食を平らげにかかる。


「待つのだ!」


 とそこにレミアが声をあげた。


「どうしたのレミア。何か問題でも?」


 ナコリナが心配そうな面持ちで訪ねる。

 レミアはうつむき、シチュー皿を指さして言った。


「おかわりが、欲しいのだ。」

「「「「え?」」」」

 

 レミアの「おかわり」発言に一瞬の沈黙の後、テーブルは笑いに包まれた。

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